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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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届いた想い

その瞬間、

麻由の目の前に迫っていた切先が一瞬静止し、

何かに弾かれたように男は後方に大きくのけ反って尻餅をついた。


「またこれか。なんなんだ一体!」


起き上がりながら、男が怒気を込めて叫ぶ。


(これって、梨奈の意生身が発現したのね! わたしを守るために……)


涙で瞳が潤んでいる麻由。

焦点が合わない紅い瞳で棒立ちになっている友梨奈の身体。


(わたしは自分の役目を果たさないと)


麻由は急いでその友梨奈の前に立った。


「うわぁぁぁ!!」


ナイフを大きく振り回しながら麻由たちの方に再度迫る男。


「ぐわっ……」


見えない何かに叩きつけられたように、男の体が後方に勢いよく吹き飛ぶ。

小さくガッツポーズをする麻由。


(さすが梨奈! かっこよすぎ)


「梨奈、そのまま! 近づかせないで!」


思わず声をかけたが、麻由の声が意生身の友梨奈に届いているかはわからない。

とにかくあかねが呼んだはずの警察が来るまで防御出来れば、最低限目的は達成出来る。


「くそぅ、なんだよ、なんなんだよ! お前が悪いのによぉ!」


よろよろと起き上がりながら、怒りで顔を歪め、まだナイフを構えて攻撃態勢に入る男。

一、二歩前に進んだ瞬間、何かにぶつかり、後ろに弾け飛んでいく。


(もう、良い加減そのまま寝てて!)


麻由の願いも虚しく、男はまたゾンビのように起き上がってくる。

相手の力をそのまま弾き返しているだけだから、それほど直ダメージはないのかもしれない。

何度も起き上がって来られると友梨奈の神通力がいつまで保つのかが気がかりだ。

両手で羂索を使った時は、すぐ意識を失うほど激しく消耗していた。

ディフェンス特化の宝鏡は大丈夫―――そう希望的観測をするしかない。

最悪、また麻由が一番前に出て守らなければならない事態も想定しておくべきだが、そのタイミングをどう測れば良いのか、麻由には判断材料が無かった。


(あかねちゃんがいれば梨奈とコミュニケーションが取れるのに……)


神通力が展開されると、麻由に出来ることはほとんどなくなってしまう。

そのことが毎回本当に歯痒く心が辛い。

今はただ祈るしか無かった。



(間に合った……)


麻由の肌に刃が届く光景だけは、絶対に見たくなかった。

ホッと息を吐く友梨奈。

今は意生身のため実際に呼吸はしていないが。


親友を助けられなければ、神通力なんて持っていても意味が無い。

もしここで使えていなければ、もう二度とこんな力使わなくなっていたと思う。

まだ何度もしつこくナイフ男が襲いかかって来るが、宝鏡の使用では羂索のように脱力感は感じなかった。

これでは力での退治は残念ながら出来ないが、こうやって時間稼ぎしてるうちに警察が駆けつけてくれるだろう。

傷害罪とか殺人未遂に問えなくても銃刀法違反なんかで一旦捕まえてくれるはずだ。


心配なのは、さっきから呆気にとられて男の様子を見つめている女性の今後だ。

彼女からは、全てが男の自作自演で、本気でナイフで襲おうとはしていないように見えてしまっているのではないだろうか。

麻由が命をかけて守ったのに、そんな勘違いと油断でまた襲われたら報われない。

意生身の友梨奈は、別のことを考えながらでも余裕を持って男の攻撃に対処していた。


戦いの現場から少し離れた電柱の陰。

瞳を紅く染めたあかねはまだそこで戦況を見守っていた。


(やっぱ梨奈ねーちゃん最強! 何も無いところで意生身を出しちゃうなんて)


宝鏡の発動でもう何も心配は無くなっていたのだが、思ったよりパトカーの到着が遅く少しやきもきしていた。

羂索よりはるかに友梨奈の神通力は長く持続しそうだが、それでもどこかで限界は来る。

何より、ただ相手の力を反射しているだけなので、相手の攻撃を根本から止めることは出来ない。

徹底して受け身で耐えるだけだ。

やはり攻撃力がある持物を持ち出すべきだったかもしれない。

あかねがそう思った時、目の前の地面に見覚えがある矛の刃が音もなく突き立っていた。


「碧さん、それって?!」


次回はGW特別編、友梨奈の誕生日エピソードを予定しています。

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