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第四話 啄木鳥
夜。
武田陣営には、重い沈黙が落ちていた。
揺れる松明。
広げられた地図。
その中央を、
一人の男の指が静かになぞる。
山本勘助 である。
「妻女山に陣を敷いた以上、景虎は動きませぬ」
低い声だった。
周囲の武将たちは、
息を殺して聞いている。
勘助は碁石を一つ摘むと、
地図の裏へ滑らせた。
「啄木鳥にございます」
「啄木鳥……?」
若い武将が眉をひそめる。
勘助は静かに笑った。
「木の裏を叩けば、鳥は表へ逃げる」
次の瞬間、
黒い碁石が地図の上を走った。
「我らが背後より妻女山を突けば――」
白石が動く。
「景虎は八幡原へ降りる」
さらに碁石が並ぶ。
「そこを、信玄公本隊が討つ」
沈黙。
やがて。
武田信玄 が、
静かに目を開いた。
「面白い」
炎が揺れた。
その瞬間だった。
盤上の碁石が、
まるで兵のように浮かび上がったのは。




