62話 『50京以上』VS『730』
62話 『50京以上』VS『730』
目と鼻の先まで近づいたところで、ユズがミカンに、
「ひさしぶり、ミカンちゃん。会いたかったぁ。まだまだ、全然、いびりたりなかったからさぁ」
「……く、クソ女……」
「そんな口の利き方して大丈夫? あんた、存在値700ちょっとしかないじゃん。よわいねぇ。虫ケラだねぇ。……ねぇ、特別に教えてあげようか。アタシの存在値。実は50京を超えているんだよぉ。どう、すごくない?」
「……50……けい……けい?」
「信じられない? ありえないと思う?」
そう問われたミカンは、チラっと、周囲を確認する。
現在、霊廟では、ゼノリカの天上天下に属する圧倒的力を持った超人美女たちが、ボロボロの姿で地に伏せていた。
アダムも、シューリも、ミシャも、ドナも、パメラノも……みんな……
――だから、ユズの言葉を疑えなかった。
50京という数字に関してはよくわからないものの、
ユズの力が尋常ではないという事実は疑えない。
ミカンは、ギリっと奥歯をかみしめて、
「なんで……」
「ん? 何か言ったぁ?」
「なんで、あんたみたいなクズ女に……それほどの力が……」
「誰がクズだよ、クソブスぅ」
そう言いながら、ユズは、ミカンの右腕を掴んだ。
そして、虫の足でも引き千切るみたいに、グブチィっとむしり取る。
「ぎゃぁああああああああああ」
「苦しい? 痛い? ふふ……でもねぇ……アタシの方が、ずっと痛かったぁあ!! 助けてくれって、ずっと叫んでいたのに! 産まれた時からずっと、だぁれも助けてくれなかったからなぁあああ!!」
「うぅうう、ぎいい! くずのはぁあああ!!」
叫びながら、ミカンは、残っている左手で、アイテムボックスから剣を抜くと、思いっきり斬りかかった。
ユズはよけない。
ニヤニヤ笑って、ミカンの剣を顔面で受け止め、
「よわぁ……蚊が止まったのと一緒。ま、存在値730だったら、こんなもんだろうね」
「ぐっ……」
「記念に、もう一発ぐらい、攻撃させてあげようか? くくく……ま、何したって無駄だけどね。あんたの、そのゴミみたいな存在値じゃ」
と、ずっと、ニタニタ笑っているユズに、ミカンは、
「そう……じゃあ、一発……記念に攻撃させてもらおうか……」
そう言うと、深く、深く、集中していく。
(転生してからずっと……この日ために……必死に磨いてきた技……くらえぇ!)
人生最大クラスのゾーンに入ると、
「――『クズ突き』――」
これまで、人知れず……こっそりと、ずっと、鍛練し続けていた刺突タイプの必殺技。
このクズの名前や顔は、正直、ほとんど覚えていなかった。
しかし、受けた痛みは、心の深部に刻み込まれていた。
ゆえに、
もし、このクズに出会うことがあったら、ブチかましてやろうと、ずっと磨いてきた。
――だから、
「ぎゃああああああ!」
ミカンのプラチナスペシャル『ヴィクトリア・トップシークレット』。
彼女が人知れず積み重ねた勝利のための努力は……必ず実を結ぶ!!




