34話 地獄。
34話 地獄。
何度も配下に殺され続けて、経験値を莫大に稼ぐ。
――自分でやると決めたことだが、
それでも、くりかえすうちに、センの心は当然壊れていく。
『う、ぁ……ぁああ……あああ……』
『愛している配下達に殺され続ける』という地獄の中、
何度も、頭を抱えて、うずくまり、ボロボロと泣いた。
『あああ……あああああっ……』
心が砕けて、涙が止まらない。
それでも、センは止まらなかった。
延々と、涙に溺れて、
それでも折れずに殺され続けた……
★
――センの配下の中でも、最上位クラスの力を持つ二人。
『ゾメガ・オルゴレアム』と『平熱マン』。
平熱マンは、名前こそふざけているが、その実力は本物。
三至天帝の一人で、究極超勇者の称号を持つ天才剣士。
ゾメガはそのイカつい名前の通り、元第二アルファを統治していた最強の魔法使い。
三至天帝の一人で、究極超魔王の称号を持つ魔人の頂点。
ゾメガと平は、『敵』である『センエース』をロックオンすると、
『――\/\ 【エニグマ・ミーティア】 /\/――』
『閃光・平熱マンスラッシュ』
全力で攻撃を仕掛けていく。
流星群みたいな銃撃。
研ぎ澄まされた剣の嵐。
センは、どうにかよけつつも、深みのある殺気を向けられて、一瞬、クラっとする。
その隙をついて、平熱マンが、センの心臓に剣をつきたてた。
『ぐえっ……』
『とてつもない生命力ですね。これだけの猛攻を受けて、まだ死なないとは』
平熱マンは、何度も、何度も、センを切りつける。センは、激しい痛みの中で、
『は、はは……』
つい、笑ってしまった。
『何がおかしいのですか?』
と平に問われたセンは、数秒だけダンマリを決め込んでから、
『いやぁ……もちろん、それなりに【愛している】って自覚はあったんだが……ここまでとは思っていなかった……』
『はい?』
そこで、センは、平熱マンの頭をガシっと掴んで、鼻が触れ合うほどの近距離で、
『ハリネズミのジレンマって知っているか?』
『急になんですか?』
『傷つくことを恐れて距離をとる……嫌いな概念だ。そういう臆病さにはヘドがでる』
『だから、なんですか?』
そう言いつつも、平は、センの腹部に剣をつきたてる。
センは、ごふっと、血を吐いたが、しかし、平の頭から手を離さず、
『……【だから何】って……はっ……感情論の結論なんて、わかってたまるかよ』
『そうですか、では死んでください』
そう言いながら、平は、何度も、何度も、センの腹部に剣をつきたてる。
意識が朦朧としてきたセンは、
(……俺が……折れたら……)
グっと、力強く、平熱マンを抱きしめながら、
(お前ら全員……死ぬんだってさ……)
心の中で、そう前を置いてから、
『勘弁してほしいぜ……まったく、よぉ……はっ』
最後に、力なく、けれど、芯のある声音でそう言ってから――センは絶命した。
★
――さらに、繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返した。
死を前にして、圧縮される時間。
走馬灯が、ギュンギュンと回る。
センの頭の中を、『配下たちとの思い出』が駆け巡っていく。
配下の中には、『赤ん坊のころから見守ってきたヤツ』もいる。
『オムツをかえてやったことがある者』が何人もいる。
ゼノリカの古参は、みな、自慢の家族。
一人一人、思い出を聞かれれば、永遠に語ることができる。
(死ぬ……全員……ここで、俺が折れると……全員が死ぬ……)
デスタイムリープの苦しさに折れそうになるたび、頭の中を、『配下の死という恐怖』が包み込む。
なによりも『愛する者の死』が、怖くて、怖くて、たまらない。
だから舞い続ける。死につづける。
★
――まだまだ、まだまだ、何度も、何度も、繰り返した。
そんなこんなで1000億年が経過。
ずっと、毎回、ループする度に、
『……絶対にぃいいい! 折れてやらんぞぉおおお! くそがぁあああ!!』
――そんな勇気を叫び続けるうちに、配下たちの中で、
ようやく、『レボリューション』が起こり始める。
配下全員が『神』になっていく。
『悪意のインフレ』に対抗するための『狂気のインフレ』が始まる。
★
『確かな時間』を積み重ねていく。
1100億年、1200億年……1日、1日を、しっかりと踏みしめていく。
本物の1秒、1秒と、全力で向き合っていく。
2000億年、3000億年……繰り返す、繰り返す、繰り返す。
★
数千億年を経て、
センはグッタリしていた。
疲れ切ったその目に生気はない。
うつろな目で、完全な無意識のままに、
『喝采はいらない……賛美も不要。感謝も、理解も、共感もいらない……何もいらない……いらない……何も……俺は……ただ……』
ハッキリと無意識のまま、シッカリ朦朧としたまま、
――かざりのない本音を告げる。
『……まっすぐな命が、幸せに生きてくれれば、それでいい……』
『それを邪魔する悪い敵は……ぜんぶ俺が……やっつけてあげるから……だから……何も心配しなくていいからね……大丈夫だからね……』
真っ白にうなだれているセンの、こぼれおちた『ただの本音』。
極限状態でしか口にできない、心の奥からにじみ出た想い。




