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ムサシカムイ 〜古墳時代の関東に転生した理系女子がたたら製鉄をしたら、豪族の覇権争いにまきこまれた話〜  作者: 四 二
第一部 第三章 騒乱の気配

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作戦会議

この日の夜、タッコの郷の族長・タッコルの家で、極秘の作戦会議が行われた。

集まったメンバーは、タッコル、タッコボ、ボイ、そしてソタイルの四人のみ。


まず、絶望的な戦力差の確認から始まった。

こちら側として戦えるのは、郷の女子供を除いた男が二十名あまり。それに加えて、先の『鉄バブル』で郷に逗留していたアクト、クズブクト、モロの各郷の男たちが三十名あまり。総勢でも五十名程度にすぎない。

対して小杵の勢力。側女を受け取るだけの儀式とはいえ、彼らはソタイの郷への威圧と見せしめを兼ねてくる。間違いなく半数以上の兵、二百名程度は確実に出してくるだろう。


五十対二百。四倍の戦力差……まともにぶつかれば、一瞬ですり潰される。

この戦況をひっくり返すべく、深夜まで白熱した議論が交わされた。


***


翌朝。

タッコの郷の鍛冶場には、目の下に真っ黒なクマを作って作業しているタッコボの姿があった。

前夜の会議の後、ボイに「これだけはどうしても明日までに欲しい」と頼み込まれた品を、徹夜で打ち続けていたのだ。


カンッ、カンッ、カンッ……!


眠い目をこすり、(すす)だらけの手で最後の仕上げをして、麻布で包んでいると、のんきな足音が鍛冶場に近づいてきた。


『おーい! タッコボ!』

『なんだ、ボイか!』

『ボイじゃないよ! ソタイ・マネボだよ!』

『ボイはボイだろ……って、おい!? お前、なんだその服は!!』


挨拶代わりのお決まりの応酬を途中で切り上げ、タッコボは目を剥いた。

ボイの姿が、いつもと全く違っていたのだ。


彼女が身に纏っていたのは、昨日、小杵の使者が置いていった『側女用の服(ヤマトの正装)』だった。

生成りの筒袖の衣の上から、鮮やかな朱色に染められた裳を腰でふわりと巻き付けている。生地はヤマトから持ち込まれた高級な絹らしく、動くたびに滑らかな光沢を放っていた。

十歳のボイには少しサイズが大きく、袖口が余ってブカブカだが、それがかえって奇妙な威厳と、高貴な雰囲気を醸し出している。


『ボイ、お前……まさか、俺たちのために小杵のところへ行くつもりじゃ……!』

『行かないよ。ただの勝負服スーツだよ』

『すーつ?』


ボイは赤い裳の裾を少し持ち上げながら、ふふっと笑った。


『ボイはすごいな。こんな状況なのに余裕がある』

『余裕なんてないんだよ、これでも。……で、頼んでたやつ、できた?』


冗談めかして笑うボイの瞳の奥は、氷のように冷たく澄んでいた。

タッコボはごくりと唾を飲み込むと、傍らに置いてあった『麻布の包み』を両手で持ち上げた。


『できてるよ。今の俺が打てる、最高の傑作だ』


そう言って、タッコボは布の包みをボイに手渡した。


『うっ!? お、おもい……!』

『ははは、落として怪我するなよ。……なあボイ、本当にこれでどうにかなるのか?』

『なるよ。タッコボがこんなに凄いものを作ってくれたんだから』


ボイは布に包まれた『ずっしりとした重み』を大事そうに胸に抱えると、それ以上は何も語らず、翻るように鍛冶場を後にした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


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