32話 数字がバグってる。
32話 数字がバグってる。
「……はぁ」
ミカンは、しんどそうに、タメ息をついてから、
「普通に考えて、200億年なんて、ありえませんよね。……バグとかバーチャとかを倒した辺りまでは……まあ、まだ納得できる部分もあるのですが、『究極超邪神を倒した話』あたりから、荒唐無稽になってくるというか……『過大に創りこまれた武勇伝』があまりにも無茶苦茶になりすぎて……せっかくいい英雄譚なのに、なんで、あんな過剰な嘘を……私だって、ゼノリカの末端だから、陛下を信じたい部分もある……けど、流石にアレは信じられない……それが、なんだか、最近苦しくて……」
「苦しむ必要はないが、実際、聖典の内容って『センエースが神界深層に転生したぐらい』から様子がおかしくなるよな。数値も露骨にバグってくるし。……ちなみにミカン、お前、『センが究極超邪神を倒した後の話』とかも聞いた?」
「はい。その後の話も履修させていただいております。200億年をかけて究極超邪神を倒した陛下は、その後、『すべての世界の外側』にある特別な世界『原初の世界』に転生し、そこで『200【兆】年』の鍛錬を積んだ……ということになっていますね」
ミカンは、眉間にシワをよせて、視線を外しながら、そうつぶやく。
「笑えるよな。ソウルゲートの200億年でも、いろんな意味でズレてんのに、センエースは、さらに、その1万倍の200兆年を積んだらしいって。ははは、マジで、質の低いジョークだぜ」
「嘘をつくときには、むしろ信憑性・整合性を何より大事にすべきである……というのが私の忌憚のない感想です。なんでもかんでも数字を大きくすればいいという話でもないと思いますし。ここまでくると、もはや誤解ですらなく、ただの悪質な捏造ですよ。絶対にやっちゃいけないこと。……あんな無茶な虚飾をつけたら、陛下がやったことが、全部、薄っぺらな嘘になってしまう……」
言いながら、ミカンは心の中で、
(多分、『センエース』は、本当に頑張って、戦争を終わらせたり、外敵を倒したりしたんだろう。そこまでは事実で……そして、それ自体は本当にとても凄い事。だからこそ、幹部の人たちは、そんなセンエースの偉業をどうしても讃えたくて……色々な人に、センエースはすごいんだって思ってもらいたくて……それで『過剰にインパクトが強い神話』を捏造してしまったんだろう。可哀そうな人たちだ。誰のためにもならないことを、必死に……)
「ちなみに、ミカンさんよぉ。……200兆年に関しては、どんな風だったって聞いた? ちょっと教えてくれよ」
「ぇ、はい……かまいませんが……」
コホンと、一度、セキを挟んでから、ミカンは、ちょっと恥ずかしそうに語りだす。
「原初の世界に転生したセンエース神帝陛下は――」




