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33話 六日目 その3

 佐々島と雷使いの指揮官が戦闘中。

 阿久津と業天の選手も戦闘をしていた。


「——炎獣武装」


 業天の選手は炎を腕や脚に纏わせる。その籠手には獣の鉤爪ようなものが生成された。


「俺は狙撃手だから、近接戦は苦手なんだよな」


 阿久津は冷や汗をかきながら、スナイパーライフルを構える。


「——ッ!?」


 構えたと同時に炎使いは走り出した。

 阿久津は牽制《けんせい》として一発放つ。

 しかし、銃口の射線に入らないように、身を捩《よじ》りながら避けた。


「ンなもん、当たるかよ!!」


 阿久津は構わず、再び発射する。当然ながら躱された。


「何度やっても、意味ねーよ。そんなモン、当たるかよ!!」


 炎使いはそう叫びながら、勢いを止めず走り続ける。

 阿久津、三度目の射撃。だが、避けられる。


 避けられた三発の波動弾が炎使いの近くのビルに当たり、そのまま潰すように崩れ落ちてきた。


「舐めるなぁ!!」


 炎の鉤爪を大振りに振るい、落下してきたビルを切り裂く。さらに鉄筋を熱で溶かした。


「この程度でオレを倒せると思ったのかぁ!!」


 阿久津はその咆哮《ほうこう》にも怯むことなく、冷静に発砲する。


 相手は炎の鉤爪を伸ばして攻撃を仕掛けるが、阿久津は後方に跳び、距離を取った。


「狙撃手らしく距離ばっか取りやがって! ならこれだ! ——炎獣武装・砲!」


 左の籠手が砲口へと変形し、右手で押さえながら炎弾を連射する。


「——当たれ!」


 阿久津はハンドガンを引き抜き、波動弾を連射した。

 二つの力がぶつかり合い、相殺。

 相殺された炎弾が爆ぜ、周囲へ燃え広がる。


「……」


 二人は無言で、互いを見据えた。

 ——そして先に炎使いが動く。

 炎使いは鉤爪を振るい、炎弾をばら撒きながら距離を詰めた。

 ビルは欠け、道路は抉れ、ガラスは砕け散る。


 阿久津は後ろに退がりながら、発砲した。

 そして先程と同様。交錯して炎は弾ける。


「チッ!?」


 炎使いが聞こえる音で舌打ちをした後、踏み込みさらに鉤爪を振り撒く。だが——

 炎弾で焼かれ破壊されて脆くなっていた道路が崩れた。


「クソ——」


 体勢が揺らぐ。ならばと片膝をついて追撃の炎弾を撃ち込んだ。しかし熱で歪んでいたガラスが弾け、視界を遮った。


「――なっ!?」


 一瞬の死角。さらに。

 先ほど削り取っていたビルの壁面が耐えきれず崩落する。


 鉤爪でガラスや壁面を破壊した反動で、わずかに体勢が流れた。

 その隙に。

 阿久津の一発が、真っ直ぐに通る。


「俺の能力は空間認識。あとはどうなるか計算するだけだ」


 倒れた炎使いを見下ろし、そう独り言のように呟いた。


*****


 亮太は苦戦していた。

 張っていた罠はすべて、カンで見破られ、悉《ことごと》く回避されるか破壊される。


「直感というワリには、全部無意味とかありえねー」


 呆れた顔を作り、銃から波動弾を撃ちながら、水使いから距離を取りつつ市街地エリアを走り回っていた。


「待ちやがれ!! この草食動物が!!」


 それを四足歩行の獣のように追いかける水使い。すると——。


『佐々島大地選手、戦闘不能《リタイア》』


 アナウンスされて、亮太は苦笑いをする。


「これは本格的にまずいか……」


「諦めろ! 仲間が一人、こっちに向かってきている。それにそのうち、オマエの仲間のスナイパーは負けるだろう。三対一はしんどいだろう?」


「二対二になるから、問題ないな! –縛術式–火縛縄封《かばくじょうふう》」


「させるかよ!」


 火でできた縄が水使いに絡みつこうと飛んでいった。

 だが、籠手に付いた剣が伸び、鞭《むち》のようにしなる。そして、亮太の封印を切り裂きながら、そのまま亮太を狙った。


「なっ!?」


 それを亮太は、洗練された動きで避ける。


「クソ、またか!?」


 水使いと亮太の戦いはらこれの繰り返しだった。

 亮太の封印術はカンで無力化されるが、水使いの攻撃も亮太の軍人としての動きによって致命傷にはならず、事実上の硬直状態となっている。


「……」


 お互いに次の手を考える、その直後——亮太の通信機が鳴った。

 それと同時に、その場から走り去る。


「また逃げる気か、この草食動物!?」


『とりあえず、倒したぞ。それで援護に向かえばいいか?』


 阿久津からの連絡が入る。亮太は走りながら指示を飛ばした。


「いいや、念のために今から指定するエリアに狙撃できるようにポイントについてくれ」


『——いいのか?』


「神にでも祈ってくれ」


 苦笑いをしながら走っていると、目の前に雷使いの指揮官が現れる。そして。


「オマエが明星の指揮官だな!!」


「挟み撃ちだ。もう逃げられないぜ!」


 雷使いの指揮官が合流したのを確認して、水使いは笑う。だが——。


「なんだ! これは?」


 業天の選手たちの足元が煌々と輝き、そのことに驚愕した。そして亮太のいる場所も輝いている。


「俺の奥の手だよ。辺り一帯そのものを昏睡させる封印する術。–縛術式–封圏絶空《ふうけんぜっくう》」


 苦笑いを浮かべ、能力の解説を行い。


「これならカンが冴えても、俺を追わないといけない以上、範囲に入らざるを得ない。奇跡的に二人まとめてできるとは運が良すぎるが、そういうこともあるだろう」


「相打ち狙いか!?」


「いいや、–縛術式–断絶無威《だんぜつむい》。まあ、俺だけは影響を受けない、奥の手その二だ。一瞬が限界なモノだがな」


 亮太の身体が、淡く輝いた。肩をすくめながら説明を続けた。


「キサマァァァアアア!!」


 業天の選手たちは絶叫する。その直後、辺り一帯が光に包まれた。


 光が消えると、一人は気絶して封印され、戦闘不能になっている。

 しかし、雷使いの指揮官は自身に能力をぶつけ、気絶せずに立ち、牙を剥き出しにしていた。


「……オレはまだ、……戦える!!」


 亮太は拳を構える。波動量はもう、空と言っていいほど残っていない。取れる手段は格闘戦しかないのだ。


 それに気付いて、さらに吠える。


「オレが近接戦で負ける訳ねーだろガァァァ、あ?」


 脳天に波動弾が撃ち込まれ、気絶。

 亮太はそれを確認すると構えを解き、


「念のために阿久津に、ポイントに行ってもらって正解だったな……」


 こうして、亮太たちの勝利が決まった。

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