エンド26 ボスは一撃では死なない
「まずは、あっちに探しに行くか」
「はい」
聖夜たちは普通のゾンビを避けつつ探していく。
普通のゾンビに構っていたら、幾ら時間があっても足りないからだ。
ーーあっちの方にゾンビが多いな。あれは、墓が集まってるのか、それともボスがいるのか。
聖夜は疑わしいところを発見したが、どうしたモノか悩む。
「あそこ、どう思う?」
「疑わしくはあります。が、確定ではありません」
「そうか。高台などから見下ろせれば良いんだが、生憎とそんな所はなさそうだからな」
聖夜は周りを見回しながら言う。
墓石が沢山あるだけで、木など1本も生えていない。
ならば、執れる手段は1つ。
「キャーミャ。バフを頼む。ツッコむぞ」
「はい。では行きます」
聖夜に幾つかの魔法がかけられた。
その感触を確かめて、自分の身体の調子を確認し、聖夜は駆け出した。
ゾンビの群れにかけながら、聖夜は剣を横に構える。
そして、
ーーあっ!セーブしておこう。もしボスがいて、不意打ちみたいなのをくらっても嫌だしな。
セーブをした。
「はぁぁぁぁ!!!!」
セーブをすれば、もう怖がることは何もない。
聖夜は思い切り剣を振り抜いた。
それによって、2対のゾンビの首が飛ぶ。
「まだまだぁ!!!!」
続いて刃を返し、斜めから切り上げ。
3体目のゾンビの犠牲が出た。
だが、群れと言うだけはあって、3体倒れた程度では減った気がしないくらいの数はいる。
「ふっ!やってやるよぉぉぉ!!!」
聖夜は剣を構えて、また近くのゾンビに斬りかかる。
1体、また1体。たまに2体とゾンビは数を減らしていく。
だが、それに比例して、
「………はぁはぁ。まだ、まだ行けるな」
聖夜の体力もすり減ってきていた。
全てを倒しきれるかどうかは不安だ。
一旦撤退するべきかどうかとキャーミャを見て、聖夜はその気持ちを改めた。
キャーミャは、
ーーす、凄い!目立たずに素材の回収してる!?しかも、動作は綺麗だと!?なんなんだ!姫ってこんなことできるのかよ!
素材採集をしていた。
しかも、綺麗な動作なのに音1つ立てず、目立たない。
プロの仕事と言っても良いかも知れないレベルだ。
「うおおおおぉぉぉ!!!!」
キャーミャの様子を見た聖夜はその仕事ぶりに心打たれ、気合いのこもった声を上げた。
そして、次の獲物へ剣を振り下ろす。
その時だった。
ドゴォォォォォンッ!バキバキバキバキッ!
何かが壊れる音がする。
聖夜たちが音の聞こえた、敵の集団の奥の方へ目線を向けると、
「明らかに違う!アレがボスクラスか!」
聖夜の二回りほどの大きさのある巨体のゾンビが、辺りのモノを我武者羅に破壊していた。
そこには一切の知性を感じさせず、破壊衝動というモノだけが感じられた。
ーーこれは、ある意味チャンスかもな。
「おらぁ!!!!」
聖夜は屈み、かけ声と共に、足元から石を拾って投げた。
ヒュゥン。
と石は放物線を描いて飛んでいき、
コツンッ!
と、目的のゾンビだと思われるモノに命中した。
音から判断してほとんどダメージはなさそうだが、目的はそこではないのでの問題もない。
「こいよ。図体だけでかいのろまが!!」
効果があるか分からないが、親指を下にして悪口も飛ばしておく。
ついでに中指も立てておいた。
その影響かは分からないが(絶対違う)、
「グゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
ビチャビチャビチャビチャ!!
うなり声のようなモノを上げながら、ゾンビがこちらへ迫ってきた。
移動中もずっと腕を振り回し続けているので、モブのゾンビも次々と倒れていく。
ーーさて、まずは、敵へ攻撃を仕掛けて、………の前に、セーブしておこう。
上がりに上がったテンションが、一気に通常に戻る。
セーブをするという行為には精神安定の効果まであるようだ。便利すぎる。
「さぁ。やってやるぜぇぇぇぇ!!!!!!」
聖夜はかけだした。
まずは、斜めの角度から、相手の脇を突き刺すように突進していく。
敵の腕が上がった瞬間を狙い、
ーーここだぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!
全力で体当たりするような体勢になりながら突き刺した。
だが、
「「あっ」」
後ろで見ていたキャーミャと声が重なる。
脇に剣を刺すだけでは終わらなかったのだ。
振り上げられていた腕が、聖夜の顔に……、
《バッドエンド『ボスは1撃では死なない』へ到達》
《攻撃力が30パーセント上昇します》
「うわぁ。油断してたなぁ」
暗い空間の中、聖夜は呟いた。
1度突き刺しが成功したところで、完全に動きを止めてしまっていた。
考えてもみれば、ボスがそんな簡単に倒せるわけがないというのに。
「でも、キャーミャのバフがあっても1撃なのかぁ。……いや、それは、頭に当たったから即死だっただけか?他の部位に当たれば死にはしないって可能性も」
聖夜は座り込み、ブツブツと呟きながら考察を行った。
そして、あのゾンビの倒し方について考える。
ーー色々と倒し方はあるんだろうが、前提として、今の俺で倒せるのか?………倒せるかも知れないな。なんと言ったって、四天王の1人を倒してるんだから。




