27話 孤独な戦場にて 〜カイト編〜
「なんだ? こりゃあ」
カイトは周囲を見渡す。
その直後、背後に弾丸飛んでくる。
「ここは“E”が作った複製空間」
奥から大柄でフード付きの黒装束を纏った暗殺者が現れた。
その手には散弾銃が握られている。
カイトは何事もなく、臨戦体勢のファイティングポーズをとった。
その姿を見てフード越しから歯茎を剥き出しながら笑みを浮かべる。
「お前は暗部慣れした能力者でも(七星大家)でもない。ましてやSSですらない。ククッ……オレサマが一番ラクだ!!」
嬉しそうに両手掲げる暗殺者。
「アハハッ、くぁwせdrftgyふじこlp!?」
笑っていた男の顔面を強く殴り吹き飛ばすカイト。その拳には籠手の心器とバリアが貼ってあった。
男は鼻を押さながら吠える。
「テメェ、ブッコロス!! あぁそうだ思い出した、オレサマを挑発してきたあの男もだ。 “F”がヤる前にアイツもコロス。だからテメェは一瞬だ。シネェ!!」
暗殺者は黒装束を脱ぎ、手に持っていた散弾銃を放り投げる。
その姿はハゲ頭に真っ白い目、下半身が短小でずんぐりむっくりとした体格でありながら大巨漢であった。
その大巨漢は、怒りが故に周囲に波動を撒き散らす。
「『巨人化』」
そして能力を発動したのか、彼の体はどんどん大きくなり優に十メートルを越える高さとなる。
「アハハッ、この力だったらどんなザコでも一発だ。アハハッ、潰れてシネェ!!」
その巨大な足を上げカイトの位置に足を振り落とす。
だが、彼が潰れることはなかった。
「なっ……!?」
腕をクロスさせ全身を包むバリアを展開してその負荷に耐える。彼の足元にひび割れ、クレーターが出来た。
「そのうざったい能力、コイツで叩き壊しってヤル!!」
巨人の手には、三メートルぐらいの長さ。太さは一メートルを越える巨大な棍棒を展開する。
そしてその棍棒をデモンストレーションなのか大きく振り回した。
その結果、風圧によって窓ガラスや展示ガラスは割れ、壁などは大きく崩れる。
その威力を見て酔いしれた。
「アハハッ、やっぱりコイツはイイ。コイツで叩き潰してやる。シネェ!!」
その棍棒を大きく掲げ勢いよくカイトに向かって振るう。
「うわーっ」
些か情けない声を上げながら逃げる。運良く巨大な棍棒の届く範囲から脱出できた。
その後、その巨体が通れない通路に向かって走り出す。
「ちょこまかと逃げやがって、このゴキブリ野郎が」
カイトが入っていった通路目掛けて棍棒を振るう。
二、三階のフロアの一部を振っている間に破壊しながら通路入り口から数メートルを破壊した。それによって風圧と衝撃で通路は全壊する。
「これで死んだ。アハハッ、オレサマが入れない所に逃げれば生き残れると思ったか? 甘いんだよゴキブリが!!」
勝利した事に酔いしれたのか喚き散らす。その為かそれに気付くのに遅れる。
“G”の顔面に向かって瓦礫がもの凄い勢いで飛んで、その瓦礫が眉間の辺りにぶつかった。
「グハッ、い、いてぇ、なんだ一体!?」
眉間の辺りを押さえながらそれを見る。
「なっ!?」
何個も瓦礫が流星群の如く飛んでくるのを見た。
手を顔の前に翳し、流星群から守る。
「いてぇ、いてぇよ」
流星群の威力は高く、指や掌は折れたり脱臼するレベル。
飛んできた方向を見るとカイトがほぼ無傷であった。そして彼は大きい瓦礫を選んではそれを投げる。
「オォーリャアァー」
カイトの能力、『異能装甲』。
波動を凝縮して異常な強度や硬度を誇りバリアと呼ぶべきそれらを身に纏う能力。
その装甲はカイトが認識してなくても発動出来る自動防御機能付きである。
それにより死角からの弾丸を防ぎ、瓦礫の雨から身を守る事が出来たのだ。
そしてそのバリアを通せば質量を無視することが出来、どんなに重くても持ち上げられるようになった。
その結果、彼は巨大な瓦礫を軽々持ち上げ恵まれた体格と鍛えぬかれた肉体によって、勢いよく飛ばせるのである。
(……怖ぇ)
心の底から、そう思った。
(殺し合いが……こんなに……)
だが、逃げない。
瓦礫をぶん投げながら、戦う事を後悔していた。
(だが、やってやる。あぁそうだよ。ただの正義感でやっているだけだ。だから殺しはしないが、ぶっ倒してやる)
しかしこれでは、瓦礫を投擲しているだけでは埒が開かない。故に考える。
(考えろ、この複製された空間を最大限使って考えろ)
投擲をいったん止め、周りを見渡す。
そして施設内の奥に向かって走り出した。
「逃げるんじゃあねぇ、出てこい!! このゴキブリヤローが!!」
*****
「とりあえず、青果コーナーに入ったが」
適当に店頭に並んでいるリンゴを手に取って砕いてみる。
「本物みたいだな」
次にドリンクコーナーに行って、ペットボトルを開けて床にぶち撒けた。
「飲み物も本物みたいだな。つまりガワだけでなく中身まで複製する能力者だと……!?」
カイトが認識している範囲でも、相当高度な事をしている能力者がいる事に戦慄し、声に出してしまう。
この精度の複製を行えるということは、SSランクと遜色ない能力というわけだ。
「中身が本物っていうことは多分、あれとかが出来るな。昔、授業とかで聞いたことがある。些かエグいが仕方がねぇー。なら、やるきゃねー!」
そして何処かへ走り出すのであった。
*****
「ち、ちっくしょー、完全に見失った。大体なんで、ショッピングモール全体を複製したんだ“E”のヤツ。オレサマは索敵が苦手なんだよー」
能力を解除してカイトの事を捜索したが途中で見失ってしまい、“G”は、最初の場所に戻り地団駄を踏み瓦礫を蹴り飛ばすなど暴れていた。
「……ッ!?」
何かが飛んできて棍棒で薙ぎ払うとするが勢い余って破壊してしまう。
破壊した物はなんならかの容器でそれに液体が入っており、その液体を被ってしまった。
「毒か? ……まぁいいか、まぁこんな所あるわけないし」
破壊した容器のラベルには、塩素系漂白剤と表記されていたのだが、彼には日本語が読めないので気にしないでいた。
その直後、二階からカイトが身を乗り出しなんらかの蓋の空いた容器勢いよく投げる。液体は宙を舞う。
今度はそれを被らないようにバックジャンプする。
「ガハッ・・・!?、ヒュー、ヒュー」
自身が被って床に垂れていた液体と宙を舞った液体が床に落ちた時、なんらかの反応を起こしたのか“G”は呼吸困難に陥る。
次に投げた液体大容量のクエン酸であった。
つまり出来上がるのは、混ぜるなキケンで有名な塩素ガスである。
「ウォォォォオオオリィィイアアア!!」
今度は大きめを袋を何個も空高く放り投げる。
勢いよく投げた袋から粉が出てきて雪のよう舞う。
カイトの手には市販のライターが握られており、一呼吸ついて着火させた。
それを舞っている粉の辺りに向かって投げる。その直後大きく、《《爆ぜた》》。
《《粉塵爆発》》。
「はぁはぁ、その辺で出来る毒ガスと爆弾だよ。ショッピングモールと一般人ナメんな」
爆風は自身の能力で防ぎ、空気中の酸素一気に消え呼吸が浅くなりながら精一杯強がる。
「なっ……!?」
爆発によって液体は蒸発して、毒ガスは吹き飛んだみたいであった。
建物はほぼ倒壊寸前で炎はあちこち可燃性の物を燃やす。そんな状況の中、
「ガハッ……!?」
“G”は大きく火傷を負っていて意識が朦朧としていながらも立っていた。
「……コ、コリョ、コリョス。……絶対・・・オメェは……コロス」
毒ガスを吸い、酸欠になった状態になっても殺害予告を続ける。
そして彼の身体が、再び大きくなっていく。
その速さはあり得ないほど遅かった。
波動の生成が上手く出来ないのであろう。
意識が朦朧としている場合、また呼吸困難な場合発動をする事が難しいのだ。現に彼の心器は消えかけている。
それでも殺意のみで、能力を発動させていた。
「……っ!?」
その光景と殺意に尻窄みしてしまう。
「ウォォォォオオオリィィイアアア!!」
だが気を取り直して、発破をかけるように我武者羅に叫びながら籠手を生成して、拳を中心に能力を発動して走りだす。
そして拳を大きくめい一杯振るい、右頬にストレートに直撃して吹き飛ぶ。
「ぐっ……」
能力は解除しているのだが、まだ意識があるのか呻きながら立ち上がろうとする。
「う、うわぁぁぁあああ!!」
立ち上がらせまいと馬乗りとなり精一杯、拳を叩きつけた。
「ぐっ……」
何発喰らった後、最後に呻きながら“G”は意識を手放す。
「終わったのか? はぁぁ」
気絶したのを確認して、深いため息を吐いた後、戦闘によるアドレナリンが切れたのかカイトも意識を手放した。




