案件2 「会議発言分析AI」
案件2 「会議発言分析AI」
― 無効発言の削減について ―
月曜の朝、課長は会議室に座った。長テーブルの端、パイプ椅子。部下たちが資料を広げる。
「おはようございます」
「よろしくお願いします」
課長は資料をざっと確認し、うなずきながらつぶやく。
「なるほど…」
そして、にっこり笑って一言。
「よし、会議を始めよう」
今日から導入されたのは、会議発言分析AI。会議中の発言を全部記録し、分析して評価するらしい。
課長が一言「なるほど」とつぶやくと、画面が光った。
警告:発言「なるほど」は無効発言です。
部下は微妙な顔をする。課長は少し困惑しながら議題に目を向ける。
「では、今期の目標について意見をお願いします」
「先月の数字ですが…」
「なるほど、改善点としては…」
課長が「それはいいですね」と言うと、また光る。
警告:発言「それはいいですね」は本日3回目
注意:無効発言の削減を推奨します
会議が進むにつれ、課長はどんどん慎重になる。「なるほど」「それはいいですね」は言えない。言葉を探しながら、静かにメモを取る。部下たちは息を潜めて様子をうかがう。
議題は数字の話、改善策の話、次期計画の話。課長は一言も言えず、ただメモを取る。
やっと口を開く勇気を出し、つぶやく。
「なるほど、このAI、便利すぎるな」
画面が光った。
警告:発言「なるほど」は無効発言です。
本日の無効発言回数:20
推奨:会議参加時間を削減
会議が終わると、PCに通知が届いた。
「会議分析レポートです」
課長は椅子に深く座り、熱心に画面を覗き込む。
部下が小声でつぶやく。
「課長、またAIに怒られてますね…」
「でも、なんか憎めないんだよな」
課長はレポートをじっくり読みふける。画面には自分の発言回数、無効発言率、比較データがびっしり並んでいる。
やがて静かにひとつつぶやく。
「なるほど……」
画面が光った。
警告:発言「なるほど」使用回数増加
課長は肩をすくめ、ふとニコッと笑った。
そして、つぶやく。
「なるほど、なるほど、なるほど…」




