94話 隠しダンジョン。
94話 隠しダンジョン。
地図の空白を、執拗に塗り潰していくように――センは、世界の隅々まで踏破していく。
古代遺跡の、崩れかけた地下回廊。
天井からは砂と瓦礫が絶えず降り落ち、わずかな振動で崩落しかねない死の通路。
深海の裂け目に沈む、封印領域。
水圧は骨を軋ませ、視界は闇に閉ざされ、そこに在るだけで生命を拒絶する静寂が支配している。
火山の奥底――煮え滾るマグマのさらに下、魔力が澱のように溜まり続けた吹き溜まり。
空気は灼け、呼吸するたびに喉が焼け落ちるような錯覚を伴う、地獄の底。
そして、人類史において一度たりとも足を踏み入れられたことのない禁域。
そこは、存在そのものが歪み、理そのものが拒絶される、世界の裏側。
常人であれば、近づくだけで命を失うような場所。
あるいは、踏み込んだ瞬間に存在ごと消し飛ばされてもおかしくない領域。
それらすべてを、センは――くまなく、執拗に、そして黙々と踏み荒らしていった。
恐怖も、躊躇も、迷いもない。
ただ淡々と、作業のように。
世界の隅に残された『未踏』という概念そのものを、根こそぎ剥ぎ取るかのように。
そして――見つける。
世界が密かに隠し続けてきた『裏の仕組み』を。
古代遺跡の奥深く。
崩落した壁面の裏に紛れるように設けられていた、『隠し階段』。
「おっとぉ! ありましたよ、隠し要素!! うぇっへっへ! ここには、いったい、何があるのかにゃぁ? おじさんに全部、見せてごらんなさいな! ほーら、隠しても無駄だから! うひひひひ!」
階段を降りきった先にあった、誰にも知られていない密室。
そこに眠っていた『古文書』は、ただの記録ではなかった。
暗号化され、幾重にも封じられた『解くこと自体が試練』となっている、意志を持つ情報体。
「うわ……うざぁ……こういうの嫌いぃ……俺、IQ低いから、こういう論理クイズ系無理ぃ……トウシに連絡できたらなぁ……くそ……あいつと一緒に転生してぇなぁ……考えるのやだよぉ……しんどいよぉ……助けてぇえ、ママァアア!」
文句を垂れつつ、どうにか解析に成功(現地人の賢者をかき集めて、無理やり解かせた。超絶有能な人材を500人ぐらい誘拐してきて、朝から晩まで強制的に解析をさせた結果、3年ちょっとで解読することができた)。
突破した先に、さらに用意されていたのは――
現実から切り離された、『秘密の異空間ダンジョン』。
物理法則も、時間の流れも、空間の定義さえも歪んだその領域を、センは迷うことなく進んでいく。
「出てくるモンスターは、どいつもこいつも存在値600程度で雑魚だけど、無駄に長ぇな、このダンジョン。ウゼぇ。……地下何階まであんだよ……」
「おいおい、もう地下『10万』階じゃねぇか。なんだ、10万って。ナメやがって……」
「ちょ、もうマジでえぐいって……今回の隠し要素、色々だるいって……」
「まだぁ?! もうええって! いてまうぞ、マジでぇええ!!!」
罠を踏み抜き、異形を屠り、構造そのものを理解し、根底から破壊し、徹底的に支配する。
そして――その最奥のボスを撃破することで、
センは、ついに『報酬』を獲得した。
それは――




