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07 ジロンヌ討伐

翌日。


俺が謁見の間へ向かっていると、正面から豪華なドレスに身を包んだ女が歩いてきた。


数人の侍女を従え、堂々とした足取りでこちらへ向かってくる。


美しい女だった。


だが、その目には明確な敵意があった。


俺は立ち止まる。


「おい、女。俺に何か用か?」


女は眉をひそめた。


「あなたが召喚された異世界人?」


そして蔑むように言った。


「ずいぶんと不敬な態度ね」


俺が一歩踏み出した瞬間。


慌てた様子で宰相マリウスが割って入る。


「お待ちください、コウスケ様!」


「こちらは王妃エリーゼ様でございます!」


俺は王妃を見下ろした。


「だからどうした」


「俺に対する態度を教える必要がありそうだな」


マリウスは青ざめた顔で頭を下げる。


「ご容赦ください」


「王妃様はまだ事情をご存じありません」


「私から必ず説明いたします」


「どうかお怒りをお鎮めください」


そう言って床に額を擦り付ける。


俺はしばらく無言で見下ろしていたが、やがて興味を失った。


「俺に逆らう者に容赦はしない」


「そのことだけは理解させておけ」


そう言い残し、俺はその場を後にした。


背後から鋭い視線を感じたが、振り返ることはなかった。


☆★☆★☆★☆★☆★


謁見の間へ入ると、ゴージマ四世が慌てた様子で駆け込んできた。


そして俺の前で跪く。


「妻が失礼な態度を取ったと聞きました」


「責任は私にございます」


「処罰ならば私がお受けいたします」


俺は面倒そうに息を吐く。


「今からジロンヌを潰しに行く」


「余計なことで苛立たせるな」


王は顔を伏せた。


「……承知いたしました」


「王妃には、俺が戻ったら謝罪に来るよう伝えろ」


それだけ言うと、俺は立ち上がる。


王者の鎧を身にまとい、勇者の剣を腰に下げる。


そして城を飛び立った。


☆★☆★☆★☆★☆★


ジロンヌ領。


上空から見下ろした領地は豊かだった。


城があり、街があり、人々が生活している。


俺は静かにその光景を見つめる。


昨夜から考えていた。


どうすればジロンヌを最も効率よく滅ぼせるか。


だが考えているうちに、別の結論に辿り着いた。


効率よく滅ぼす必要などない。


俺は急いでいない。


二百年。


俺からすれば昨日のことのような出来事でも、この世界では二百年が過ぎている。


ならば数日や数週間など誤差だ。


俺は空中で笑った。


「一瞬で終わらせるには惜しいな」


まず城の上空へ移動する。


そして魔法を発動した。


≪グラビティ・プレス≫


空気が震える。


城全体を覆うように重力が増していく。


城壁に亀裂が走る。


塔が軋む。


だが俺はそこで止めた。


崩壊する寸前で魔法を解除する。


城は辛うじて形を保った。


人々は混乱し、城から飛び出してくる。


何が起きたのか分からないのだろう。


俺はその様子を眺めながら呟く。


「恐怖を知れ」


そして領内を飛び回る。


街道を寸断する。


橋を落とす。


倉庫を破壊する。


だが街そのものは残す。


人が生きられる程度には。


領主も兵も民も。


全員に理解させるためだ。


自分たちの運命が俺の気分一つで決まることを。


数日後。


ジロンヌ領は完全に麻痺していた。


流通は止まり。


行政も機能しない。


兵士たちは怯え。


領主は城に閉じこもっている。


それでも俺は終わらせない。


まだ足りない。


俺の胸の奥にある怒りは、こんな程度では消えない。


空から領地を見下ろす。


人々は空を見るだけで怯えるようになっていた。


俺が現れるかもしれないからだ。


その光景を見ても、胸は晴れなかった。


少しだけ軽くなった気もした。


だが本当に少しだけだ。


失った十年は戻らない。


壊された人生も戻らない。


俺は空を見上げる。


「まだ足りない」


その呟きは風に消えた。


そして俺は次に何を壊すべきかを考え始めていた。


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