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P37: ちょっと、すっごいヤル気じゃん【04】

 真剣な顔をしたコンソールの中のちびキャラ。

 アリアの中ではどうにかして生き残らなければいけない、これからも二人で生きる、という目的が生まれた。それを達成するために必要なお願い、ならば私がやるしかない。

 そんな決意に身震いしていたオリハを横目で見てワクワクが止まらないアリア。


(きたーー! これは最終決戦……となれば空飛ぶ戦艦に侵入よね。スパイよね。コスプレね!)


 ふんす、と鼻息荒くガッツポーズする。


「なんでもするわよ! オリハ、なんでも言って。不肖アリア、脱げと言われれば脱ぐ覚悟もできています!」


 すると何も言わずにVRゴーグルを被せるオリハ。


「ん? 作戦をVRで見せてくれるの? あれ? ちょっと……えーーっ!」

「ア、アリア……」


 既に仮想空間の中では八頭身オリハが全裸で準備万端だ。いつも下腹部には謎の湯気やキラキラがかかってよく見えなかったが、今はモザイク一つない。

 アリアの視線は釘付けだ。


「うぅー……ちょっと、すっごいヤル気じゃん……うわっ、また私も服脱いでる」


 実際のアリアはまだモコモコの部屋着に身を包んだままコクピットに座っている筈だった。しかしアリアがVRゴーグル越しに見ている世界では、超豪華な部屋のソファーに座って全裸の八頭身イケメンと裸で向かい合っているようにしか見えない。


「やだっ……」


 腕や胸を触ってみると確かに部屋着の柔らかな感触がある。しかし網膜に映る自分の腕や胸を脳は裸としか感じられない。超高精度CGは毛穴や血管までしっかりと確認できるし指や手首を曲げても違和感は全くない。オリハがアリアの身体の動きを秒間千二百フレームで計測して映像に追従させていた。


「あっ、すごっ……直接触っているみたい……」


 既に尖った乳首に指を沿わせると電気が流れたように快感が押し寄せる。視覚に影響された偽の感覚はアリアの脳を性的な興奮で満たしていった。


「アリア……イイデショ?」


 そっと肩を抱く八頭身イケメン。ここでアリアもオリハのアレにそっと触ってみる。


「アアッ! アリア……」


 突然の快感に顔を歪ませるイケメン。それを見た瞬間、ゾクゾクと背筋に興奮が走った。


「オリハ……」

「アリア……」


 二人の唇が近づいていく。



♡♡……



「待って」


 キスする寸前、両腕でイケメンを押して距離を取るといきなりゴーグルを取り始めた。


「エェェ……ココデ、オアズケ……?」


 ゴーグルを取ると、アリアの目には無数の触手が蠢(うごめ)くのが見える。肩を抱く手のフリをする触手、抱き締められて少し湿った筋肉質の胸板のフリをする触手。

 ついさっきまでアリアの右手が握っていた濃いピンク色の一際熱く、固くなった触手。


「ちょっと待ってね」


 徐(おもむろ)に部屋着を脱ぎ捨てると、そのまま無言で下着まで脱いで全裸になった。


「アアッ……」


 自らの裸を前にAIが興奮するのが伝わる。その証拠にピンク色の触手は固さと大きさを増してピクピクと跳ねるように震えている。


「……これが……」

「エッ? ナ、ナニ?」


 無機質なコクピットに妖しく蠢く触手達。それは今からアリアに性的な興奮を与える為だけに身体の表面を這いずり回り、そして中にも優しく刺激を与えてくれるだろう。

 そんな場所で自ら全裸になることは、ゴーグル越しに触られることより何倍も興奮する。既に何度も軽く絶頂に達していたので内股はびしょびしょに濡れている。淫らな期待と共に蜜のような露が無限に溢れてくるのを感じていた。


「これが現実ぅ……」


 変態ちっくとかアブノーマルとか関係ない。触手に興奮して何が悪い、そう心の底から思えた瞬間、全身が幸せで満たされていった。


「オリハ……」

「ハイー!」


 緊張する機械音声(マシンボイス)に優しく語りかける。


「私はこのままがいい。ゴーグル越しじゃなくて……V(バーチャル)じゃなくてR(リアル)のあなたが好きだから」

「エェェッ!」


 コンソールに目を瞑ってキスをする。それから唇のフリをしていた触手にもキスをした。最後に腫れたように赤く固い触手にもそっとキスをした。


「アァァァァァ……」


 優しく、妖しく微笑むアリアはコンソールのオリハに少しだけ困った表情で呟いた。


「優しくしてね」


 その瞬間、全ての触手がビクッと痙攣した。それからゆっくりとアリアの身体の上を弄(いじ)り始めた。


「アリア……アリア、ダイスキダーーー!」


 触手の群れはアリアを優しくコクピットシートに押し倒した。



♡♡♡



「フーゥ、凄ク良カッタヨ、アリア」

「はぁ、はぁ……つ、遂に……遂に最後までやられた」


 下着を履きつつコンソールの中で踊るちびキャラを睨みつける。


「うぅ、それにしてもあんなに痛いとは。血も出てるし……ナプキンどこだっけ……」


 薄暗くされたコクピット内でゴソゴソとカバンの中を探していると突然灯りが灯り始めた。せめてパンツは履きたいが血塗れでは気持ち悪い。


「ちょっと、まだ着替え中と――」

「――サテ、最後ノ戦イノ準備トイクカ」


 慌てて下着にナプキンを装着してから勢い良くパンツを履く。ブラを探すが面倒になり部屋着の上だけ拾い上げて着てしまう。何となくウサギ帽子も被ったのでR18ミニスカノーブラバニーの出来上がりだ。

 ふぅ、と溜息一つ。コンソールの中で忙しくしているオリハにジト目を向ける。


(ピロートークも無しとは女心を知らん奴だな……)


 不満ではあるが当分浮気は出来なさそう。そう思うとジゴロめいた言葉を吐かれるよりは百倍良さそうと判断してほくそ笑むアリア。


「何カ言ッタ?」

「別に」


 慌てて視線を外すとスクリーンいっぱいにグラフや戦艦の3Dモデルが表示されていた。オリハは鼻歌混じりで戦闘シミュレーションを始めている。


「二人デ一緒ニ生キル為〜」


 3Dでグリグリ動く戦艦のモデルに目を奪われていたのでオリハの独り言は殆ど耳に残らない。ふと何か大事なことを呟かれた気がした。


「えっ? なんか言った?」


 コンソールの中のちびキャラは作業する手を止めてアリアの方に振り向いた。


「別ニ。ハハ、エネルギー、満タンダ。サア、俺達ノ戦ヘイコウ」


 妙に清々しい雰囲気。言葉も前より知性を感じる。思わずドキッとときめいてしまう。


「オリハ……かっこよ……」

「エッ? 何カ言ッタ?」


 見惚れていると不思議そうに見つめてくる視線を感じたアリア。急に恥ずかしくなってまたモジモジしてしまう。


「な、な何でもない!」

「……? ドウシタ?」


 じっと見つめてくるコンソールの中のオリハ。ちびキャラとはいえ先程の情事を思い返すと身体の奥が熱くなってくる。


(何で……? 私って思ったよりエッチな娘(こ)なのかな?)


 とりあえず自らのふしだらな気持ちを隠したいアリア。ツンケンした態度で誤魔化してみる。


「あーあ、ショックだなー、まだ少し痛いし、血も出てるしー……」

「アワアワ……」


 そっぽ向いているとオリハは震えるだけで何も話しかけることはできなかった。どうやら傷心乙女(物理)というのは思ったより効果絶大らしくオリハは残像が見えるほどに震えている。

 少し唖然として眺めていると高速土下座も始まった。


「ぷっ! あはは、後ですっごい美味しいモノでもご馳走しなさいよっ!」

「ハ、ハイーッ……ソンナニ痛カッタノ? ゴメンネ」

「ふふっ、良いわよ。幸せだったから」


 破壊力MAXのアリアの笑顔。瞬時に敗北判定のオリハ。


「ア……アリア、モウ一回……」


 既に触手がアリアを取り囲んでいた。それを払い除けながらシートに深くもたれかかった。


「ふぁーー、今日は休みましょう。終わったら……全部終わったら私を好きにしていいわ」


 可愛らしくウインクするアリア。


(我ながらあざといかな?)


「ウヒョーー! ヨーシ、生キテ帰ルヨ!」


 反応は抜群。ふとあることを思いついたアリア。


「うん。で、あと、少し早起きして欲しいの。お願いがあって……」

「ン?」



Sector:10 End


――遂に思いを遂げた二人



――アリアは自らの性癖(メカノフィリア)を認め、オリハは自らの限界を超えた



――イケ、アリア。イケ、オリハ。二人一緒なら無敵なのだから



二人の絆の回数:六十七回

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