エンド34 死に方が違う
「ち、違うんです!私、魔術師で、あんなに男の人は吹き飛ばせないはずなんです!!」
叫び声に近いモノを女は上げる。
それを聞いて、聖夜は少し引っかかりを覚えた。
ーーん?どういうことだ?男の人を吹き飛ばすだと?
ナイフで突き刺すではなく、突き飛ばすだ。
聖夜は首をかしげつつ、前回も同じく犠牲者になった男を見てみる。
現場になっただろう場所へ足を運ぶと、
「ん?どういうこtだ?」
聖夜はその現場を見て、顔をしかめた。
違うのだ。
前回とは、死に方が。
ーー本当に吹き飛ばされている?死因は強い力で突き飛ばされて、壁へ頭を打ったこと、だろうな。
「確かに、ここまでの力をあいつが出せるとは思えないな」
聖夜はそう呟き、また女の方へ視線を向ける。
女はまだうずくまり、頭を抱えていた。
ーーあの様子から考ると、本当にコイツがやったんだろうな。そして、それを自分でも現実として受け止められないって感じなんだろうな。
「おい。お前、ちょっと取り敢えずこっちに来い」
図体のでかい男が、女の肩に手を置く。
そして、そのまま女を持ち上げようとするが、
ーーん。また薄く光ったな。
そう思った直後だった。
グワンッ!
ものすごい勢いで男の腕が振り上げられ、それと共に女の体も上へと飛んでいく。
ーーうおっ!?俺、前回こんな感じで死んだのか?
ベシャッ!
「……あ、え、あぁ?」
男が起きたことが信じられないと言った表情をする。
女の身体は天井にぶち当たり、一部が潰れ、血が舞い散った。
ーーだが、今のところ変な挙動をしてるヤツはいないんだよなぁ。
「……キャ、キャアアアァァァァァァ!!!!?????」
悲鳴が響き渡った。
やっと起きたことが理解できたようだ。
ーー今度の悲鳴は、あのガキじゃないのか。あのガキは、………普通に立ってるな。怖がってるようには演技してるみたいだが。
「な、何やってやがる!?幾ら殺人犯だとしても、そんな簡単に殺すもんじゃないだろ」
「ち、違うんだ!俺は、俺は殺すつもりなんか、」
「嘘をつくな。殺す気がなかったら、あんなに人の身体が浮き上がるわけないだろ!!」
男を責めるモノの言うとおり、確かにやろうと思わなければ人、をにぎった腕だけで投げ飛ばすなんて出来ないだろう。
だが、
ーー確実に、あの薄い光が、身体能力を強化してるよな。ただ、強化率があまりにも高すぎるだろ。きっと、あの男、ちょっとしか力は入れてないだろ?
「頭に血が上ってたのは分かるがよぉ。………とりあえず、ちょっとこい.落ち着いて話をしろ」
「あ、ああ。そ、そうする」
男は促され、とぼとぼと歩いて行く。
その後は、野次馬が少しずつ離れていき、聖夜たちもそれに合わせて部屋へと戻った。
ーーあのガキも割と最初の方で出て行きやがったな。あいつ殺された男の第1発見者のはずだから、行かせちゃ駄目だろ。
聖夜はそう思ってあきれつつ、キャーミャへ視線を向けて、
「どうだった。何か不審な動きをしているヤツがいたか?」
「いえ。不審な動きは見られませんでした。ですが、少し気になることが」
「ん?何だ?」
聖夜は聞いてみる。
が、なかなか返答は返ってこない。
ーーん?どうしたんだ?この間は逆に怖いんだが。
「神の使い様は、なぜこの事が分かったのですか?」
「ああ。そこか」
確かに、そこは気になるだろう。
が、
ーーヤベェ。前回のループでこうなるって分かってたとか言えないよな。どうしよう。困ったぞ…………なんてな。
ちゃんと考えてある。
「俺は、あのガキが男に絡まれてるのを見たんだ。面倒そうだったから関わらなかったが、あいつがきっと叫んで助けを求めるだろうと思ってたんだ」
「なるほど」
キャーミャは納得したように頷いた。
だが、この聖夜の理論だが、マズいところが1つある。
どこかって?
それは勿論、面倒くさそうだったから関わらなかった(助けなかった)、というところだ!
それは、かなり人でなしな考えであり、勇者としてはどうなのかという考えである。
ーーこいつはどう思ってるんだろうな?尊敬度がガクッと落ちてる可能性があるよな。……まあ、まず尊敬されているのかどうかも謎だが。
「俺の方は気になることが1つあってな。………あの、女を振り上げて天井にたたきつけて殺した男がいただろ?あいつの身体が、地味に光っていた気がするんだ」
「……そうなりますと、身体強化関係のバフが掛かっていた可能性が高いですね。すみません。専門である私が気づけなくて」
聖夜の話を聞いて、キャーミャは頭を下げてきた。
頭を下げなくてもいいと言おうとは思ったが、
ーー新人ならそれでもいいのかも知れないが、コイツはプライドを持ってる可能性も高いしな。これはどう判断するべきか。
「いや。お前がバフの専門だとしても、バフを見抜く専門ではないだろう。そういうことは、これから学んでいけば良いんだ」
「はい」
そう返答するキャーミャ。
ーーどう思ってるんだろうな、俺にこんなこと言われて。
聖夜はそう思うが、キャーミャの言葉は相変わらず感情がなくよく分からない。
「さて、取り敢えず今回はこれくらい話しておけば良いか」
「……いえ。待って下さい」




