タッコボの仕事
ボイがどこかへ出かけてしまった後、鍛冶場周辺では郷の者たちが総出で、彼女に指示された品々の製作に取り掛かっていた。
ボイからの注文は、大きく分けて四つある。
一つ目は、今までの製法とは全く違う『弓』である。
村の山から切り出してきた「一番しなる木」と「一番硬い木」の二種類の板を削り出し、煮詰めた獣の膠でピッタリと張り合わせて作る、奇妙な二層構造の弓だ。
ボイ曰く、性質の違う板を張り合わせることで、反発力が跳ね上がるらしい。実際に試しに引いてみると、普段の丸木弓の倍以上も重く、大の男が力一杯引かないとしならない。だが、その分、放たれた矢が飛ぶ距離も威力も、これまでの弓とは桁違いだった。
二つ目は、『矢尻』である。
これは俺の仕事だ。ひたすらに鉄を叩き、黒鉄加工をして、小杵の兵の鎧ごと貫くような、硬く鋭い徹甲の矢尻を大量に打ち出していく。
三つ目、これがよくわからない。
尖った矢尻の代わりに先端に丸い石をくくりつけ、その周りを布でぐるぐる巻きにしておくように言われた。こんなもの、いくら強い弓で撃って当たったところで痛くないし、刺さるわけもない。何に使うのかと聞いても、ボイは「後で特別な秘術を使う」としか言わなかった。
四つ目、これも本当によくわからない。
細くて短い鉄の棒を真ん中で「への字」に曲げ、それを二つ組み合わせて交差させる。どう転がしても、必ず一本の尖った先端が天を向いて自立するという、なんとも不気味な形をしていた。
ボイからの指示は「その先端をとにかく鋭く研ぎ澄ましておいて」というものだ。地面に撒いて踏ませるのだろうか? だとしたら、恐ろしいほどの悪意を感じる道具だ。
この四つを、明日までに作っておくように言われた。まあ、あのボイに頼まれたのだから、文句は言わずにやるんだけどね。
男たちだけじゃなくて、女や子供たちも鍛冶場の外で手伝ってくれている。さすがに炉での鉄の加工は出来ないが、弓の木を削ったり、膠で板を張り合わせたり、石に布を巻いたりと、みんな文句一つ言わずに気持ちよく作業してくれている。ありがたいことである。
そんな感じで、慌ただしく一日が過ぎていった。
(ボイのやつ……まさか、俺たちのためにあの服を着て、小杵のところに行ってしまったのだろうか……)
ふと、そんな不安が頭をよぎる。いや、そんなことはないはずだ。「勝負服だ」と笑っていた彼女の、あの氷のように冷たい目を信じよう。
今はただ、言われたことをやる。俺にできるのは、それだけだ。
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