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18 決起の後始末

俺はゴージマ四世とエリーゼ王妃を見下ろした。


二人は床に倒れたまま、蒼白な顔で俺を見上げている。


先ほどまでの反抗的な空気は消え失せていた。


目の前で騎士たちが倒れ、城の一部が崩れたのだ。


自分たちの選択がどのような結果を招いたのか、嫌というほど理解したのだろう。


「明日、貴様たちの家族を全員連れてこい」


静まり返った謁見の間に俺の声だけが響く。


「貴様の退位と、次の王を決める」


「よいな」


返事はない。


ゴージマ四世は俯いたまま震え、エリーゼ王妃も唇を噛み締めている。


俺は肩をすくめた。


「返事もできんか」


そして視線をマリウスへ向ける。


「マリウス」


「貴様が取り仕切れ」


「よいな」


マリウスは顔色を失ったまま頭を下げた。


「……承知しました」


掠れた声だった。


俺は満足そうに頷く。


そこで視線を横へ向けた。


エジュアの子供たちだ。


二人とも腰を抜かし、床に座り込んだまま震えている。


目には涙が浮かび、呼吸も乱れていた。


俺は二人の前まで歩く。


「これも裏切り者の末路だ」


子供たちの肩が跳ねる。


「俺を裏切るということは、こういうことだ」


「分かったか?」


二人は必死に何度も首を縦に振った。


言葉すら出ないらしい。


その様子を見て、俺は小さく笑う。


「よろしい」


そしてマリウスへ向き直った。


「マリウスよ」


「こやつらはエジュアの子だ」


「裏切るということがどういうことか、教育してやった」


「後は貴様が面倒を見てやれ」


そう言うと、二人はまるで助けを求めるようにマリウスの元へ駆け寄った。


俺から離れられたことに安堵したのだろう。


マリウスも複雑な表情を浮かべながら二人を庇うように立った。


その姿を見て、俺は鼻で笑う。


「安心するのが早いぞ」


だが、それ以上は何も言わなかった。


そして再びゴージマ四世とエリーゼ王妃を見る。


「立て」


二人は反応しない。


俺は少しだけ声を低くした。


「立てと言った」


ようやく二人は立ち上がる。


傷の痛みか、精神的な疲労か、足元がおぼつかない。


「貴様らの反逆の後始末をして回る」


「貴様らが仕出かしたことで何人死ぬのか、その目で確かめろ」


そう言い残し、俺は謁見の間を出た。


二人も無言で後を追う。


廊下へ出ると、数人の文官と侍女が立っていた。


突然現れた俺たちを見て顔色を変える。


俺はその中の一人を見て笑った。


「運が悪かったな」


そして手を上げる。


「≪ソウル・リープ≫」


魔法が発動した瞬間。


文官と侍女たちが糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


静寂。


悲鳴すらない。


ただ倒れるだけだった。


俺は後ろを振り返る。


「魂を抜き取った」


「痛みもない」


「自分が死んだことすら分からん」


そう説明すると、エリーゼ王妃の顔から血の気が引いた。


ゴージマ四世は倒れた者たちを見つめたまま動かない。


「こいつらは貴様らの愚行で死んだ」


「責任を感じろよ」


俺は笑った。


二人は何も言わない。


ただ俯いている。


床へ落ちる雫が見えた。


涙だった。


それから俺は城内を歩き回った。


出会った者たちは皆、恐怖の表情を浮かべる。


逃げる者。


震える者。


許しを請う者。


だが、俺は構わず魔法を使い続けた。


そのたびに誰かが倒れる。


そのたびにゴージマ四世とエリーゼ王妃の顔色は悪くなっていった。


やがて再び謁見の間へ戻った頃には、二人とも憔悴しきっていた。


立っているのも辛そうだった。


俺は玉座に腰を下ろす。


「今日から貴様らに自由はない」


二人がゆっくり顔を上げる。


「ずっと俺の近くにいろ」


「逃げることも許さん」


そしてゴージマ四世を見る。


「退位が済んだら、お前は俺の召使として雇ってやろう」


ゴージマ四世の肩が震えた。


王だった男にとって、それ以上ない屈辱だろう。


俺は続いてエリーゼ王妃へ視線を向けた。


「エリーゼはどうするかな」


わざと考えるふりをする。


そして口元を歪めた。


「そうだ」


「俺の妻にしてやるか」


その瞬間。


ゴージマ四世が膝をついた。


声を押し殺しながら泣き崩れる。


エリーゼ王妃は顔を上げた。


その目には恐怖もあった。


絶望もあった。


だが、それ以上に強い感情が残っていた。


侮蔑。


憎悪。


決して消えない拒絶。


俺を真っ直ぐ睨みつけている。


俺は思わず笑った。


「その目だ」


「やはり、その目が一番面白い」


エリーゼ王妃は何も答えない。


ただ俺を睨み続ける。


俺は玉座に深く腰掛けた。


明日になれば、王家の人間たちも集まる。


退位。


後継者選定。


そして新たな絶望。


考えるだけで愉快だった。


まだまだ、この女は壊れきっていない。


だからこそ面白い。


俺は口元を歪めながら、明日を楽しみに待つことにした。


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