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接触と空気  作者: アズキ


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第11話「研究所」

土谷は森の中を歩いていた。

雨に打たれ、向かい風が行く手を阻む。

感情的になり、何も考えずに洞窟を飛び出したことを後悔した。

いわゆる、迷子ってやつだ。

地図もなく、初めて来る島で目的地に辿り着くなんて、できるわけがない。


歩いても歩いても同じ景色が自分を取り囲む。

木々が自分の周りを囲み、行く手を拒んでいるように見えた。

まるで白雪姫にでもなった感じだ。

体力も底を尽きそうになる。

洞窟で少し休んだといっても気休め程度。

歩いていると、もう一度、洞窟を発見する。

土谷は喜んで中へと入っていった。

そこには、何もなかった。

小屋もなければ、田島もいない。


「はぁ…はぁ…違う洞窟に来ちまったのか?」


どれだけ中に進んだところで見つかるのは岩。

その他には何もない。

ここが田島のいた洞窟なら、小屋があるはずだし、別の洞窟に来てしまったのだと思った。

コテージの方の海辺にも岡本が入れそうな洞窟があると言っていたし。


似たような洞窟がいくつもあるんだなと思った。

そう思ったのもつかの間。

壁のありとあらゆるところから、水が流れ込んできた。

水が浸水してきて、奥の方からザブーンという大きい音がこちらに響いてくる。

洞窟の奥から海水が流れてくる音を聞いても体が動かなかった。

動けたのは、海水が大きな波となって現れた時だ。

あっという間に土谷の方に、どデカい高波が襲う。

土谷は出口に向かって必死に走った。

しかし、足場は悪く上手いこと走ることができない。

後ろを振り向いている暇もなかった。

振り返れば飲み込まれてしまう気がして。

どうにか外への出口が見えた時、全力でそこを目指し、脱出することができた。

けれど、外に出たと同時に、足に石をひっかけ、その場に倒れ込んでしまう。

その拍子に、頭を地面と強く激突させ、少しの間気を失う。


夢のようなものを見た。

真っ白の世界に自分はいて、浮いているようだった。

目の前には樺島、岡本、広瀬がいる。

3人とも、こちらを見て笑っていた。

それを見て、土谷も微笑む。

「ここは…天国?だとしたら、俺もみんなも死んでしまったのか?」と考えた。

しかし、それは夢であるとすぐに分かった。

なぜか、その場には石田もいたのだ。

石田は3人の方に歩いていく。


「俺の友達から離れろ!」


と叫ぶ土谷。

何度も叫んだ。

そんなことは聞こえていないかのように、石田は3人に手を広げる。

それを受け入れるかのように3人も笑顔でその中へと入っていく。

石田が3人を吸収するように見えた。

腕を広げて3人の首元に回して全員が飲み込まれる。


「やめろ…やめてくれ。」


土谷はその場に崩れ落ち、地面もないのに、拳を強く振りかざした。

その瞬間、真っ白な世界が黒で埋め尽くされる。

誰かが自分の方へ歩いてくる音がした。

土谷は顔を上げて、確認してみる。

4人が合体したところの奥から出てきたのは田島だった。

こちら側に歩いてくる。

土谷の目の前で止まり、語りかけて来た。


「いいか、これは幻だ。

友達を救えるのはお前だけ。

それなのに、こんな幻に語りかけていてどうする?

さぁ、目を覚ませ。」


頬を伝う、冷たい雨の感覚を取り戻した時、土谷は目を覚ました。

まだ目の前がボヤけていた。

少しして後頭部の痛みと変な夢を見たという感覚が、彼を覚醒させる。

けれども、田島が夢の中ですら、自分に勇気をくれた、そんな気がした。

後ろを振り向いて、洞窟を見ると、水はすっかり引いているように見える。


もう戻ることはせずに、再び森の中を歩き始めた。

体力がないことなど、頭から抜けている。

足も「疲れた」という感覚が消えていた。

どれだけ歩いても走っても今だけは何も感じない気がするのだ。

必死に前へ前へ進むだけ。

木の枝や葉、雨風が邪魔しようと、気にせずに前に進むのだ。

どこへ向かっているのかも分からないのに。


そうして草木をかき分けて歩いていると、とある場所に出た。

その場所には、けもの道のような後があることが分かる。

「なんで、こんなところに?」と思った。

確か、コテージの先はまだ未開拓の土地と言っていたはず。

それが自然にできたというには、あまりにも不自然に見えた。

石田たちが嘘をついている可能性を考えた。

彼らがある程度の場所でけもの道を作ったと考えればいいと自分を納得させた。

俺たちは騙されているんだ、とその道を進んでいくことにする。


がむしゃらに進んでいた時とは違い、道が行く末を示してくれていて、どこへ行けばいいのかという疑問をかき消す。

この先に何があるのか、それが知りたくて道に沿って進んでいる。


道の先にあったのは、とある建物だった。

コテージと違い、気で作られておらず、病院のような佇まいの建物。

ここは一体何なのか?

土谷は丸腰だった。

中に入るのに、何もないわけにはいかない。

そこら辺に落ちている木の棒でいいものをどうにか見つけて、中に入ることした。

傍から見れば、かなり変なやつだし、戦闘力も高いとはいえない。


建物は2階建て。

扉を開けて中に入る。

中は薄暗く、とても広いとは言えない内装だった。

1階の部屋を全ていたが、誰もいない。

入った時から、人がいるような気配はあまりなかったのだが、本当に誰もいないとは思わなかった。

部屋には食料や研究道具のようなものが揃っているだけだった。

また、ベットがいくつか置かれていたり、まるで誰かが住んでいるようだ。

土谷はここはあの薬を研究する場所なのだと思った。

そして、1つの部屋を開けた時、その光景に驚愕する。


その部屋にはカプセルのようなベットがあり、中にはなんと、岡本と同じ痣の色に変色している人が3人ほど眠っていたのだ。

恐る恐る、中に入り、カプセルを上から覗き込む。

その人たちには呼吸器がつけられており、点滴のようなものも腕につけられていた。

呼吸は苦しそうで、目も開いていない。

一体いつからこの状態なのか、一体誰なのか、知る由もなかった。

恐らくは、薬の効果をじっくり見るために行われているもの。

土谷はこの人たちを救わなければと思い、すぐに、カプセルを開けようとした。

しかし、どれだけやってもビクともしない。

中の人もかなりの音を出しているはずなのに、起きる様子が1ミリもなかった。

どうにか開けようとしていると、部屋の外から誰かが歩いている音が聞こえた。


そっと部屋の扉から廊下を見る。

何者かが、2階に上がっていくのが見えた。

影のようで、誰なのかまでは見ることができない。

土谷は1度、その部屋を後にし、その人物を追いかけることにした。

木の棒を強く握りしめて、足音を立てないようにゆっくりと階段を登る。

2階に上がった時、廊下の先に1つの部屋があり、そこに一直線に歩いた。

1歩1歩が遅く、体の細胞全てがその部屋に行くのを拒んでいるようだ。

その力に抗い、扉の前まで来た。


ドアノブに手をかけた時、開けるのが怖くて、息が荒くなるのと、吐き気のような気持ち悪さが土谷を襲う。

体から床に落ちていく水が、汗なのか雨なのか分からなくなっている。

この扉の先にはとても恐ろしい事実が待ち受けている気がしてならない。

あいつらが何をして、何を作っているのかは田島から聞いていて知っているはずなのに。


口の中で、歯が潰れてしまうのではないかというぐらい、強く噛んだ。

そして、ドアノブを回して、扉を開けた。


その部屋は色んな研究の道具が置いてあったり、パソコンがあったりした。

紙も色んなところに貼ってある。

研究結果なのだろう。

それよりも、扉を開けた真正面の奥にデスクのようなものがあり、そこに誰かが座っていた。


「コテージの向こう側には来るなって言っておいたはずです。」


紛れもない、それは石田だった。

けれど、キャンプファイヤーの時よりも、更に暗く見えた。

目は虚ろで、人の目をしていないかのようだ。

そんな目で土谷のことをジッと見つめるのだった。

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