エンド39 誇りにならない背中の傷
「あ、ああ。ゾンビさんがやられちゃいますぅ」
少女が慌てたような怯えたような、そんな声を出した。
だが、勿論この言葉を素直に受け取ることは聖夜は出来ないわけで、
ーーな、なんだ?もしかして、倒されても問題ないということか?だが、なぜだ?ボスゾンビは、強力な手札のはずなのに………ん?待てよ、そういえば、墓場をうろついているガキがいるって話だったよな?もしかして、それってこいつのこt、っ!
気付いたときには、身体が動いていた。
横に跳んだ聖夜のギリギリの所を巨体が駆け抜けていく。
その巨体は、ボスゾンビ。
脚の太いタイプだ。
「あ、あぁ。避けられちゃいましたぁ。困りますぅ」
「嘘だろ!絶対困ってないだろ!」
聖夜は少女の言葉にツッコミを入れつつ、素速く思考を行う。
ーーマジか。ボスゾンビが2体かよ。流石に辛いなぁ。……この状況から考えて、あのガキの能力はゾンビを操る能力ってだけじゃなさそうだな。あいつの能力は何だ?可能性として考えられるのは、
「……バフ?」
聖夜が思い出すのは、宿のキャーミャの言葉。
殺人事件が起きて、男が女を立ち上がらせようとしたときに見えた薄い光、アレはバフによるモノだったという話だ。
ーーあのときにも、このガキがいた。もしこのガキがバフをかけられると仮定して、そうなると何が考えられるか。
「……お前、ゾンビにバフかけてボスゾンビにしやがったな!」
「え?あ、は、はい、……で、でも、今頃ですか?」
ドスッ!
ボスゾンビの首に深くナイフが突き刺さった。
ーーい、いかんな。思わず力が入ってしまった。……だ、だが、俺は悪くないよな?煽ってきたあのガキ悪いんだから。そう。俺は悪くないんだ。
誰への弁明なのか分からないが、聖夜は頭の中で頑張って弁明した。
これも、ボスゾンビの首にナイフが刺さる、倒せて余裕が生まれたからなのであるが、
……どうやら、その余裕もなくなるようだ。
「で、でも、正解したことは確かなので、プ、プレゼントを差し上げますね」
「はぁ!?」
非常に嫌な予感がした。
先ほどの聖夜の予測。
それが正しいと言うことは、このプレゼントは、
ーー大量のボスゾンビ!?
「うおぉぉぉ!!!!」
気付いたときには走り出していた。
少しでも早くその場を離れなければ、死にかねない。
そんな焦りを狙われた。
ドスッ!
「……あっ、え?」
何かが刺さる音。
そして、地面へとしたたる血。
ーーな、なんで、
「なんでだよ!キャーミャ!隠れておけって言ったはずだろ!」
「……ゴフッ!だ、大丈夫、です」
聖夜をかばい、キャーミャがナイフを受けた。
それが聖夜の目の前で起きた全てだ。
ーーう、嘘だろ。なんでコイツが、俺をかばうんだ?コイツは自由を望んでいて、俺との旅なんて自由を得るための手段でしかなかったはずなのに。
そう。
聖夜が得た実績解除によるキャーミャの情報では、キャーミャは激しく自由を求めていた。
だからこそ、キャーミャは聖夜の勧誘に応えたはずなのだ。
「大丈夫じゃないだろ!この血の量、死ぬぞ!」
「いいんです、これで。私より、神の使い様の命のほう、が、重、い、で、す、か………」
ぐらっ。
最後まで言わず、キャーミャは聖夜へと倒れ込んだ。
べったりと聖夜の身体に血がつく。
「おい!?キャーミャ!?しかっりしろ!!」
ユサユサとキャーミャの身体を激しく揺さぶる。
が、全く反応は返ってこない。
ーー死んでるのか?い、いや、そんなことはないよな?………ただ寝てるだけ、そう!ただ寝てるだけだよな!?そ、そうだよな。コイツ俺が起こそうとしても起きないんだから、今俺が起こそうとしても起きないんだよ。
「あ、あのぉ。お別れはすみましたかぁ?悲しいですよねぇ。味方が死んじゃうと。……で、でも、大丈夫ですよ。私がすぐ、あなたも送ってあげますから」
そう聞こえた直後、聖夜は抱えていたキャーミャを少女の方へ向けた。
少し遅れて、ドスドスという音と、何かがぶつかる衝撃が聞こえる。
少女のいる方に向かって、赤い物も飛び散っていた。
「え、えぇ。ひどいですねぇ。仲間を縦にする何てぇ。地獄に落ちちゃいますよぉ」
「……あぁ?そんなわけな、ゴフッ!?」
否定しようとして、聖夜の口から血があふれた。
聖夜が急いで身体に意識を向けると、背中に違和感を感じる。
そこを見てみると、
「あぁ~。残念。普通には死ねそうにないですねぇ。ゾンビになっちゃいそうですよぉ」
聖夜の背中に、腐肉のような物が沢山付いている。
おそらく、この戦い中少しずつ腐肉を付けられていたのだろう。
そして、
ーー背中に最初に付けられた傷があるから、腐った物が身体に入ってきやすくなってる、か。ああ、行けないな、確か、ゾンビの血肉を浴びすぎると、身体も頭も動きが遅、
《バッドエンド『誇りにならない背中の傷』へ到達》
《防御力が15パーセント上昇します》




