10話 ゼノリカの幹部になるという意味。
10話 ゼノリカの幹部になるという意味。
『エキドナール・ドナ』
――九華十傑、第十席序列三位。
幹部の中でも特に神帝への帰依が強く、狂信者の中でも『かなり濃い側』に分類される魔女。
腰まで流れる長い黒髪は光を吸い込むように艶やかで、わずかな動きに合わせて静かに波打ち、背後に黒い影を広げていく。
重厚な装飾は一切の隙を許さず、金の意匠が鋭く輪郭を縁取り、その一歩ごとに空気の密度が変わった。
配下たちは言葉を発することすら許されず、ただその前に立たされている。
魔女の視線が落ちた瞬間、場の温度が下がった。
逃げ場はどこにもないと理解させるように、静かで確実な圧が満ちていく。
空間そのものが、彼女の意思に従うように歪んでいた。
その眼前に並ぶ四名の再連メンバー。
世界中からかき集められた天帝、魔王、勇者――
かつてそれぞれの世界で頂点に立っていた存在たちの中でも、さらに選び抜かれた上澄み。
その四人が、いま静かに並んでいる。
この場に立てるということ自体が、すでに異常だった。
再連という機関は、優秀な個体を集めている。
だが、その中でなお『突出している』と判断されなければ、この壇上には上がれない。
選ばれるということは、単に強いというだけでは足りない。
使えるかどうか、正しい意味で従順であるか、あらゆる意味において強固であるか――そうした基準をすべて潜り抜けた者だけが、この位置に立っている。
そのズバ抜けた優秀さゆえに、彼らはこのたび、『九華の末席』という地位に昇格する資格を得た。
ゼノリカという超巨大組織において、『幹部』の領域に踏み込むことを許される可能性。
それは、単なる出世ではない。
この世界における『支配する側』へと完全に回ることを意味していた。
それは、選ばれた者にしか与えられない席……最高位の特権。
もちろん、大いなる立場には大いなる責任が伴うが、
その覚悟を持つ者にとっては垂涎のポジション。
そして――
彼らの背後には、無数の視線があった。
講堂に詰めかけた再連メンバーたち。
同じように連れてこられ、同じように訓練を受け、だがここに立てなかった者たち。
その瞳には、明確な差が宿っている。
羨望。嫉妬。諦念。
そして、どうしようもないほどの憧れ。
前列に座る者ほど、その感情は濃い。
後方にいくほど、それは薄れ、代わりに諦めが深く沈殿している。
だが、完全に消えている者はいない。
誰もが一度は、この壇上に立つ自分を想像したことがあるからだ。
壇上に立つ『ペン、レン、ミカン、ユズ』の四名は、
それらすべてを背に受けながら、ただ前を向いていた。
背中に刺さる視線の重さを、感じていないわけではない。
それでも、それを意識に上げることはしない。
ここで揺れる者に、次はないと知っているから。
やがて、ドナが一歩前に出る。




