21 王妃の衣装
自室へ戻ると、ゴージマとエリーゼも後ろからついてきた。
室内には貴族の娘たちである侍女が数名控えている。
俺は振り返り、ゴージマ四世を見る。
「ゴージマ、お前は扉の外で控えていろ」
「俺が呼ぶまで中へ入ることは許さん」
ゴージマ四世は一瞬だけエリーゼを見た。
不安そうな目だった。
だが逆らうこともできず、小さく頭を下げる。
「……承知した」
力なく答え、部屋を出ようとする。
そこで俺はエリーゼに視線を向けた。
「エリーゼ」
エリーゼが俺を睨む。
その目を見ながら、俺は静かに言った。
「お前は昨日俺の命を狙った」
「そんなヤツを信用することはできない」
部屋の空気が固まる。
「今も服の下に武器を仕込んでいる可能性がある」
「その服を脱げ」
エリーゼが目を見開いた。
ゴージマ四世も振り返る。
「コウスケ様、それは――」
「夫婦の話に口を挟むのか?」
俺が言葉を被せる。
ゴージマ四世は口を閉ざした。
「それとも元王として命令に逆らうか?」
その言葉に、ゴージマ四世は俯く。
何も言えない。
何もできない。
俺は鼻で笑った。
「だからお前は国も家族も守れなかった」
そう言うと、ゴージマ四世の肩が震えた。
「外で待っていろ」
やがて扉が閉まる。
廊下から小さな嗚咽が聞こえた。
俺はエリーゼへ向き直る。
「お前も理解しているだろう」
「お前たちがやったことは、俺から信用を失ったんだ」
エリーゼは唇を噛み締めた。
それでも頭は下げない。
俺は侍女たちへ命じる。
「王妃の衣装を脱がせろ」
侍女たちが青ざめた。
誰も動けない。
「聞こえなかったか?」
俺が声を低くすると、
「は、はい……」
震える声が返る。
侍女たちは泣きそうな顔でエリーゼへ近付いた。
「申し訳ありません……」
「お許しください……」
そう言いながら、王妃の外套を外す。
首飾りが外される。
耳飾りが外される。
指輪が外される。
一つ外されるたびに、王妃という立場が削られていくようだった。
エリーゼは俯いたまま耐えている。
やがて豪奢な王妃の衣装が取り除かれ、下着姿になった。
「まだ、着ているではないか、全て脱がせろ」
俺が命じる。
侍女たちは震える手でエリーゼの下着に手をかけた。
そのとき、エリーゼが悲鳴を上げた。
尊厳を踏みにじられ、さらに何をされるのか?
そんな恐怖心からの悲鳴だろう。
俺は、侍女たちに
「いいから続けろ」
と言うと、侍女たちは震える手で、エリーゼから下着を剥ぎ取った。
しばらくして。
そこにいたのは王妃ではなかった。
全裸のただ一人の女だった。
俺は満足そうに頷く。
「武器は持っていなかったな」
と言って、ニヤリと笑う。
「では、これを着ろ」
と言って、手渡したのは、侍女と同じ服。
それを自らの手で、着させる。
今度は全裸の女ではなく、一人の侍女がそこにいた。
エリーゼは顔を上げる。
その目には涙が浮かんでいた。
だが、それでも俺を睨んでいる。
俺はその目を見て笑った。
「その目だ」
「その目を失うなよ」
そして扉へ向かって声を張る。
「おい、ゴージマ!」
扉の向こうから慌てた声が返る。
「な、なんだ!」
「エリーゼはもう王妃ではない」
俺は笑いながら続けた。
「侍女服の方が似合うぞ」
扉の向こうが静かになった。
長い沈黙。
やがて嗚咽が聞こえる。
俺は椅子へ腰掛ける。
侍女たちは俯き、エリーゼは拳を握り締めている。
この話は明日にも城中へ広がるだろう。
元国王は扉の外で泣き崩れた。
元王妃は侍女服を着せられた。
それだけで十分だ。
王家の威厳など、もうどこにも残っていないのだから。




