対策会議
それからひと時ほどして。騒ぎを聞きつけたソタイル――つまりソタイの族長でボイの血親が、血相を変えてやってきた。
騒動の後、頭を抱えたタッコルは生活用の竪穴式住居に逃げ込み、そのまま引きこもってしまっている。
『タッコルはどうした?』
ボイは無言で、彼がこもっている住居を指さした。
勝利の余韻に沸き立ち、早くも口噛み酒まで振る舞われている鍛冶場を一瞥し、ソタイルは忌々しげにタッコルの住居へと向かう。外でボケーっと見送っていたボイだったが、入り口まで行ったソタイルがふと振り返り、ボイを睨んで手招きをしている。
『お前も来い』
ひええ。
*
というわけで現在。
顔面蒼白のタッコル、渋面を作るソタイル、そしてなぜか巻き込まれたボイの三人が、薄暗い住居の中で車座になっていた。
『……なるほどな』
ガタガタと震えるタッコルに代わってボイが一部始終を説明すると、ソタイルは深くため息をついた。当のタッコルは頭を抱えたまま、『終わりだ……タッコの郷は終わりだ……』とうわごとのように繰り返している。
『すると……作った鉄鋌をすべて差し出して手打ちにしてもらえれば上々。下手をつくと、討伐隊が押し寄せてくるかもしれないのだな』
『そうなるね』
『俺が定めの貢物を、小杵殿の館へ納めに行っている間に、このような大事になっておろうとは……』
『…………』
ボイはただ、気まずく視線を逸らすしかなかった。
そんな話をしていると、バブルの喧騒に加わっていたアクトの郷と、クズブクトの郷の族長たちが勢いよく踏み込んできた。
『おい、ソタイの! 俺たちはもう、これだけの鉄を手に入れたんだ。しかもタッコボ殿に神業である黒鉄の秘技まで伝授していただいた。もはや小杵など恐るるに足らぬ!』
『その通りよ! あのような、軟弱なヤマトの犬に成り下がった小杵の連中など、我らが打ち滅ぼしてくれようぞ!』
(うっわ! こっわ! まんま坂東武者やん!大河ドラマで見たやつだ!)
『しかし、なあ……』
ソタイルは、やはり戦には気が進まぬご様子だ。
『失礼するぞ!』
そこへさらに、タッコボが鍛冶職人を数人引き連れて入ってきた。
『ほれ、見てくれ!』
――ジャラランッ!
鈍い音を立てて土間に無造作に置かれたのは、大量の『鉄の矛』だった。
『俺たちには、こんなに強くて鋭い武器があるんだ。鍛冶場を探ればもっとあるぜ。これさえあれば、小杵の軍勢なんて恐るるに足らねえ!』
『おお、タッコボ殿! まったくこれは素晴らしき代物。これがあれば百人力ぞ!』
『いかにも、いかにも!』
『しかし……』
『ソタイ殿、もはや迷っている時ではないぞ!』
血気盛んな男たちを宥めるように、ソタイルが立ち上がった。
『いや。その前に、いまここにある鉄鋌をすべて貢物として差し出し、なんとか矛を収めていただこう』
『ソタイ殿、正気か!?』
『ひと時……ひと時だけ、ワシに時間をくれ。なんとか小杵殿を説き伏せてみせる』
そして親父殿は周囲の猛反対を押し切り、たった一人で数枚の鉄鋌を抱え、小杵の館へと向かったのであった。
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