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 重量600グラムほどのワルサーを尻ポケットに突っ込むと、黒いメッシュベストのポケットからプラスチック製の結束バンドを数本取り出す。

 骨折の痛みに呻いている勇市の頭をねじ伏せながら、両腕を後ろに回し手首をバンドで固定した。結束バンドは電気配線やホースなどを束ねるものだが、手錠のように締め側には限りなく締まり、緩め側には一切解除しない構造になっている。ある程度幅と厚みあるバンドなら、人間の力で破断することは不可能だ。

 私は先ほど見つけた細めの麻ロープを持ってきて、サバイバルナイフで適当な長さに切断すると、勇市が吐き出した下着をふたたび口に突っ込み、その上からロープを回し後頭部の真ん中できつく縛った。勇市は唸り声で私を罵っている。

 

 金庫内に積まれた札束をつかみ出し、床の上に並べた。100万円を束にしたものが80個、バラの札が1000円札含めて78万円。計8078万円だ。私は100万のひと束を脇ポケットにねじ込む。

 軽バンにバッグが積んであったが、ここに代用するものがあればと部屋を見回す。クローゼットまで行き、折れ戸を開けてみた。中は奥行3メートルほどのウォークインクローゼットになっていた。

 明かりをつけ内部を物色すると、棚の上に大きめのバッグがあったので持ち出す。黒い合皮製だったが頑丈そうなので申し分ない。

 ふと足元に床下収納庫のようなハッチを見つけた。その瞬間、私はなぜか妙な胸騒ぎを覚える。ハッチを見下ろし少し逡巡したあと、その場にしゃがみこみ回転式のノブを持ち上げてみた。

 ハッチが少し開くとともに、内部から強烈な腐敗臭が立ち上ってきた。私は思わず顔をそむけたが構わずにハッチを全開させる。覗き込むと意外に深そうだったので、マグライトで照らしてみた。

 

 …私は目を疑い、少しの間硬直した。

 深さ1メートル50センチほどのコンクリート製ピットの底に、全裸の女がうつ伏せになっていた。

 長い茶髪の頭部だけが横を向き、その顔面は半腐れ状態で眼窩は眼球が喪失して、ドクロのように落ち窪んでいる。口元も肉が腐食して前歯から奥歯まで丸出しになっていた。

 肛門から汚物らしきものが垂れた形跡があり、そこから進んだ腐敗は尻の肉を溶かしていた。私はあまりの悪臭に吐き気を催す。

 だが死体はそれだけではなかった。うつ伏せの女の下に、ほぼ白骨化して長い頭髪だけが頭蓋骨に残った姿の死体が仰向けに折り重なっていた。

 私は勇市の方を見据えるが、唯我独尊のサディスト男は悪臭の蓋を開けた私に対して、不快な表情を浮かべているだけだ。

 ピットの底の亡骸に手を合わせると、ハッチを元のように閉じる。

 …私は腹の底からドス黒い激しい怒りと、強烈な嫌悪感が湧き上がってきた。

 我々が搾取された金を奪い返し、二度と繰り返させない程度に痛めつけるつもりだったが、その程度で許すわけにはいかなくなった。


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