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3年間、聖女を偽ることになりました。ドッペルゲンガーです。  作者: 廿楽 亜久
第12話 奇跡の取り扱い

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後編

「まぁ、愚かな選択をした教会の連中はどうでもいい。いつものことだ。それより、”あの時”ってなんだ?」

「あの時?」

「聖杯の話をした時に言ってたろ」

「――あぁ」


 巡礼の旅については、イザベラが教会に使った奇跡を含めて報告していたはずだが、アレが聖女の監視が目的だったのなら、詳細については知らされていないのかもしれない。

 それか、あんな小さな村は、教会にとって、興味がなかったのか。


 クリミナとシエルに、先程のグラスへの奇跡が、巡礼の旅の途中で見た、イザベラの奇跡の真似であることを伝えれば、ふたりはそれぞれ納得したような声を漏らした。


「なるほど。それは確かに、黄金の君らしい」

「なるほどな……さっきのは、教本があったわけだ」

「う゛、そうだけどさ……」


 だが、はっきり言われるのは、少し傷つく。


 イザベラの気持ちを全て理解できるわけではないし、あの時は、イザベラなんかではなく、自分の怒りに任せて、イザベラの真似をしてしまった。

 そのために、奇跡まで使ってしまった。


 それを思い出しては、また気が重くなってくる。


「まぁまぁ……逆に、あの場で奇跡を使ったからこそ、黄金の君の健在を、周辺諸国へも印象付けることができた。これについて、国王も教会も意見は一致していたから、気に病む必要はないだろう」


 フォローしてくれるシエルに礼を言いながら、なにやら地図を開いているクリミナに目をやる。


「その村はどこだ?」

「まさか、グラスを取ってくるとか言わないよな……?」


 あの村にあるグラスは、イザベラが起こした奇跡で、ドッペルのものとは違う、正真正銘の聖杯(きせき)だ。


 今も変わらず、あの村を救っているはずだ。

 もし、クリミナが実験のためだと、その聖杯を奪おうとするなら、絶対に村の場所は教えない。


 アレは、イザベラが救った村だ。

 自分のせいで、その奇跡を壊したくない。


「……奪うつもりはない」


 全く信用できない。

 そもそも信用できる要素がない。


「信用がないな。今まで、私に散々助けてもらったというのに」


 大きくため息をつくクリミナに、少しだけ罪悪感もある。


「……いや、そんなに助けてもらったか?」


 助けてもらったことには違いない。

 実際、この魔女がいなければ、既に何かしらのボロが出ていただろうし、国王や教会との協力の取り付けにも、協力はしてくれた。


 素直に感謝しにくいが。


「疑わなくても、ただ聖杯から精製された水に、瘴気を浄化する力があるのかを確認したいだけだ」


 瘴気を払うのは、聖職者たちの祈りだけだ。

 それ故に、聖職者が多く住まうセント・バルシャナ聖国は、小国ながらも、権力を持つことができている。


 そして、その聖職者たちの中の頂点である聖女。

 聖女が行う祈りの浄化は、圧倒的な力を持つ。それこそ、病を治す祈祷術の同等の存在であり、奇跡の次に、聖女の証明ともいえる力だ。


「もし、その力があるのなら、お前でも聖女の仕事である浄化の仕事を行えるようになる」


 イザベラを偽るにも、ずっと説法だけというわけにはいかない。

 時には、瘴気の浄化などの仕事も行わなければ、聖女としての信用問題にもなる。


 教会にも、力が弱まっていることは伝えているが、完全に使えないとは言っていないため、不信感を抱かれないためにも、多少は聖職者の仕事をする必要もある。

 その時に、必要となる力だ。


「病気の方は…………なんとかするとして、浄化の方が、これで解決するなら、話が早い」


 妙な間はあったが、クリミナの言う通り、瘴気の浄化を偽れるようになるのは大きい。


「けど、それって、そこのフラスコの水で実験するんじゃダメなのか?」


 村は遠いし、毎回、水を分けてもらいに行ける距離ではない。

 使う頻度の事を考えれば、目の前のフラスコの水の力を確認する方がいいはずだ。


「もちろん、こちらでもやるが、向こうは、イザベラ(本物)の奇跡だ。効果に差があっては、疑われるかもしれないだろう」


 あの村の聖水とここにある聖水で、効力に大きな違いがある。

 もしそんなことがあれば、教会は、偽物の奇跡を疑うかもしれない。


 ただでさえ、数ヶ月程度の交流だった、イザベラを偽るなどという無茶をしているのだ。

 些細な違和感すら覚えさせたくない。


「灰被りの君」


 静かに諭すようなシエルの声が、クリミナに発される。


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