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ムサシカムイ 〜古墳時代の関東に転生した理系女子がたたら製鉄をしたら、豪族の覇権争いにまきこまれた話〜  作者: 四 二
第一部 第六章 前玉の館

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共食の宴

その日の夜からは、逗留する建物が変わった。

昨日は入口にほど近い、平地式建物(ひらちしきたてもの)でタッコボと相部屋で夜を過ごしたのであるが、今日からはタッコボとは別々になり、館の縄張り中央付近にある、高床式建物(たかゆかしきたてもの)で夜を過ごすことになった。

寝具も床から少し高くなっていて、そこに真綿入りの絹布が敷かれていた。


「ベッドだ」


昨日の寝具も、郷で暮らしていた竪穴住居とは比べ物にならないくらい快適であったが、ベッドである。ベッドなのだ!


ボイはなんだかテンションがあがり、寝具にダイブして、ごろごろゴロゴロ左右に転がった。


すると、


「……あの、麻禰様」


まだ人がいたようである。すべて見られていた。


「お召替えさせていただきますね」


そういうと、ぱぱっと服を脱がされ、寝間着に着替えさせられたのであった。


◆◆◆


翌朝、ボイは館の大広間にいた。現代で言うところの宴会場かホールのようなものが一つの建物として独立しているような建物である。

あろうことか、隣には使主がいる。ボイの視線の先にはおっかない顔をした屈強な男たちや、文官、使用人たちが中央に間を空けて二列になって並んでいる。その並びの中央ぐらいには、タッコボの姿がある。そして、一同は、使主に向かって平伏していた。


「――面を上げよ」


「「「「「はっ!!!!」」」」」


使主の声が広間にとどろくと、一同が顔を上げる。


左右にずらりと並んだ男たちが一斉に使主の方を見る。そして当然、ボイも視界に入るため、矢のような視線がボイに突き刺さる。

ボイが座らされているのは上座である。中央には使主、左隣にボイ、反対側には息子だろうか? 使主によく似た若々しい青年が座っており、青年の向こうには、使主と歳が近そうな女性が座っていた。


タッコボはというと、顔を上げてから、きょろきょろと落ち着かない様子で、周りに座っているおっかなそうな男たちを見ているのだが、視線が合うたびににらまれて萎縮している。


(なんだこれ?)


ボイは困惑していた。


確かに昨日、使主から娘(養女)になるように言われた。しかし、しかしである。大串さんからは今朝、新しく一族に加わる者を紹介するお食事会があるのだと説明を受けた。

『共食の宴』というものだそうで、「同じ火で炊いた飯を食う」ことで、一族の結びつきを強める儀式ということらしい。屈強な男たちが値踏みする表情が怖い。敵意はなさそうなのではあるが、顔がめちゃくちゃ怖いのである。


そんなこんなと思案していると、使主が話し始めた。一同は背筋を伸ばし、耳を傾ける。


「我が一族に新たな者を加えることとなった。貴殿らも知らぬ者はおらぬとは思うが、そこにおるタッコの郷の代表であるタッコボが、我が一族に加わり、笠原多古を名乗ることとなった。一同、よろしく頼む」


「タッコいや、ちげえ、笠原多古でゴザいます。以後、宜しくおネがいしまズ」


タッコボは覚えたての大和語で頑張って挨拶をした。


「「「「おおおおおっ!!!!」」」」


すると、そこにいる男たちがわれんばかりの声をだした。


ビクッ!!! ボイはびっくりして座ったまま少し飛び跳ねた。


最初は、タッコボの紹介である。新たに笠原氏を名乗り、一族に加わるのである。それはそうである。


……――……


……――……?


つづいて、ボイの紹介が始まるのかと思ったのだが、一向に始まらない。それどころか、何故か料理が配膳されてきた。


不審に思ったボイは、隣の使主に小声で聞いてみた。


「あの、使主様、私の紹介はないのですか?」


「む?大串から、新しく一族に加わる者のため、共食の宴を行うと聞いていたのではなかったのか?」


「いえ、その、聞いてはおりましたが、なんか、タッコボ……いえ、多古の紹介があっただけで、私の紹介がないなぁ……と」


すると、使主は不思議そうな表情を浮かべ、ボイに言った。


「麻禰はわしの娘なのだから紹介なぞ要らぬであろう。あと、わしのことは今後、使主様ではなく、父上と呼びなさい」


「なっ!」

まさかの、パパと呼びなさいである。

「えっ!パ、パパと呼べですかっ?」


言わなきゃいいのに、ついとんでもないことを口走ってしまったボイ。すると、


「む?パパとはなんだ?ああ、パパと呼びたいのであるか?うむ。許す。わしのことをパパと呼びなさい。ただし、ほかに誰もおらぬときだけだぞ?他のものがいるときは、父上と呼ぶのだぞ、良いな?」


「あ、はい」


(あっ! 「はい」っていっちゃったよ……)


「では呼んでみよ」


「はい。パパ」


「うむ」


ボイはこれまでの使主との関係性があるため、「良いな」と言われると、とっさに肯定してしまうのだ。断ることができないのだ。


こうして、ボイは、日本で初めて「養父をパパと呼ぶ」という謎のクエストを達成し実績解除に成功したのである。


ボイの脳内に、謎のチャイムが鳴り、テキストがポップアップする。


実績が解除されました:【使主を1回パパと呼ぶ】

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

本作は今後、毎日0:00に更新していく予定です。


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