90話 舞い散るドラゴンキラー。
90話 舞い散るドラゴンキラー。
――空を裂く咆哮とともに、巨体が空から降りてくる。
翼が一度はためくだけで、突風が、ボロボロの街路を薙ぎ払った。
瓦礫が宙を舞い、荒廃した建物の窓が一斉に割れる。
山一つを踏み潰せそうなほどの翼。
口からあふれる炎は、吐き出されるだけで街路を赤く焼き焦がす。
今は誰もいない、棄てられた街。
龍の『気まぐれな悪意』で街を追われた人は数えきれない。
龍は最高位の怪物。
普通の人間なら、姿を見ただけで腰を抜かす暴力の化身。
この世界は、そんな龍種に支配されていた。
人々は、龍の機嫌を損ねないよう怯えながら生きている。
まるで、『気まぐれな暴君に飼われたペット』のように。
人々は、ことあるごとに龍へと生贄を捧げた。
赤子を100人差し出せと命じられた際ですら黙って従った。
どれだけ従順な奴隷に徹していても、龍の気分次第で殺される。
ここは、そういう世界。
龍のスペックは人を大幅に超えている。
超越的な存在にして、世界の支配者。
――だが、センにとって龍など、ただの経験値袋。
「人間風情が、この私に逆らうか!!」
龍が咆哮とともに炎を吐き出す。
街路を埋め尽くすほどの火柱。
だが、センは一歩も動かなかった。
炎が収まった瞬間、煙の中から、ゆっくりと歩いて出てくる。
完全無欠の無傷。
ナメた事をほざくドラゴンに、
センはニタリと、これ以上なく黒く微笑んで、
「龍風情が、俺に逆らうなよ。俺様を誰だと心得る。2垓年後にコスモゾーンと融合する男だぞ」
「ワケの分からんコトをぉおお!!」
怒り狂った龍が、巨大な爪を振り下ろす。
だが――
振り下ろされた瞬間、センの姿が消えた。
次の瞬間。
龍の鼻先で、センはさかさまに舞っていた。
魔法の翼をはためかせ、優雅に龍を睥睨している。
「命の価値を教えてやるよ」
そして、ハンドボールでも握るみたいに、
龍の角を――片手で掴む。
「なっ!! ちょっ――待っ――」
「待たねぇよ。お前、遊びで人を殺しすぎ。狩りを悪だと言う気はねぇが……てめぇは俺の逆鱗に触れた」
センはそのまま地面に向かって投げつけた。
山ほどある巨体が、まるで石ころのように落下。
地面に叩きつけられると同時、
轟音と共に、地面が割れ、クレーターが広がる。
龍の骨が砕ける音が、湿った音となって響いた。
血が噴き出し、大地を黒く染める。
「ぐ……が……」
龍が起き上がろうとする。
素晴らしい生命力……ではなく、センが手を抜いているだけ。
命をもてあそんできた龍の命を、あえて執拗に弄ぶ閃光。




