第22話【襲撃】炎の道と、塔の上の戦歌 〜6日目の夜:逃げろ!アラヴェル城へ!〜
最初に鳴ったのは、鐘の音だった。
カン、カン、カン、カン――!
夜の空気を裂くような、鋭い警鐘。アラヴェル城の廊下に満ちていた笑い声が、一瞬で凍りついた。
「おや? 誰かがセシルを呼んでるよ。魔獣じゃない?」
「ふざけんな、お前が行けよ」
セシルが心底嫌そうに吐き捨てる。
「いや、僕はほら。家族を避難させるという重大任務が」
「俺にも重大任務がある」
「アリアちゃんの護衛?」
「それ以外に何があんだよ」
「……え、あの。今、魔獣って言った?言ったよねぇ!?」
アリアだけが、青ざめた顔で二人を見上げてたその時、城の騎士が声を張り上げた。
「ま、魔獣の群れ!! 北の森から魔獣が出たぞ!!」
「一匹じゃない!十匹…いや、もっとだ!!」
廊下の向こうでは、使用人たちが慌ただしく走り出している。遠くからは悲鳴と怒号。鐘の音は、なおも夜を裂くように鳴り続けていた。
それなのに、セシルとハルカだけは妙に落ち着いている。
「十匹か、二十匹か。まあ、群れだね」
「数えろよ」
「暗くて見えないんだよ。君の雷で照らしてくれない?」
「便利な街灯扱いすんな」
「照らしてくれたら僕がピンポイントで…」
「いや聞けよ」
「……てゆーか真面目にしてよ!」
思わず叫んだアリアに、二人は同時に振り返った。
「真面目だよ」「真面目だろ」
どこが!!?
アリアは心の中で全力で叫んだ。
「はー、ここって意外と大きな魔獣が出るんだよねぇ…ほら、僕の父さんを殺した魔獣とか。」
「……めっちゃ怖いじゃん。」
「怖いよねぇ」
「めちゃくちゃ怖い話じゃない……!」
アリアが思わず声を裏返すと、ハルカはいつものように、にこりと笑った。
「怖いよ」
けれどその青い瞳だけは、一瞬だけ、夜より深く沈んだ。
「そう言うわけだから僕は家族を迎えに行ってきます。」
ハルカの声から、ふっと冗談の温度が消えた。
「セシル。アリアちゃんを頼む」
「だから命令すんな」
セシルは舌打ちした。
けれどその指先には、すでに青白い雷が集まっている。
「死ぬなよ、ハルカ」
「君にそう言われると、妙に腹が立つね」
ハルカは少しだけ笑った。
そして次の瞬間、風のように廊下を駆け出した。
「……」
「……」
「……」
「……ってセシル!?」
「はいはい、聖女様はそこで大人しくしてろ。よっこらし…」
「おじいちゃんみたい。」
「あ?」
「なんでもないです」
セシルは城下を見下ろした。
逃げてきた領主民たちが叫びながら城に入ってきている。
カリスヴェルが誘導し、魔獣を迎え打つために騎士団が隊列を組んでいた。
その時、アラヴェル城を取り囲む石壁の前に立っていたアリアは、異変に気づいた。
壁に刻まれた結界の紋様が、ところどころ薄れている。
そしてその薄れた箇所から、小型の魔獣が一匹、するりと内側へ滑り込んできた。
「っ!! 入ってきた!!」
使用人が悲鳴を上げる。避難してきた人々が一斉に後退する。子どもを抱いた母親が、震える腕で我が子を抱きしめた。
その時、列の端で小さな影がよろめいた。
「ミア!」
混沌とした避難の列から、ハルカの妹・ミアが外れていた。泣きじゃくりながら転んだ小さな子どもを、細い腕で抱き起こそうとした、その時だ。
ゴロ……ルルルル……。
地の底から響くような、臓腑を震わせる不気味な唸り声。
鉄錆と腐肉の混じった酷い悪臭が、突風と共に叩きつけられる。
ぬらりと濡れた巨大な黒い口が、少女たちの頭上から、頭蓋ごと噛み砕こうと限界まで開かれた。刃のような牙から垂れた粘つく唾液が、ミアの足元でジュッと嫌な音を立てる。
「――ッ!」
セシルが即座に片手を上げた。大気がビリビリと軋み、青白い雷が極限まで指先に凝縮される。
けれど、撃てなかった。
(近すぎる……っ!)
今ここで高圧の雷を放てば、その破壊力は魔獣の肉体を消し飛ばすだけでは済まない。巻き起こるプラズマの熱と衝撃波が、足元にいるミアも、その腕の中の小さな子どもも、一緒に黒焦げにしてしまう。
「チッ……!」
セシルは構築した雷を無理やり散らした。魔力が逆流する痺れを無視して、爆発的な速度で地面を蹴る。
「伏せろ!!」
声が届くより、絶望的な黒い影が落ちる方が早かった。
ミアが怯えた顔で振り返りかけた瞬間、セシルは滑り込むようにして前へ出ると、その華奢な身体を子どもごと庇うように強く抱き込んだ。
頭上から、ギチギチと空気を切り裂きながら、凶悪な質量が振り下ろされる。
次の瞬間。
ズバァ……!!
肉を深くえぐるひどく生々しい音が響き渡った。
「あ……」と、ミアの小さな口から空気が漏れる。
魔獣の巨大な爪が、セシルの背中を左肩から右腰にかけて、容赦なく斜めに引き裂いていた。熱く、酷く鉄の匂いがする鮮血が、ミアの白い頬へ生温かい飛沫となって降り注いだ。
「……ッ!!」
「セシル!!」
アリアの叫びが、夜に弾ける。
軍服の背が裂け、赤い血が一気に滲んだ。
それでもセシルは膝をつかない。ミアを背後へ押しやり、至近距離で魔獣の顔面を掴む。
「……お待たせ?」
低く吐き捨てた声と同時に、雷が爆ぜた。魔獣が悲鳴を上げる間もなく、青白い光に焼かれて崩れ落ちる。
ミアは震えながら、セシルを見上げていた。
「セシル、お兄ちゃん……」
「泣くな。さっさと奥へ入れ」
ぶっきらぼうに言い捨てる声は、いつもと同じだった。
けれど、その背中からは、ぽたぽたと血が落ちている。
赤い。
セシルの血だ。
さっきまで笑っていた人が、目の前で傷ついている。
自分をからかって、怒って、顔を赤くしていた人が、誰かを守るために血を流している。
「……セシル!」
「うわーマジでいてぇ」
「……!」
アリアは震える手で、セシルの背中に触れた。
傷口に触れた瞬間、指先が熱く濡れる。
怖い。
怖くて、息が止まりそうだった。
それでも、手を離さなかった。
「光よ…我が祈りに応えよ…」
アリアの掌から、淡い金色の光が溢れる。裂けた傷口が、ゆっくりと塞がっていく。けれど、完全には戻らない。血は止まった。だが、セシルの呼吸は少し荒かった。
「……お前ってやればできる子なんだな」
「うるさい!こんな時くらい減らず口やめてよ!」
壁の向こうで、また黒い影が動いた。
一匹ではない。
二匹、三匹。五匹。
結界の薄れた箇所から、魔獣たちが次々と内側へ身体をねじ込もうとしている。
また悲鳴が聞こえた。
老婆に、魔獣の口が迫っている。
セシルが即座に振り向き、雷で魔獣を焼き払った。だが、その表情は険しかった。
気づけば窓の外には、ギラリとこちらを狙う目がいくつも光っている。
「……」
「……」
「よーし、出目金。お前の出番だ」
「いやー! やめてやめてやめてやめて! 何の出番!? ねえセシル、ほんっとにやめて!」
「ははっ。お前って本当面白いよなぁ。顔が真っ赤」
「いいいいい、いい加減にし――きゃああああ!」
パリン、と窓が割れた。
飛び込んできた魔獣が、目を剥いてこちらを見ている。
「見てんじゃねぇよ」
セシルが即座に雷を打ち込んだ。
魔獣は声を上げる間もなく、青白い閃光に焼かれて崩れ落ちる。
セシルはアリアの首根っこを掴むと、魔獣から遠ざけるように自分の背後へ押し込んだ。
「きゃあああああ!?」
「ちょ、お前暴れんな!」
「暴れるわよ! 首! 首を掴まないで!」
「なんか君たち、楽しそうだね」
背後から、血に濡れた剣を提げたハルカが駆け戻ってきて、すぐにセシルと背中を合わせて二人して剣を構える。
「遅ぇよ、ハルカ」
「家族を避難させてたんだ。そっちはどうだ」
「城の中に入ってきた小型の群れは片付いた。が……」
セシルの言葉は、そこで止まった。
ハルカもまた、異変を察知して言葉を飲み込む。
ズン……。
――空気が、変わった。
戦場の喧騒が、嘘のように一瞬だけ凪ぐ。
代わりに鼻を突いたのは、鼻腔の奥が焼けるような、強烈な腐敗臭。
ズン……。
地響きが、二人の足元から直接、心臓を揺らした。
ズン……。
先ほどまでの群れとは、次元が違う。
地面が軋み、石畳に亀裂が走るほどの重量感が、闇の中からゆっくりとこちらへ近づいてくる。
暗闇を押し広げるように、その巨体が姿を現し始めた。
「……冗談だろ」
カリスヴェルの炎が、闇に浮かぶその姿を照らし出す。
ズン……。
見上げた先にあるのは、絶望の闇そのものだった。
ぽん。
ハルカが手を叩いた。
「よし、作戦会議だ」
「今!?」
ズン……。
「簡単だろ?俺があいつに特大の雷を落とす。」
「あ、それだめーブブー」
「なんでだよ」
「あの魔獣って雷タイプだから、雷打ったら強くなるんだよ」
ズン……。
「ねえ!? 大きいのが近づいてる! きゃああああ! 小さいのも!」
小さな魔獣が城を跨いだ瞬間、セシルの雷が落ちる。
「ちっキリがねーな」
「よし。僕があのでかいの。セシルは小さいの。アリアちゃんは城の核を強化してきて。質問は?」
「核って何!?」「お前、一人であのでかいのいけんのか?」
ズン……。
「「「・・・・」」」
「核は塔の上にある、この城の結界を支えてる石ね。そこに聖力を流せば結界が強まる。結界が強まれば、城に入ってくる魔獣はいなくなる。そうしたらセシルも僕を手伝いに来られる。質問は?」
「私、こんな古い結界を強化したことないんだけど!」「なんで俺が、お前の手伝いなんかしねぇといけねぇんだよ」
ぐらああああああああ――!!!!
魔獣の咆哮が、城を震わせるほどに響いた。
ハルカはにこりと笑った。
「それじゃ、お願いします」
「…お願いしまーす」
「ええええ!?」
二人は身を翻した。
ハルカは城の外へ。 セシルは、小型の魔獣が群がる方へ。
「ええ!? わた、私……」
取り残されたアリアは、しばらく口をぱくぱくさせた。
けれど、壁の向こうではまた悲鳴が上がっている。
セシルが戦っている。
ハルカも、カリスヴェルも、騎士たちも。
みんなが、自分のできることをしている。
だったら。
アリアは震える手を握りしめ、広場へ向かって叫んだ。
「か、カリスヴェル様! 結界の核はどこですか!!」
カリスヴェルの目が、鋭く細くなった。それからすぐに、城の奥にそびえる古い塔を指差す。
「あの塔の頂上だ! 核に直接聖力を流し込めば、結界全体が強化される!」
アリアは塔を見上げた。
高い。
暗い。
そして遠い。
(怖い。怖いけど)
「案内を!」
「使用人を……いや、時間がない」
カリスヴェルは即断した。
「奥に塔へ続く階段がある! 青い炎の印がある扉の向こうだ! 頂上にある光る石が核だ!」
「分かりました!」
アリアは走り出した。
城の中へ駆け込み、塔の入り口を探す。石造りの廊下。燭台の炎が揺れる。使用人とすれ違い、怯えた子どもの横を通り過ぎ、ようやく塔の扉を見つけた。
「これだ」
青い炎の紋。
肩で荒い息を吐きながら、その輪郭をなぞる。
ずしりと重い。けれど、アリアの執念に応えるように、古びた扉は軋んだ音を立ててゆっくりと開いた。
闇の向こうへ、上へ、上へと、まるで終わりがないかのように螺旋階段が続いている。
「――っ!」
アリアはその高さに一瞬躊躇した。
(走るのよ!アリア…走れ!!)
アリアは自分を鼓舞するかのように思いきり駆け上がった。
暗い視界の中、足元が石段の角に何度もぶつかり、鈍い痛みが走る。それでも、冷たい鉄の手すりを必死に掴み、腕の力をもぎ取るようにして己の体を上へと引き上げて駆け上がった。
外からは、絶え間なく不吉な鐘の音が響き続けている。
引き裂かれるような悲鳴。
大気を震わせる、セシルの激しい雷鳴。
戦火の音が、壁を伝ってアリアの鼓膜を叩いた。
「……っ!」
焦りで足がもつれ、アリアは前のめりに派手に転倒した。
ガツン、と嫌な音がして、右の膝と両手を冷たい石段に激しく打ちつける。じわじわと滲む血が、せっかく着せてもらった美しい衣装の裾を容赦なく汚していく。激痛と恐怖、そして自分の無力さへの悔しさで、視界が涙に歪む。
(だめ……っ! 泣くなアリア!走れ……!)
溢れそうになる涙を手背で手荒く拭い、擦りむいた膝の痛みを無視して、這いつくばるようにしてすぐに立ち上がり駆け出した。
肺が爆発しそうなほど熱い。まるで喉の奥から血の味がするようだ。
一瞬、どうしても足が動かなくなり、冷たい石壁に背中を預けて手をついた。
心だけが階段を上がっていくのに足が動かない。
「はぁっ、はぁっ、うぅぅぅっ……!」
酸欠の頭で、激しく喘ぐ。心臓が早鐘のように鳴り響く。
(走れ…!走るのよ!!がんばれ!!)
アリアは自分の胸を叩いて鼓舞し、喉が裂けるほどの叫び声を上げ、再び壁を蹴った。
「う、うあああああ――っ!!!!」
これまで、こんなに泥臭く、苦しく走ったことは、彼女の人生で一度もなかった。お姫様のように守られてきた足はとっくに限界を迎えていたが、心だけは絶対に折れなかった。
(走れ! 足を止めるな!走れ!!!)
ボロボロになった衣装を引きずり、血を滲ませながら最後の階段を駆け上がったその時、ついに目の前に古びた扉が現れた。
ドン――ッ!!
体当たりのようにして扉を押し開けると、火の粉を大量に纏った夜風が激しく吹き込んできた。そこは、世界の端のような、遮るもののない塔の頂上だった。
中央に、拳ほどの大きさの石が鎮座している。かつては神聖な輝きで満ちていたであろうその核は、今は完全に光を失い、死んだような灰色の石塊と化していた。
「っ……はぁっ! ふぅっ、はぁ……!」
焼けるような肺を押さえ、アリアはその石へとよろめきながら駆け寄り、祈るように両手で包み込んだ。
凍てつくように冷たい。けれど、全神経を指先に集中させると――ドクン、と、その奥からかすかな、本当に微かな脈動が伝わってきた。
(まだ……まだ生きてる……っ!)
アリアは手すりにしがみつき、眼下の光景を見下ろした。
そこは、地獄だった。
赤黒い火明かりの中を、泣き叫びながら逃げ惑う人々。死に物狂いで剣を振るう男たち。小さな子どもを必死に抱きかかえて走る母親。倒れ、立ち上がれずに震える老人。
そして、そのすべてを背中で守るように、騎士たちが血を流して戦い、セシルもさっきまでのトーンが嘘のように真剣に戦い、青白い雷が夜空を必死に裂き、カリスヴェルの剣が鋭く閃いている。胸が、引きちぎられるほどに締め付けられた。誰もが命を削って戦っている。
(私だって、みんなと一緒に戦うんだ――!)
アリアは、涙の乾いた強い瞳で天を見上げた。
遥か上空には、きらめく星々。
重い雲の向こうで、冷たく滲む月。
彼女の決意に呼応するように、手の中の核がドクドクと熱を帯びて震え始める。
「天よ…」
アリアは、己の全神経を祈りと光に集中させた。
静かな、そして力強い声が、空に向かって放たれた。
「我が祈りに、応えよ…!」
その瞬間、吹き荒れていた荒々しい夜風がピタリと止んだ。代わりに、どこからともなく湧き上がった圧倒的な聖力が、アリアを中心に渦を巻き、激しい暴風となって吹き荒れる。
「魔を退け! 民を守り! 戦士たちに、力を与えよ!!」
アリアの魂の叫びに、天が応じた。
カン――……!
それは、天の高み、世界の天井から降り注ぐような音だった。
一つではない。
二つ、三つ、そして無数に。
幾重にも重なり合う、どこまでも澄み切った荘厳な鐘の音。まるで天そのものが巨大な楽器となって共鳴したかのように、夜空全体が美しく振動し始める。
手の中の核が、カッと眩い熱を放った。
アリアの美しい髪が、聖なる光を纏ってさらに眩く輝き出す。深い青の瞳には、かつてない強固な光の紋様が宿っていた。まるで至高の宝石のように輝き出した瞳は、涙の跡を残したまま、真っ直ぐ夜空を見つめていた。
その瞳が、涙で滲んだ。
アリアは、歌い始めた。
高く。
鋭く。
どこまでも透明に。
かつてエデンで習った「守りの戦歌」。
魔を弾き、民を守り、戦士を鼓舞する歌。
それが今、命令ではなく、アリア自身の意志として喉から溢れ出した。
「目覚めよ」
アリアの歌に、核が応え、光り始めた。
灰色だった石が、金色に染まっていく。その光が石から指へ、指から腕へ、腕から全身へと広がり、アリアの身体が淡く輝いた。
光は塔を伝い、石壁を伝い、城全体へと流れていく。くすんでいた結界の紋様が、ひとつ、またひとつと目を覚まし、金色の波紋がアラヴェル城を包み、空へ向かって立ち上る光の壁が生まれた。
「な……なんだ!?」
広場にいた住民の一人が、塔を見上げて叫んだ。
「城が光ってる!!」
「結界だ! 結界から歌が聞こえる!!!」
「御子様だ!! 塔に御子様がいるぞ!!」
「城を目指せ!! 早く!!」
まだ逃げ遅れていた人々が、光に引き寄せられるようにアラヴェル城へ向かって走り出した。
アリアは歌い続けた。
拳を握りしめ、目を閉じ、天に向けて全身で歌う。身体の奥から何かが抜けていく感覚があった。
眼下で逃げる人々を。
戦っている人たちを。
この街を守るために。
これは、私が選んだ歌だ!!
アリアは、込み上げる感情を止める術も知らず、涙を頬に伝わせたまま声を張り上げた。
「――応えて!!」
その叫びと共に、核が爆発的な輝きを放った。
それは単なる光ではない。意思を持った奔流だ。アラヴェル城の石造りの壁面をなぞり、城全体がまるで青い炎に包まれたかのように、神々しく、そして暴力的なまでに輝き出した。
その光の奔流に、群がる魔獣たちが触れた。
ジジジッ、と空気を焼き焦がすような忌まわしい音。
「ギィイイイイッ!!」
魔獣たちは結界から突き放された。
城壁にへばりついていた魔獣たちは重力に従って塔から滑り落ち、次々と地面へ叩きつけられていく。
セシルが剣に纏わせた青白い雷の余韻を散らしながら、それに気づいた。
「やるじゃん、あいつ……」
その声には、怒りや焦燥ではなく、戦友を認めるような、どこか誇らしげな響きがあった。城の中に入りさえすれば、もう安全だ。
「はー、次はデケェのか」
セシルはすぐに城の外へ飛び出した。
前編クライマックス。ドキドキ。今日は2話連続で更新します。21時半までにアップします。いいねや感想、ブクマいただけると更新の励みになります。
かなり大幅に改稿しました汗




