エンド35 ゆっくり開けよう
「さて、取り敢えず今回はこれくらい話しておけば良いか」
「……いえ。待って下さい」
会話を終わらせようとしたが、キャーミャに止められた。
こういうことは珍しい。
ーーここまではっきりと、俺の意思を遮ってまでキャーミャが自分の意思を示すのは珍しいな。ただ、言葉には感情が感じられないが。
「どうした?何かあったか?」
「そのバフが本当にあったというのなら、私より数倍も腕前が上です。できるなら、是非とも勧誘すべきかと」
「ほぅ?勧誘か」
聖夜は目を細めた。
確かに、それだけの腕を持っているなら、仲間にするべきかも知れない。
ーーだが、あの男の腕にバフをかけたって事だろ?つまり、あえて人を殺そうとしたんじゃないのか?そんなヤツが、俺みたいな勇者と一緒に来たがるだろうか?……いや、来たいとは思わないよな。逆に、俺みたいなのは邪魔だから、殺したいとすら思う可能性もある。
「……それはやりたくないな。力はあっても、人間性が怪しすぎる。素直に魔王討伐に参加してくれるとも思えん」
「そうですか」
キャーミャが感情のない声で言った。
それから少し沈黙が続く、
ーーそ、そろそろ話題変えても良いよな?かなり気まずい雰囲気になってるし。
「よ、よし。今日も早めに寝るか。今日のことは頭の片隅にとどめておくくらいで良いだろう。あまり深く考えるな」
「はい」
聖夜は強引に話を変える。
まだ昨日よりも早い時間だったが、色々とすませてベットに入った。
ーー寝れるか?俺、こんなに早い時間に寝るのは久しぶりなんだが。
聖夜は少し寝られるかどうかか不安だった。
が、
……。
…………。
「……ふぁ?」
普通に寝られた。
ーーあぁ~。まだ日差しはそこまで強くないなぁ。
起きると、まだ日が出かかってるところだった。
「キャーミャは、……当然寝てるよな?」
聖夜はキャーミャに視線を向ける。
いつも通り、キャーミャは爆睡していた。
ーーさて。もう起こすべきかどうか。悩むところだな。
まだ早い時間なので、もう少し寝かせても良いのではないかという思いもある。
それと同時に、自分が暇だから早く起こして次の町を目指したいという気持ちもあった。
ーーもうしばらく放っておくか。しばらくこの辺りを散歩しておけば時間は潰せるだろ。
聖夜は、部屋の扉へと近づく。
そして、ドアノブへ手をかけたところで、
ーーあっ。そうだ。キャーミャを1人にしてるときに何かあるかも知れないし、一応セーブしておこう。
セーブを行う。
それから、部屋の扉を開けた。
その後、このセーブをした自分を褒め称えることになるとも知らずに。
ガンッ!
「………っ~~~~~!?」
誰かに開けた扉が激突したようだ。
聖夜はその人物を確認しようと、扉から出て、
ーーこいつは!?
そう気付いたときには遅かった。
ドスッ!
「あっ。ぐっ!」
すでに、腹部へとナイフが刺さっている。
実績解除やエンディング達成である程度防御力は強化されているはずだが、シッカリと奥まで入り込んでいた。
そしてすぐに、
《バッドエンド『ゆっくり開けよう』へ到達》
《スキル『盾打1』を獲得します》
「う、うそだろ。俺、運悪すぎるだろ。あいつにぶつかるなんて」
聖夜は天を仰いだ。
だが、見えるのは黒い天井だけ。
ーーあぁ?俺の進む先に明るい道はないってか?
聖夜は少し卑屈な精神状態になっている。
ーーおぉ。いいねぇ。暗い道の方が、エンディングを沢山回収できるし、楽しそうじゃないか。
………どうやら、卑屈にはなっていなかったようだ。
どちらかと言えば、楽しそうな表情をしている。
「あのガキ、扉にぶつかっただけで即殺すのかよ。こえぇな~」
聖夜は苦笑しつつ言う。
そう。聖夜を殺したのは、例の少女だった。
「いかんなぁ。最近の若いもんは、すぐに暴力に頼りおって」
年寄りみたいなことを聖夜は言った。
それから、ロードを行う。
光があふれ出し、次の瞬間には、
ーーここか。
聖夜は、キャーミャの寝ている部屋にいた。
ここから出ようとして、少女に殺されるのだ。
ーー良かったぁ。ここでセーブしてて。もししてなかったら、どれだけ前に戻されたことか。
自分の行動を褒めつつ、聖夜は自分のベットで座り、時間を潰す。
それから数分後。
「………そろそろいいだろ?」
もう少女は通り過ぎているだろうと思い、扉へ向かう。
そして、扉へ手をかけ、
ガチャッ!
ドアノブをひねる。
ギィィィィ。
そして、ゆっくりと開いた。
「……ふぅ。誰もいないな」
聖夜は安堵のため息を吐く。
あの少女はおらず、それどころか誰も廊下にはいなかった。
ーーさて、後は適当に散歩して、時間を潰せば良いんだよな?
聖夜は音を立てず、ゆっくりと歩いて行く。
それから数分間、まだあまり人の多くない町中を散歩して楽しんだ。
ーーあぁ~。たまにはこうして、心を落ち着けるのも良いなぁ。
「お兄さん」
「ん?……って、お前は!」




