92話 片手間に世界を救って、それから……
92話 片手間に世界を救って、それから……
腐りきった軍部、王族、貴族。
――そうした、『この世界を内側から食い荒らしていた連中』を、
センは一人残らず叩きのめした。
容赦など一切ない。
必要とあらば、徹底的に拷問してから殺した。
世界を蝕む膿を、病的なほど冷徹に、徹底的に切除していく。
そのうえで、『空いた玉座を放置する』ような真似もしなかった。
王がいなければ民は混乱する。
――センエースは、なんだかんだ責任感の塊。
『やるべき事』との向き合い方も病的な閃光。
――腐敗した権力者を引きずり下ろしたあとには、
きちんと、その座にふさわしい者を据えていく。
私欲ではなく責務で動ける者。
権力の意味を正しく理解している者。
『まともな精神性を持つ人間』だけを選び抜き、
各国の権力中枢へと押し上げていく。
すべてはセンエースの独断と偏見。
文句は言わせない。
文句を言いたかったら、センエースより強くならなければいけない。
――そして、その上で、さらに楔を打ち込む。
センは、配下にした龍たちを、各国の空へと放った。
単なる威圧のために飛ばしているわけではない。
それらの龍は、『気まぐれ』ではなく、
『センエースが定めた厳格な断罪基準』に基づいて、
人の営みを空から見下ろしていた。
賄賂を受け取る者。
権力を笠に着て弱者を踏みにじる者。
法を私物化し、正しさを嘲笑う者。
見えないところで人を喰いものにし、
『どうせ誰にも裁かれない』と高をくくる者。
そういう手合いを、龍たちは見逃さない。
空の高みから、絶えず、静かに、しかし一切の緩みなく監視し続ける。
誰がどこで、どんな悪意を抱き、どんな罪を働いたのか。
そのすべてを見定めたうえで、基準に達した者だけを、機械のように冷厳に断罪する。
センエースの命令なので、龍は一切怠けることができない。
センエースの怒りを買わないよう、龍たちは血眼になって、人類の罪を裁き続けた。
――お天道様は見ている。
――決してサボることなく、常に、病的に。
見上げればそこに、超越者の眼差しがある。
そう理解した瞬間から、人々は少しずつ、
自分の振る舞いを改めざるをえなくなった。
結果として――
数日も経たぬうちに、世界情勢はおおむね安定した。
長年くすぶっていた火種が、完全に消えたわけではない。
だが、少なくとも、『龍の暴虐』や『クソ貴族の横暴』が野放しにされる時代は終わった。
理不尽を当然のように振りかざしていた者たちは沈黙し、怯え、身を縮めるしかなくなる。
当然ながら、その過程でセン自身が表に出ることは、一度としてなかった。
名も姿も徹底的に隠し続けた。
世界を動かしたのは間違いなくセンエースだったが、
そのことを知る者は誰もいない。




