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25話 四日目 その6

『いやー、すごい試合でしたね。新人戦に勝るとも劣らない、一般戦も見応えたっぷりでした』


『草原フィールドでの最終エリア――三すくみの展開は圧巻でしたね』


『北辰、業天、そして明星。この三校が最後まで残るとは……本当に見応えのある一戦でした』


『新人戦に続いてタイムアウト決着とは、あのまま続いていたらどうなっていたのか……気になりますね』


 実況と解説が、興奮を隠しきれない様子で試合を振り返る。


『続いての競技は『ブレイク・ペア』です。連携や作戦が求められる競技となっています』


『ペア同士の息の合った動きや戦術が勝敗を分けるこの競技。各校がどのような戦い方を見せてくれるのか、楽しみですね』


『さあ、ここからはチームワークの真価が問われます!』


 観客席からは、まだ興奮のざわめきが収まらない。



『ブレイク・ペア』競技ルール


•二人一組で行われる対戦形式ではない制圧型競技である

•本競技は、火力や能力の相性だけでなく、地形理解、戦術判断、指揮能力、連携力を含めた総合的な制圧力を競う


フィールドおよび対象

•使用フィールドは専用エリアとし、試合ごとに構成が異なる

•フィールドには、市街地、森林、遺跡、岩場などの地形がランダムに選ばれる

•フィールド内には、大型の狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》が一体配置される

•狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》は攻撃機構を搭載しておらず、選手を直接攻撃しない

•狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》は高い機動力と耐久性を持ち、逃走行動に特化している

•単独での追走や力任せの攻撃による撃破は困難である


撃破条件

•撃破条件は、以下のいずれかを満たすこととする

 - 四肢をすべて破壊し、機動力を完全に奪う

 - 胴体または頭部に致命的な損傷を与える

•どの撃破方法を選択するかは、ペアの判断に委ねられる

•四肢破壊は確実性が高いが、時間を要する

•中枢への攻撃は短時間での撃破が可能だが、高い判断力と連携を要求される


使用可能手段

•罠や拘束具の使用は認められている

•狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》は罠や拘束を想定した回避行動を取る

•安易な捕縛や単純な拘束は通用しない


制限時間および判定

•競技の制限時間は十分間である

•制限時間内に狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》を撃破できなかった場合、失格となる

•本競技では、速度や火力だけでなく、追い込み、位置取り、判断の速さ、そしてペア同士の連携と信頼が重要な評価要素となる



『待ちやがれー!!』


 市街地エリア。二人組の男女が狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》を追って走っていた。


「高松君、八木野さんのペアは平均タイムに収まりそうね」


 涼菜はモニターを凝視したまま、小さく息を吐く。

 わずかな安堵が混じっていた。


「全くだな。その前の鳥沢と椚田のペアは、ちゃんと練習してたのか疑うレベルだったぞ」


 天音は先ほどの試合を思い出し、こめかみを押さえる。


 連携は噛み合わず、追い込みも甘い。

 あれでは話にならない。


 ――その時。実況席が一気に沸いた。


『おっとぉ!? 天津の双子ペア、完璧な連携だぁ!』


『無駄がない! 一切のロスがありません!』


 画面が切り替わる。

 そこに映し出されたのは――


 ほぼ同時に動く二人の姿。

 進路を読む前に塞ぎ、逃走を許さない。


「……速い」


 涼菜の目が細められる。


 次の瞬間、拘束。

 そして――即座に撃破。


『出ましたァ!! 新人戦最速記録更新です!!』


 歓声が爆発する。


 双子のインタビューに切り替わったのを見て、涼菜はモニターの電源を落とした。


 涼菜は軽く振り返る。

 その視線の先には、一般戦に出場する選手たちが整列していた。


「――見ての通りよ」


 静かな声。だが、場の空気が締まる。


「明星が不甲斐ないと思われないように」


 涼菜は深呼吸をして、


「一般戦は、結果で見せなさい!」


 逃げ場のない言葉だった。


『はい!!』


 選手たちの声が揃う。

 先ほどまでの空気とは違った、明確な緊張と、覚悟がそこにあった。


 その後の一般戦。

 明星のペアは、安定していた。


 無理に攻めない。

 確実に追い込み、逃がさない。


 無駄のない連携で狼型自律機動体《ブレイク・ターゲット》を制圧し、結果――。

 一位、二位を独占する。


 会場は騒めいた。


『明星、ここで大きくポイントを伸ばしました!!』


『これは総合順位が入れ替わるかもしれません!!』


 実況と解説が興奮を抑えきれずに声を張り上げる。


「この調子のまま、次はお前だな。涼菜」


 天音が腕を組んで真剣な顔で涼菜を見つめて言った。


「ええ。三連覇がかかっているのよ。全力でいくわ」


 涼菜は迷いなく答える。


「……いや、そんな気張るな」


 天音は涼菜を見据えて、


「お前はいつも通りでいいだろ」


 無理に気負う必要はない。

 そう言外に含めた言葉だった。

 涼菜は一瞬だけ目を細める。


「……そうね」


 短く返し、その瞳の奥にある光は変わらない。

 次の戦いへ向けて、静かに燃えていた。

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