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17 ゴージマ王家の決起

俺は子供二人を抱え、ゴージマの城へと降り立った。


一か月ぶりの帰還だった。


エジュアを滅ぼし、その残骸だけを残して戻ってきたというのに、城は妙なほど静かだった。


兵の声も少ない。


使用人たちの姿もほとんど見えない。


まるで嵐の前の静けさだった。


「ほう……」


俺は口元を歪めた。


そのまま謁見の間へ向かう。


扉を開けると、そこには誰もいなかった。


王も。


宰相も。


貴族も。


誰一人としていない。


俺は迷うことなく玉座へ腰を下ろした。


連れてきた子供二人を傍らに立たせる。


二人は青白い顔のまま俯いていた。


俺が何を考えているのか。


これから何が起こるのか。


それを理解しているからこその表情だった。


しばらくして、重い扉が開く。


現れたのはゴージマ四世。


マリウス宰相。


エリーゼ王妃。


そして数十人を超える騎士たちだった。


皆、完全武装だった。


その姿を見た瞬間、俺は笑った。


「なるほど」


ようやく決めたか。


俺は何も言わず、玉座の上からゴージマ四世を見下ろした。


ゴージマ四世は強張った顔で前へ出る。


額には汗が滲んでいた。


それでも王としての意地なのか、俺から目を逸らさない。


「コウスケ様――いや、コウスケよ」


俺は黙っていた。


「貴様はやりすぎた」


ゴージマ四世は震える声を押し殺しながら続ける。


「北の戦場も」


「ジロンヌも」


「エジュアも」


「貴様は全てを破壊した」


「もはや貴様を放置することはできぬ」


そして剣を抜いた。


「貴様の命運はここまでだ」


「この場で討たせてもらう」


騎士たちも一斉に剣を抜く。


張り詰めた空気が謁見の間を支配した。


俺はゆっくりと立ち上がった。


「ゴージマ四世よ」


静かに呼びかける。


「お前の依頼どおり、北の戦場を終わらせた」


「お前たちを裏切ったジロンヌを潰した」


「エジュアも滅ぼした」


「俺は依頼を果たした」


そこで言葉を切る。


「その俺に刃を向けるか」


ゴージマ四世は答えない。


だが、その沈黙だけで十分だった。


俺は小さく笑った。


「なるほどな」


「それがお前たちの出した答えか」


勇者の剣を抜く。


青白い光が謁見の間に走った。


「ならば、こちらも遠慮はしない」


俺は剣を掲げた。


「≪ロスト・パニッシュ≫」


光が広がる。


透明な壁が城全体を覆った。


騎士たちが動揺する。


「この結界からは誰一人逃げられない」


「王も」


「貴族も」


「騎士も」


「使用人も」


「全員だ」


俺は笑う。


「今この瞬間、この城にいる全ての者を反逆者と見なす」


「覚悟はいいな?」


エリーゼ王妃の顔色が変わった。


マリウスも息を呑む。


それを見て俺はさらに笑みを深める。


「安心しろ」


「王と王妃だけは生かしてやる」


「この国がどう壊れていくのか」


「特等席で見せてやるからな」


ゴージマ四世の顔が怒りで真っ赤になる。


「いけ!」


「精鋭たちよ!」


騎士たちが雄叫びを上げた。


俺へ向かって突撃する。


その瞬間。


「≪グラビティ・プレス≫」


空気が変わった。


騎士たちの動きが止まる。


足が重くなる。


身体が沈む。


一歩。


また一歩。


前へ進もうとするたびに圧力が増していく。


やがて一人が膝をついた。


続いて二人。


三人。


騎士たちは必死に耐える。


だが耐えきれない。


怒号が悲鳴へ変わる。


武器が床へ落ちる。


そして次々と戦闘不能になっていった。


床が軋む。


石畳が砕ける。


謁見の間そのものが悲鳴を上げ始めた。


十分だ。


俺は魔法を解除した。


静寂が訪れる。


残っているのはゴージマ四世。


エリーゼ王妃。


マリウス。


そして数人の騎士だけだった。


「終わりか?」


俺は首を傾げる。


「王国の精鋭とは聞いていたんだがな」


ゴージマ四世は震えていた。


怒りと絶望が入り混じった顔だった。


「悪魔め……」


その言葉に俺は吹き出した。


「俺のせいにするな」


「ここまで来たのは誰だ?」


「お前たちだろう?」


俺が微笑む。


その瞬間、エリーゼ王妃が小さく悲鳴を漏らした。


「ひっ……」


「ああ、その顔だ」


俺は楽しそうに笑った。


「その顔を見るために戻ってきた」


エリーゼ王妃は言葉を失う。


その横でゴージマ四世がついに叫んだ。


「黙れぇぇぇぇ!」


剣を握り締めて突進してくる。


王としてではない。


一人の男として。


一人の夫として。


一人の父として。


全てを賭けた一撃だった。


だが届かない。


俺は半歩だけ身をずらした。


「惜しかったな」


そう呟き、剣を振るう。


ゴージマ四世はその場に崩れ落ちた。


「あなた!」


エリーゼ王妃が駆け寄る。


俺はそれを見下ろした。


「王妃」


「お前にも責任はある」


剣が閃く。


エリーゼ王妃もまた倒れ込んだ。


マリウスが膝をつく。


涙を流しながら呟いた。


「この世には神はいないのか……」


俺は笑った。


「いるぞ」


そして剣を肩に担ぐ。


「俺だ」


静寂が落ちる。


俺は二人を見下ろした。


「安心しろ」


「約束は守る」


魔法陣が広がる。


「≪リザレクション・スカー≫」


光が二人を包んだ。


やがて二人は息を吹き返す。


ゴージマ四世も。


エリーゼ王妃も。


生きていた。


だが二人の顔には恐怖しか残っていない。


俺は満足そうに頷いた。


「言っただろう」


「殺さないと」


「お前たちはこれからも生きる」


「そして見続けるんだ」


「俺がこの国をどうするのかをな」


そう言って、俺は高らかに笑った。


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