↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/55

P40:任セテオケ。50/50ダ【03】

◇◇◇ 一時間ほど前



 コクピットの中でぼんやり妄想に耽るアリア。頭の中では様々なセクシー衣装で活躍している。


(女スパイよ、全身タイツで腰にスカーフかしら? それか軍服でエロい女将校かな。よーし、何でもいいわ! やるわよ!)


 ふんす、と気合充分。ここで作戦を考えてるらしいオリハから遂に声が掛かった。


「ジャア、行コウカ」

「うん!」



◇◇



「ありあ、大丈夫? モウ少シダヨ」


 上空六百メートルを飛ぶ空中戦艦(バンディットワン)。それに近づくアリアとオリハ。ドローンのマジックハンド一本に吊られて生身で空中を飛んでいた。


「ひぃーーっ、これが現実ぅ……」


 近づけば近づくほど巨大さを感じる。視界は全て船体の側面で奪われて距離感が分からない。突然周りの風向きが変わったと感じたところで、実は既に手が届くほどの位置にいることに気づいた。


「うひゃぁ……ひ、ひぃ……あっ……うぅぅぅ……」

「下ハ見ナイホウガ良イヨ」


 なまじ構造物に近づいたので途轍もない高度感を突然感じて少し漏らしてしまっていた。パンツが少し湿るくらいだったがオリハの高性能センサーはしっかり検知していた。それに気づかないフリをする男前オリハ。


「Flying at an altitude of 614 meters. (高度六百十四メートルを飛行中)」

「あっ、怖いので報告要りません」

「……sorry. (すみません)」

「あら、良いのよ……って」


 コミュニケーションが取れるということは、イチャコラしたりもできるんじゃないかと想像をしてしまう。


「モウ少シ……」


 扉を見つけるとゆっくり近づいていく。気流が乱れてドローンは左右に揺れている。しかし八頭身オリハと可愛いAI美少女が抱き合っている姿を想像しているアリア。一瞬恐怖を忘れていた。


「ホイ、接岸デス」


 金属製の普通の扉が目の前にある。マジックハンドでドアノブを掴んで姿勢を固定するともう一本マジックハンドを出して鍵穴に突っ込んだ。

 すると瞬時にカチリと割と大きめの音がした。


「やはり浮気相手……きゃっ!」


 その音にびっくりして我に帰るアリア。上空六百メートルに浮いていることも思い出して今更に身体をすくめた。


「電子ろっくジャナイカラ……ばれテナイヨネ……」


 独り言を機械音声(マシンボイス)で呟くドローン。アリアを吊ったまま戦艦内に侵入した。何となく床や壁に触れないように手足を畳んで小さくなっているアリア。


「ねぇ、降りていいの?」

「モウ大丈夫」


 そっと足を床につけるとほっと一息吐くアリア。オリハは辺りを観察しているようだった。


「船体ハ通常ノ海上艦ガべーす……安上ガリダナ……」


 早速近くの部屋の扉を開けるオリハ。アリアを手招きすると二人で部屋に入った。そこは倉庫らしく洗剤やトイレットペーパー等の日用品が所狭しと積まれている。


「機密性もショボイ。トテモ宇宙(そら)ニハ上レナイカ……」


 独り言を呟くドローンを横目に辺りを伺うアリア。オリハは何か調べ物をしているらしくホバリングしたまま動く気配はない。チャンスとばかりに棚に隠れて下着の湿り気を確認する。


(まだ大丈夫……かな。替えの下着なんてないし……あーあ、パンツ落ちてないかな……)


 キョロキョロと棚を見回していると機械音声(マシンボイス)が間近に聴こえた。


「ありあ? ドウシタノ?」

「ひぃっ! な、な何でもななないわよ!」


 目を離した一瞬で近くに来ていたドローン。訝しげに視線(カメラ)を此方に向けている。アリアはしどろもどろで誤魔化しながらスカートを整えていた。


「さてさてー、ここは日用品しかないのねー!」

「ジャア行コウ。ぱんつハ無サソウダカラ」

「そうなのよね……じゃなくて!」


 いつの間にか背後からスカートを捲っているドローン。マジックハンドをペシッと払い除けた。



◇



 二人は百メートルほど横にガラスの窓が続く通路を進んでいた。その中には野球場くらいの広場があり、かなりの人の数が確認できる。テレビニュースで見た『難民キャンプ』のように所狭しとテントが張り巡らされていた。


「何これ?」

「コレガ多分、人質ナンダロウナ……」

「人質……」


 上階の廊下のガラス窓から覗くように見下ろしていると子供達が遊び回っていたりするのも見えた。


「そうよ。この船は大勢の民間人を乗せているわ、人質としてね……」

「うひゃっ! あっ、えええエルメラさん」


 突然話しかけられて軽く飛び上がるアリア。素早くドローンを捕まえてから数歩離れた。耳元(集音マイク)に口を近づけてボソボソ呟く。


「……ねぇ、近づいてるの知ってたなら言いなさいよ……」

「イヤ、敵意ガ、ナカッタカラ」

「えっ?」


 そっと振り向くとエルメラはその場から動かず悲しそうに俯いていた。


「私達……理想郷という言葉に夢を見たの。司令の語る理想郷(エルドラド)は正しく夢のような素晴らしい世界に聴こえたわ。だから特務隊への入隊を希望して努力を積み重ねてきた……」


 その場から動かずぽつりぽつりと言葉を吐き出すその姿は暗い後悔に包まれていた。


「特務隊の親族はこの船の中で暮らすことに決まって……エリートって感じで嬉しかったし誇らしかったけど……その辺りからおかしくなっていったの」

「どんな風に?」


 アリアの方に視線を向けるが直ぐにまた俯いてしまった。


「逆らえば家族は皆殺し……本当に……子供もお年寄りも殺された……」

「そんな……」


 何となく嫌がらせをされるとかセクハラを受ける、とかそんなのを想像していたアリア。そんなものとはかけ離れた重た過ぎる告白。


「それは隠蔽されて基地全体の軍属の家族が住み始めたの。そこからはアリア准尉も知っての通り。だから……」


 エルメラからは大粒の涙が溢れてパタパタと床を濡らしていた。


「うぐっ……だから……逃げたいけど……一人で逃げたら家族は殺される……仲間達と家族共々逃げる手段を探してるけど……そんなモノ無いのよ!」

「エルメラさん……」


 エルメラの呻くような涙声。アリアもかける言葉が見つからない。


「そんな中で偶に観るアリア准尉の番組は癒しだったのよ。こんなにキラキラした世界もあるんだって……」

「……うん」


 褒めてもらって嬉しいのだが明るくは返せない。どう慰めたら良いかも分からないので暫し落ち着くのを待っていると、横に浮いているドローン(オリハ)からいつものテンションの機械音声(マシンボイス)が聞こえてきた。


「人質ハ、全員ココニイルノカ?」

「えっ、そ、そうだけど……」


 オリハはドアにアームを伸ばすと接続した。


「フムフム……」

「オリハ、開けられるの? なら開けて――」

「――開ケテドウスル? 艦橋ヲ乗ッ取ルノカ?」

「えええ……そんな言い方……」


 突き放したような声色に焦るアリア。チラリとエルメラを確認した。アリアにはオリハの言動はとても薄情に思えたからだ。しかしエルメラは変わらず俯いていて非難の言葉一つ返ってこない。

 逆に労わるような眼差しをアリアに向けた。


「アリア准尉、ありがとうございます。この扉、何をやっても開かなかったのは事実。開いたら嬉しいけど……開いてもどうにもならない……の……」

「えっ……?」


 また俯いてしまうエルメラ。


「だって……空中にいるから逃げられないの。せめて……せめて地上なら……」


 突然にドアが開いた。驚いて立ち上がるエルメラはふらふと扉に近づいていく。


「開いた……どうやっても開かなかったのに……ねぇ――」

「――ホイ」


 嬉しそうに振り向くエルメラをマジックハンドで押し込むとまた鍵を閉めてしまった。


「何よ! どういうつもりで――」

「――ジャア人質ハ任セタ」

「えっ?」


 ガラスの窓越しに見つめ合うドローンとエルメラ。不安そうなエルメラと対照的でドローンには動揺一つ無くホバリングも安定している。

 アリアもオリハの考えていることが分からない。不安そうに二人を見つめる。


「オリハ……どうするつもり?」

「デハ、ヤッテミルカ」


 その瞬間、LEDが怪しく光る。そしていつものイケメンボイスが聴こえてきた。


Hello. ask for permission ship control.

(ハロー。船体制御の許可を申請する)


Hmm...good boy. check it out.

(ふむふむ……良い子だ。見てろよ!)


 いきなりのイケボにときめくアリア。


「オリハ……何、急にカッコいい声出してんのよ」

「えるめら、飛行機カ船ヲ操縦デキルカ?」


 唐突な質問に動揺しながら答えるエルメラ。しかしオリハの行動に一縷の望みを感じたようだ。


「く、車くらいしか運転できないわよ!」

「分カッタ……ナラ……」


 またもLEDが怪しく光る。


make control-room like driver's sheet.

(車の運転席みたいな操縦席を作れ)


 瞬時に扉や壁に亀裂が入るとエルメラのいる場所を中心にどんどん形が変わっていく。いつの間にかレーシングカーの運転席ような場所にエルメラは座らされていた。


「えっ? えーっ!」


 エルメラの前にはハンドルが見える。


「あくせるガ推力、はんどるガ操縦桿ネ」

「は……はぁーっ? 急に何してくれてんのよ! これで何しろって言うの、答えなさいよ!」


 理解の出来ないエルメラは性格が変わったようにガラが悪くなって声を上げている。


「はんどるヲ引クト上昇、押シ込ムト下降ダ。デハ……」

「えっ? まさか、ちょっと、ちょっと、待って――」


broken hostage-area!

(人質区域を分離!)


 区画全体に大きな亀裂が辺り一体に拡がっていく。


「――えるめら、人質達ヲ任セタゾ!」

「えっ?」


 エルメラの座っている操縦席を先頭に人質ブロック全体が戦艦から切り離されていく。


『――ちょっと、ちょっと、なな、何なの……よ』


 急にアリアのヘッドセットにエルメラの声が響いた。オリハを見るとゆっくり頷いている。


「あどばいすシテアゲテ」

「はっ! そういうことねー!」


 耳元のマイクを下げて真剣な声で呼びかけるアリア。


「エルメラさん、聴こえますか?」

『――なになに、えーっ? アリアちゃん、これは……』

「エルメラさんが操縦するの! 早く、早く人質を連れて逃げて!」


 振り返って人質達を見つめるエルメラ。激しい揺れの原因が分からず不安そうに右往左往している。視線を戻すとアリア達と徐々に距離が離れていく。そんなアリアは優しく微笑んでいた。ふとこの状況が脱出の最大のチャンスと気付くエルメラ。


『――えっ……嘘っ! 逃げられるの?』

「そうよ! 皆さんを家族の元に返してあげて! これで戦争を止めてあげて!」

『――ウソ……』


 数十メートルの距離を離して空を飛ぶ人質ブロック。おっかなびっくりハンドルを切ると切った方角に方向を変えていく。


『――移動できる……うん!』


 自由に飛べることが分かると即座にUターンして戦艦から離れていった。


『――ありがとう……ぐすっ……アリア准尉……いえ、アリアさん、本当に……』

「良いのよ。私、ファンは大事にするタイプだから!」

『――本当に……感謝……』


 ここでヘッドセットからの声に雑音が混じり始めると直ぐに聞こえなくなってしまった。既に目視できるかギリギリの小ささにしか見えない。とびきり嬉しそうな笑顔のアリアは横のドローンを誇らしげに見つめている。


「ヤハリ……起動式ガ通ッタ……トイウコトハ……」

「オリハ、凄い、凄い、すっごーい!」


 ドローンに抱きつくアリア。すると急にフラフラとホバリングが乱れてLEDがピンクに点滅し始めた。


「チョット、コッチニ来テ……」

「なになに? えっ?」


 アリアの肩をマジックハンドで優しく掴んだまま先程の倉庫に入っていく。すぐに鍵が掛かる音がした。それから十分ほど二人は部屋から出てこなかった。



♡♡



 鍵の開く音がすると機嫌の良さそうなドローンと顔を真っ赤にした汗ばむアリアが俯きながら出てきた。


「もう……オリハ……あんまりしちゃダメよ」

「エヘヘ……ありあノ喘ギ声、可愛イカッタナー」

「こら! エッチなこと言うな! って……」


 目の前には兵士数名が様子を見にきていた。既にオリハは姿を消している。取り敢えずアリアへ銃を向ける兵士達。


「お前は誰だ? 人質ブロックが切り離されているのと関係あるのか!」


 銃を向けられても焦った感じのない丸腰の少女。得体の知れない恐怖を感じるようで声が上擦っている。


「ねぇ、もう目標達成?」

「ウン。デハ、BM(本体)二戻ロウカ」

「うん!」


 独り言を喋り始めたと思うと銃を持った兵士が気にならないのか扉に向かって歩いていく。そのまま扉を開けると一気に外の風が入ってアリアの長い髪を巻き上げた。


「おいおい……まさか……」


 振り向いてニコニコ手を振っている。


「ま、待てっ!」


 慌てて大声で威嚇するが手を振り終わって外の方に向かって歩き出すと、次の瞬間、悲鳴も無く姿は消えていた。慌てて扉に駆け寄る兵士たち。

 もちろん姿はどこにも無かった。


「落ちたんだよな……」


 暫くの間、口を開く者は居なかった。



◇



「ぎゃっ!」


 ドローンに吊られて下まで降りていくアリア。


(うわっ! こ、怖っ! 昇りより降りる方が怖くない?)


 ガタンと揺れると「ひっ」と悲鳴が上がる。


「モウ少シ我慢シテネー……オット」

「ひ、ひぃ……また……あーっ!」


 風に流されて揺れ動くドローンとアリア。必死に我慢するがエアポケットにハマって十メートルほど下降すると、温かく湿った感触を股間に感じて思わず内股になってしまう。


(くっ……私の下半身、もっとがんばってよね……って、あれ?)


 マジックハンドがそんなスカートの中を覗いていた。


「ちょっと!」


 恐怖で身体は硬直していて不埒なマジックハンドを跳ね除けるなんて出来そうにない。内股になってクネクネするのが限界だ。


「ウーン……下着ガ少シクライ濡レテテモ気ニシナイヨ!」

「う、うるさい、このエロドローン!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。