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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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信じてるから

「ねぇ、梨奈。さっき一体何が……」


途中で口をつぐむ麻由。

最後に何が起きたのかどうしても知りたかったが、

独り言の後、ずっと暗い表情のまま無言で歩き続ける友梨奈には

それ以上話しかけられなかった。

最近感情が表情に表れてきた友梨奈だが、今は以前の無表情友梨奈に

戻ってしまっている。

記憶といえば、麻由が友梨奈と再会した時、最初の出会いの時期の記憶が

無いと言われ、愕然とした苦い思い出がある。

そのせいか記憶に関する話題には嫌な予感しかしない。

でもその話題を避けて今の友梨奈からは話を聞けそうになかった。


(あかねちゃんに後で電話するか……)


友梨奈の状態は気になるが、彼女の過去の話に踏み込むのは本人から相談された時にすべきだと思う。


友梨奈と別れた後、途中のコンビニ前の駐車場で立ち止まり、

カバンから携帯を取り出す麻由。

あかねはすぐ応答してきた。


「最後に何が起こったか?…… うーーん、それって木花家の企業秘密になるのかも。話しちゃって良いのかな……」


今までに無い、低い暗いトーンであかねが答える


「え……?!」


普段疫病神扱いしている友梨奈と違って、今まで可愛い妹扱いしていたあかねから、急に部外者扱いされて麻由は思わず泣きそうになっていた。


「なーんて。麻由ねーちゃんはわたし達の家族みたいなもんだもんね」


一転して明るいいつもの声に戻るあかね。


「……あがねぢゃーーん……」


麻由は自分が涙声になっているのに気付いたが止められなかった。


「え? 麻由ねーちゃんどうしたの? 大丈夫?」

「だっで、わだじだけ一緒にいても視えないし……二人の助けになりたいのに……

いつも何も出来なくてぇぇぇ……」


(小学生に何泣き言言ってるの、わたし……)


今回は自分でも結構頑張ったつもりだったのに、結局友梨奈に助けてもらって、

何が起きてるかわからないまま、事件は解決していた。

麻由はそのショックが蘇り感情が溢れ出してしまっていた。


「あ、あのね……、麻由ねーちゃんが最初守ってくれたから、梨奈ねーちゃんが

能力使えたわけだし、わたしは千里眼で男の動きをチェックして、

その後警察に連絡しただけだし。

結局最後は碧さんが突然やって来て力技で止めたから、麻由ねーちゃんがそんなに落ち込まなくても」

「え? 碧さん来てたの?」

「うん、てか大体どこかにいるよ。意生身で離れたところで隠れて視てるけど」


あかねが毎回事件、事故の時に妙に落ち着いているのは、碧の見守りがあるのを知っていたからかもしれない。

そういうことも教えてくれれば良いのに、と麻由はまた疎外感を感じてしまった。

それをきっかけにまた感情がどっと溢れ出しそうになったが、

今はあかねに愚痴を言ってる場合じゃない、と頭を軽く振って、

気を取り直して質問を続ける。


「碧さんが来て一体何をしたの?」

「矛って持物を持ってきて、それであのナイフ男をブスッと刺したの」


(え!? それって殺人事件発生ってこと?)


あの男が急にのけ反った後、前のめりに倒れて動かなくなった動きと

今聞いた話がリンクした。

しばらく無言の麻由。

あかねが慌てて説明を加えた。


「観音菩薩の持物だから、人を殺す目的じゃなくて、過去に性格が歪んでしまった時の記憶をジョウカしたんだって。動かなくなったのは、記憶がダンゼツしちゃったから、脳がそのホカンをしてるから、とか言ってた」


あかねが初めて聞く言葉は音で覚えていたのだろう。

浄化、断絶、補完か……。

帰りに友梨奈が暗かったのは、自分の記憶が無いのも、歪んだ記憶を持物で浄化されてしまったからと思ったのかもしれない。

最初に出会ったあの時、泣いて謝りながら沢山の人を助けてた友梨奈が、ナイフ男のように歪んでしまった姿は全く想像出来ない。

記憶を失くしたという事象が一緒なだけで、原因は全く別なんじゃないだろうか。

残念ながら友梨奈の疑念を払拭出来る証拠は何も無い。


(でもわたしはあの時のあなたを信じてるから)


麻由は涙で濡れた頬を袖で拭って夜空に浮かぶ丸い月を見上げた。


木花家のダイニングキッチン

ドアを開けて無言で友梨奈が入ってくる。


「どうしたの? なんか暗いわね」


キッチンで晩御飯を調理中の碧が振り向きもせずに声をかける。

それに反応して口を開きかけた友梨奈は、一旦躊躇して口を閉じた。

碧の背中をしばらく見つめ、心を決めて口を開く。


「あのさ、わたしが記憶が無いのって、まさか……」


途中で言い淀んだ友梨奈に被せるように碧が答える。


「わたしは刺してないわよ」


即座に返ってきた答えに戸惑いの表情を浮かべる友梨奈。


(それって、まさか誰か他の人が刺したっていうこと?)


次回、第二部完結予定です。

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