96話 戦争を殺す狂気の具現。
96話 戦争を殺す狂気の具現。
幾度となく転生を繰り返した果て、
――センは、ついに、この時を迎えた。
――それは、突然の出来事だった。
ある日、第2~第9アルファの全てが、『謎のゲート』によって繋がった。
世界と世界の境界が、何の前触れもなく崩壊し、
異なる理と文化と欲望が、一つの舞台に押し出された。
タイムリープする前の『悲惨な過去』では、
この瞬間を境に、全てが狂い始めた。
疑心暗鬼が連鎖し、恐怖が膨張し、
やがては、取り返しのつかない泥沼へと落ちていった。
しかし、
「ほう、これはすごい。存在値が620まで上がりましたよ。実に素晴らしい存在値です。部下に欲しいぐらいですよ」
テンプレな称賛を口にしたのは、もちろん、舞い散る閃光。
センの視線の先にいるのは、異世界の天帝。
「参考までに、これからあなたが戦おうとしているこのわたしの存在値数を、お教えしておきましょうか」
そこで、センは、しっかりと溜めた上で、
これ以上ないドヤ顔で、
「私の存在値は……2兆7000億です。ですが、もちろん、フルパワーであなたと戦う気はありませんので、ご心配なく」
この時のために、センエースは、すべてを費やしてきた。
2垓年という、気の遠くなるような時間の中で積み上げた知識と経験。
無数の失敗と、無数の後悔。
救えなかった命の数だけ刻み込まれた、決して消えない自縛の記憶。
それらすべてを糧に、センは、この2週目で、自らを極限まで研ぎ澄ませた。
『莫大な知識』をフル稼働させ、
プラスアルファの『隠し要素』も惜しみなく使い潰した結果、
神の世界にすら到達していない段階で、
――センは『究極超神化』することに成功する。
★
センは、『戦争を泥沼化させて利益を得ようとするクズども』を、
圧倒的な力で、片っ端からボコボコにしていった。
バカどもは、抵抗一つできずに塵になっていく。
当然の話。
存在値数百程度のカスが、
存在値2兆を超えている戦神に何かできるわけがない。
「この戦争を……始まる前に、終わらせにきた」
その宣告通り、
地獄の戦争は、始まる前に終わった。
★
バグ戦も、当然余裕だった。
『存在値1000そこそこだった当時のセン』にとってはエグい地獄だったバグ乱舞も……今となってはマジで『ちょっとした害虫駆除』と大差ない。
かつて、何度も何度も刃を振るい、それでも足りず、なにも救えず、ただ削られていく世界を見ていることしかできなかった。
手を伸ばしても、指先が届く前に、誰かが消えていった。
名前を覚えている者もいれば、顔すら思い出せない者もいる。
だが、『救えなかった命がある』という事実だけは確かに刻み込まれている。
――だからこそ、センは戻ってきた。
すべてを抱えたまま、この地点へ。




