凱旋と旅立ち6☆
また労災発生ですか――こっちの世界でやるべき仕事中の被災ですしそう呼んでもいいでしょう。
一難去ってまた一難とは言いますが、随分早くまたやったみたいですね。
それでは今回も再発防止のための原因分析をしてみましょう。
まずは今回の死因:がけ崩れによる渓流への転落。
では、その原因を今回も人的、物的、管理的要因の三つの視点から見ていきましょう。
まずは人的要因。これの一つ目は何より、警告を無視したことでしょう。
がけ崩れを起こした道の手前には杭とロープで侵入防止策が採られ、かつ注意喚起のための看板もありましたが、彼はこれらを軽く考えて危険な道を進んでしまいました。
こうした危険の過小評価が最初の原因になります。
例えどれほど注意喚起を行ったとしても、それを読み取る能力がなければ今回のように最悪の結果を迎える可能性は十分にあります。今回のケースでは迂回ルートも用意されていた訳ですから、杭とロープと看板による侵入防止策に出くわした時点で「この道を進んではいけない」と認識できたはずです。
そして二つ目。途中で危険を認識しながらそれを認めずに判断を変えなかった点。
彼には杭とロープを越えた時点で「本当は危ないのでは?」という思いがあったように見受けられます。しかし、それにも関わらず強行してしまった。
一体なぜそのような行動に出てしまったのでしょう?
見返してみると分かりますが、彼のその根底には「途中で引き返すのは格好がつかない」という思いがありました。
一見すると大したことがないように思える、誰もがしてしまうような格好つけですが、これはつまり「予測できたリスクよりも別の事柄を優先する」「現実のリスクを軽視する」という判断に繋がってきます。言い方を変えれば「危険を認識していたが『まあこれくらい大丈夫だろう』と考えて対策を放棄した」とも言えます。
一つ目の理由と同様、これもまた危険性の過小評価と言えるでしょう。
そして三つ目は、具体的な危険性について勝手な判断をしたという点です。
注意喚起の看板にはただ単に「危険」とだけ書かれており、実際の具体的な理由は記されていませんでした。しかし彼はそれを見て「道を塞いでいる岩塊が崩れてくる」という理由だと思い込んでしまった。
人間には想像力があります。故に、状況から危険の種類を予想することは出来ます。ですが、それはあくまで自分の予想でしかないということは忘れない様にするべきでしょう。
次に物的要因を見てみましょう。
物的要因としては、侵入防止策が不十分だったという点が挙げられるでしょう。
勿論杭とロープによる措置がとられていましたが、簡単に乗り越えられる状態のまま放置されていたというのは問題です。
こうした対策はすればそれで終わり、という訳ではなく、劣化や現状の変化に合わせて適宜修繕、改修が必要になります。たとえ今回のように危険予測が十分ではない者、危機意識のない者が接近した場合にも「物理的に危険な場所に侵入できない」という形で阻止するのが重要です。
次に管理的要因です。今回の場合、物的要因と重なる点でもありますが、危険の周知が徹底できていなかったという点が挙げられるでしょう。
現場には注意喚起の看板は立てられていましたが、単に「危険」と書かれているだけで、具体的に何が危険なのかまでは分からない状態でした。
このため、道を塞いでいる岩塊と相まって「落石による危険」「道が塞がっていて川に転落する危険」というところに侵入者の意識が集中し「地盤が軟弱になっており、がけ崩れの危険がある」という点に注意が向かなかったという問題があります。人的要因の部分でも挙げたように、自分の判断はあくまで自分の判断に過ぎないという点に立ち返りましょう。具体的に何が危険なのか、それを簡潔に分かりやすく記しておくことは、ただの親切というだけでなく、安全の上でも重要な点と言えます。
また、明確な順路を示していなかったというのも問題です。
確かに杭とロープによって侵入防止措置をとり、迂回のための橋も用意されていましたが、その迂回路に進むための案内が存在せず、そちらに進むべきかを自己判断に任せてしまっていると、今回のように判断を誤る可能性があります。明確に「こちらに進め」と指示する表示は作業手順の明示と同じものだと考えてもいいかもしれません。
それでは、こうした点を考慮して、今回もより安全な方法、安全な環境で彼にやり直させましょう。それでは、ご安全に!
(つづく)
今日は短め
続きは明日に




