16 エジュア壊滅
俺は城を後にした後、エジュアの街や村を二人の子供を連れて回った。
もちろん、破壊と殺戮のためだ。
街を潰す。
村を焼く。
抵抗する者は斬り捨てる。
逃げる者は追い立てる。
そのたびに、連れている二人の子供は顔を青くし、震え、涙を流していた。
だが、俺は構わない。
むしろ見せたかった。
恐怖も。
絶望も。
全てだ。
「これが裏切り者の末路だ」
瓦礫の山を見下ろしながら言う。
「王国を裏切り、自分たちだけ幸せに暮らす」
「そんな都合の良い話が許されると思うか?」
子供たちは何も言わない。
ただ俯いていた。
俺は続ける。
「裏切られた人間がどんな気持ちになるのか」
「お前たちは思い知るといい」
俺は再び歩き出す。
その後ろを子供たちが付いてくる。
途中、燃え落ちた村を見下ろしていた時だった。
片方の子供が小さな声で言った。
「エジュアは……」
俺は足を止める。
「なんだ?」
子供は怯えながらも俺を見た。
「エジュアは、あなた様を裏切ったわけではありませんよね」
小さな声だった。
だが、はっきり聞こえた。
「ここまでする必要があるのでしょうか」
震える声。
それでも必死に絞り出した言葉だった。
俺はしばらく黙る。
そして空を見上げた。
「二百年前、この世界を救ったのは俺だ」
静かに言う。
「魔王を倒し、この世界を守った」
「俺がいなければ、この世界は滅んでいた」
子供は黙って聞いている。
「その俺を、この世界は裏切った」
「だから許さない」
そう言うと、子供は俯かなかった。
俺を見たままだった。
「それなら」
子供は続ける。
「救った人たちを殺して回ることは許されるのですか?」
俺は思わず笑った。
強い目だった。
恐怖している。
それでも聞いてきた。
「許される」
俺は即答する。
「そもそも俺が救った命だ」
「その末裔も同じだ」
「俺が生かした命なら、俺が奪う権利もある」
そう言うと、子供は何も言わなくなった。
だが納得したわけではない。
その目を見れば分かる。
理解できないのだ。
当然だろう。
まだ子供だ。
世の中の理不尽も。
力の意味も。
何も知らない。
俺は歩きながら考える。
この世界には二種類の人間しかいない。
奪う者。
奪われる者。
それだけだ。
二百年前、俺は奪われる側だった。
召喚され。
戦わされ。
利用され。
そして捨てられた。
だから今度は違う。
奪う側になる。
誰にも奪われない側になる。
そのためなら何でもする。
この世界に生きる者全てに教えてやる。
お前たちは俺によって生かされているのだと。
俺が望めば死ぬのだと。
その事実を。
気付かせるためなら、エジュア一つ滅びたところで構わない。
俺が敵だと思った者は敵になる。
ただそれだけだ。
やがて一か月が過ぎた。
街は消えた。
村も消えた。
エジュア領は地図の上から消え去ったと言っていい。
俺は満足そうに頷く。
「そろそろ帰るか」
ゴージマの城がある方角を見る。
あいつらは、この一か月で何を考えたのだろうな。
反抗か。
服従か。
それとも別の何かか。
どちらでも構わない。
どう転んでも面白い。
俺は後ろを振り返る。
二人の子供は青い顔をしていた。
「行くぞ」
俺は笑う。
「お前たちの処分も、そろそろ決めなければならないからな」
二人は何も答えない。
ただ俯いたまま歩き出した。
俺はそんな様子を見ながら、ゴージマ王国へ向かって歩き始めた。
城に残してきた連中が、どんな顔をして俺を迎えるのか。
それを想像すると、自然と笑みが浮かんだ。




