表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローごっこをしていただけなのに、気付いたらカルト教祖になっていました。  作者: 閃幽零×祝百万部@センエースの漫画版をBOOTHで販売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/117

97話 残心。


 97話 残心。


「おらおらおら! どうした、ごらぁあ! 蚊と変わらねぇぞ、あぁああん?!」


 ゲートの深部から這い出してくる、

 『トラックサイズの薄羽が生えたサソリ』みたいな怪物。 


 今のセンにとって、それは、

 もはや『脅威』と呼べるものではなかった。


「どうした、どうした、へいへいへい! しょうへいへーい!」


 出現した瞬間、虫けらの命がかき消える。


 バグが衝撃を認識するよりも早く、すべてが終わっている。

 動こうとする前に、魂魄が砕かれている。


 かつて……『バグ戦序盤』のセンは、この虫一匹を殺すのに丸一日を要した。

 殺すのに慣れてからだって、結構な時間を必要とした。


 刃は通らず、削り切るにはあまりにも膨大で、

 それでもどうにか倒した先で、翌日には何事もなかったかのように復活していた。


 終わりのない消耗戦。

 救えないことが確定している戦い。


 ――だが、


「昨日のことのように覚えているぜ、てめぇと戦った苦悩! まあ、嘘だけどなぁあ! このあとに起きる出来事が目白押しすぎて、てめぇの存在、ちょっとおぼろげだわ! ごめんね、ごめんねぇええ!!」


 秒殺を繰り返すセン。 

 視界に入るよりも前に、すべてを処理する。

 思考の外側で、演算のように、機械的に、淡々と。


 群れであろうが、個であろうが関係ない。

 1万だろうが、10万だろうが、誤差にもならない。


 センにとって、それは、マジで、ただの『蚊の群れ』と変わらない。


 そもそも、今回のバグは、かつてよりも明らかに弱い。


 戦争が起きていない。

 大量の死によって歪んだ世界ではない。

 ゆえに、バグの質も、あの時とは比べものにならないほど落ちている。



 ゲートの奥から滲み出た異形は、世界に足跡を残すことなく消えていく。

 都市を襲うこともなければ、悲鳴が上がることもない。

 何かが起こったという痕跡すら、残らない。


 あまりにも速く。

 あまりにも静かに。


 ――すべてが終わった。


 だから、誰も気づかない。

 世界中の誰もが、何も知らないまま、穏やかな今日を生きている。



 ★



 バグを処理し終えた直後の空気は、

 あまりにも何事もなさすぎて、もはや不自然と言っていいレベルだった。


 世界中のどこにも、無残な焼け跡も、悲痛な悲鳴も、砕けた瓦礫もない。

 鼻をつく焦げ臭さも、肌を刺すような熱も、どこにもない。

 本来なら巻き起こるはずだった地獄が、ここには、何一つとして存在していない。


「……は……はははははははっ!!」


 センは、思わず大声で笑った。

 心から本気で笑ったのは、結構久しぶりかもしれない……なんてことを思う。


「ははっ……はっ……」


 笑い終えてから、わずかに目を細めて、踵を返した。

 そのまま、足の向くままに近くの街へと入る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
誰も救われたことに気づかない平和、これぞ真の救世主
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ