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04 立場を分からせる

「そなたがなぜ怒っているのかは分からぬ」


ゴージマ四世は顔面蒼白のまま言った。


「だが、我らは女神の信託を受けたのだ」


「かつて王国の危機を救ったコウスケのように、異世界より勇者を召喚せよと」


「さすれば今、王国に迫る危機を乗り越えられると」


震える声だった。


王の周囲にいる貴族や騎士たちも、怯えた表情で俺を見ている。


俺は大きく息を吐いた。


深く、長く。


そして呟く。


「それで……俺を呼んだのか」


静かな声だった。


だが、その場の空気が凍り付く。


俺は玉座の前に立つ王を見下ろした。


「お前たちの危機なんぞ知ったことか」


「お前たちの問題は、お前たちで解決しろ」


「なぜ俺が、またお前たちの都合に付き合わなければならない」


騎士の一人が叫ぶ。


「王に対して無礼だ!」


そして剣を抜いた。


次の瞬間だった。


俺は騎士の前に立っていた。


誰も動きを見ていない。


騎士本人すら。


俺はその胸ぐらを掴み、持ち上げる。


「無礼?」


騎士の顔が青ざめる。


「俺は十年前、この国のために命を懸けた」


「魔王を倒した」


「世界を救った」


「それでも足りないのか?」


俺は騎士を床へ放り投げた。


石畳が砕ける。


騎士は動かない。


生きてはいるだろう。


たぶん。


周囲から悲鳴が上がった。


「おい」


俺は広間を見回す。


「俺を誰だと思っている」


誰も答えない。


「人生を奪われた男だ」


「お前たちの都合で異世界に呼ばれ」


「十年を失い」


「帰った後の人生まで壊された男だ」


沈黙。


誰一人として声を出せない。


俺はその様子を見て笑った。


乾いた笑いだった。


「その男を、また呼んだんだ」


「覚悟くらいできているんだろうな?」


☆★☆★☆★☆★☆★


その後、俺は勝手に謁見の間へ向かった。


城の構造は覚えている。


十年も暮らしたのだ。


忘れるはずがない。


玉座の前まで歩く。


そして何の躊躇もなく腰を下ろした。


貴族たちが騒ぎ出す。


「不敬だ!」


「無礼者!」


「王の玉座だぞ!」


俺はゆっくり立ち上がった。


騒いでいた貴族の前へ歩く。


そして一人の肩に手を置いた。


その瞬間。


男は悲鳴を上げながら壁まで吹き飛んだ。


広間が静まり返る。


俺は残りの貴族たちを見渡した。


「うるさい」


それだけ言う。


誰も口を開かなかった。


俺は再び玉座へ腰掛けた。


「さて」


「ゴージマ四世」


王がびくりと肩を震わせる。


「この俺を呼びつけて、何をさせるつもりだった?」


「そして見返りは?」


王は必死に言葉を絞り出す。


「この国を……他国の脅威からお守りいただきたいと……」


「そして事が済めば、無事なる帰還を……」


そこまで聞いて俺は額を押さえた。


「また、それか」


思わず笑いが漏れる。


王は首を傾げた。


「また……とは?」


「こっちの話だ」


俺は玉座に深く座り直した。


「良いだろう」


その言葉に王の表情が明るくなる。


だが俺は続けた。


「他国からの脅威は排除してやる」


「ただし」


俺は笑った。


王の顔から血の気が引く。


「報酬が気に入らない」


「だから変える」


広間が静まり返る。


「この国の全てを寄越せ」


誰も動かない。


「土地」


「金」


「資源」


「権力」


「全部だ」


王の顔が引きつる。


俺はさらに続けた。


「王族も」


「貴族も」


「平民も」


「例外はない」


「この国の全員が俺の命令に従え」


「逆らう者は処分する」


沈黙。


誰も声を出せない。


俺はゆっくりと王を見た。


「当然だろう?」


「俺は十年を失った」


「家族との時間も失った」


「人生も失った」


「それでもお前たちを救った」


そして口元を歪める。


「今度はお前たちが差し出す番だ」


「そのくらいの対価は求めてもいいはずだ」


王の顔は真っ白になっていた。


俺はその反応を見ながら笑う。


「なにせ――」


「お前たちを救うのは、これで二度目なんだからな」


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