86話 影に潜み、影を狩る者。
86話 影に潜み、影を狩る者。
・2003年7月 SARS終息後の再拡大リスク管理。
「感染症ってのは猛威が終わってからが本番だ。ここから先を怠るとだいたいえぐい結果になる。全力で対応させた方がいい。具体的に? 知らんよ。俺は専門家じゃない。その辺はISAの職員に任せる。ルナ2改の魔力だけじゃ、できることに限度もあるしな。俺はこの先に起きる事実をなるべく多く伝えるだけだ。どうするべきかは優秀なやつが考えてくれ。俺は寝る」
ISAは、各国の検疫ログ、航空路線、人口流動データ、医療機関の受診履歴を統合し、感染再燃の『起点となりうる地点』を確率的に特定。各国政府に対し、空港・港湾の検疫ライン再編と隔離プロトコルの強制導入を働きかける。現場では反発も出たが、カルゲの政治圧力と実績の裏付けにより押し切られた。結果として散発的感染は発生するが、連鎖的拡大には至らず、世界的再流行は完全に抑え込まれる。
・2004年2月 エネルギー価格高騰対策。
「原油価格は、このあと上がる。長期的に見ても上昇トレンドに入る。短期間で乱高下する場面もあるが、全体としては上方向だ。世界経済に影響が出るレベルで荒れる。この問題は、この先ずっと続く。どうにかしてくれ。お前らならできる。出来ないとか泣き言ぬかすバカは、表出てかかってこい。そんな大人、修正してやる」
ISAは過去の需給データ、輸送経路、政治リスク、企業在庫情報を統合し、『上昇の波形』を予測。各国に対し備蓄タイミングと放出基準を細かく設計し、同時に主要企業への非公式な投資誘導を実施する。結果として価格上昇そのものは発生するが、暴騰は抑えられ、ショックは分散される。市場は混乱せず、各国は『織り込み済みの上昇』として受け止め、経済はむしろ安定成長へと移行した。
「できるんかい。お前ら、マジですげぇな。てか、最初からやれや」
・2004年3月 欧州都市型テロ未遂。
「ヨーロッパで、列車を狙った大規模爆破事件が起きる。複数箇所、同時に。被害は大きい。ニュースでもかなり長く扱われるレベル。テロ系に関して、具体的な情報は期待しないでくれ。俺が覚えているのは、デカイ事件が、だいたいどのぐらいの時期に起きたか、ぐらいだ。けど、お前らが本気だせば、それなりにどうにかできるだろ。お前らISAは世界一優秀な秘密結社なんだから」
ISAは通信傍受、資金洗浄経路、宗教組織の接触履歴を横断的に解析し、『実行に至る確率が高い集団』を絞り込む。各国警察・情報機関を裏から統制し、同時多発的に拘束作戦を実行。計画は発動前に消滅し、欧州で予定されていた大規模同時テロは歴史から消える。表向きは「未然に察知された不審な動き」として処理されるが、内部では『未来予測の実証』として決定的な転換点となった。




