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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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またね幻

「あなたがわたしのところに来た時、既に記憶を失ってたから、

本当の原因は知らないわ」

「でも、もし持物で消されたんなら、そんな長期間で全部丸っと無くなることは

ないと思う。消されたことが分からないぐらい自然に修復されているはず」


友梨奈の表情から察してか、碧にしては珍しく、自分から神通力について語ってくれていた。

表情や語り口からは嘘をついて誤魔化そうとしているような感じはしなかったが、

友梨奈にはまだ釈然としない気持ちが残った。


自分の部屋に戻り、ベッドにうつ伏せに倒れ込む友梨奈。

大きく息を吐くと、身体のこわばりと共に心のモヤモヤも少し軽くなった気がした。

失くした記憶の件で引っかかり、妙に落ち込んでしまったけれど、

その前を思い返せば、友達の麻由を助けられたし、碧が最後は締めたとはいえ、

ストーカー事件も最悪の結果を避けられた。

変な能力は極力使いたくは無いけれど、友達や知り合いを守るためなら、

人として全然使って良い気がする。

『友達』というものが出来てから、表情が出て来たし、日常会話も少し出来るようになったし、

誕生会で祝ってもらったし、大分『普通』に近づいてきたんじゃないだろうか。

いや、過去の悪い噂を気にしなければ、もう『普通』レベルになったと言えるかもしれない.。


多少ポジティブな気持ちに持ち直した後、スースー寝息を立てながら、そのまま眠りについた友梨奈。

しかしそんな気分とは逆行して、その後久しぶりに小さい頃によく見た悪夢を見てしまった……


翌朝

悪夢のせいでテンションが低い無表情な顔でダイニングキッチンに入って来る友梨奈。

碧は挨拶にはうるさいので、こんな気分でも『おはよう』は言わなければならない。

嫌々口を開こうとしたその時


「ピンポーーーン」


朝から鳴ったことがないドアのチャイムがダイニングキッチンに響いた。

友梨奈にはもちろん心当たりが無いので、碧宛ての来客に違いない。

無視してテーブルに座ろうとしたが、碧からの指令が来てしまった。


「ちょっと手が離せないから梨奈出て」


最近身につけた最大限の嫌な顔をして玄関に向かう友梨奈。

ドアを開けると見慣れた姿が目に飛び込んできた。


「おはよう! 友梨奈。一緒に学校行こ」

「麻由、何で?……」


麻由の家から友梨奈の家は学校とは反対方向だ。


「誕生会の時、集団登校出来なかったって聞いたからさ、友達と一緒に登校する経験してみたいかなー、って思って」


麻由の姿がなぜだかぼやけて見える。


「ここまで自転車で来たから、友梨奈ん家に停めさせてね。自転車登校NGだからさ」


昨夜見た悪夢のことはもう忘れてしまった。



あかねの部屋。

照明を消した暗闇の中、二段ベッドの下段で丸まって寝ているあかね。


「……あ……」

「………か……ね……」


突然目を開けたあかねの瞳は紅く染まって若干光を帯びている。


「おねぇちゃん?」

「………あか………ね………」


(おねぇちゃーーーん!!)


両耳に手を当て全神経を集中する。

あかねの瞳は真紅に染まり強い光を帯びていく。

視覚と聴覚を声の発信源に飛ばそうとするが、靄がかかったように方向、距離とも分からない。

碧は亜空間はこの世界と次元が違うと言っていた。

あかねの力ではまだそこに届かないのかもしれない。


繋がった感覚が途切れ、ホワイトノイズのようなサーーーっという音が続いた後、

街の喧騒のような大きい大量の音が入ってきた。

あかねの瞳の色が元の濃褐色に戻り、同時に部屋の中の静けさだけが耳に入ってくる。


まだまだ足りない……。

でも届いた。

口元に微かに笑みを浮かべたあかね。

瞳から溢れ出した涙がベッドのシーツの上にポタポタと雨のように落ち、黒い染みがいくつも出来ていた。


第二部 了

第二部完結です。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

最終第三部については少し準備期間をいただくかもしれませんが、また続きをお届け出来ればと思っています。

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