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26.テレパシー少女の襲撃 ①

前回のあらすじ:あははははは、おほほほほほ

 それから数日後、狐とフランが遊びに来て桃に簡単な文章の言い方を教えてくれました。


「私は桃です。これ……はパンです」


「Laphe, Laphe !(良いわよ、良いわよ)」


 フランが何度も頷きながら手をたたきます。


「Gize lik st…… farn.(あれは……箒です)」


「Tek farn.( Tek farn、よ)Ty, u laphe!(でも、すごいじゃない)」


 と言って桃に抱きつこうとしました。


(わわわ。危ない危ない)


 桃は服のほつれを直しているところだったので、針と布を持って慌てて逃げていきます。


「これは針です」


「Tar.(そうね)」


 危ないです。って言いたかったのですが言葉が分からず桃は戸惑ってしまいました。


『Ot pifas.と言ってみるといい。気をつけろという意味だ』


「おと、ぴふぁす?」


「そうね。ごめんなさい」


 フランがすまなさそうに軽く頭を下げました。


(伝わったみたい! 流石狐さんや)


 お昼ご飯を食べてしばらくするとフランは帰っていきます。狐が言うには彼女は学校という所に通っていて歌の勉強をしているそうです。お昼近くになると長い休憩時間ができる日があって、その時間を使って桃の仕事場へ来ていたのです。


 確かに時々口ずさむフランの歌声はとても澄んでいます。時には手、足、頭といった体の場所を覚える歌や、お父さん・お母さんといった家族の言い方が分かる歌、春は芽月、花月、羊月、夏は……と暦を覚えるための歌を歌ってくれました。どれもフランが子どもの頃に教えてもらったのだそうです。


(うちも頑張って言葉の練習をしなくちゃ)


 フラン達を見送りながら意気込んだ桃は、家事の合間に教えて貰った言葉を呟いてみるのでした。


「Sneizの次に来るのはlitで……。あれ? お皿の時ってstかな、tarかな? どっちやったっけ?」


 文章の言い方を覚えれば色々言える様になるはず。それは嬉しいのですが、物の言葉によってすぐ前につく言葉の言い方が色々変わるらしいのです。


物の名前を頑張って覚えても一緒に使う言葉が分からないと話せないとは、なんて不便なのでしょう。桃はますます混乱してきました。


(サムさんにも聞いてみようかな)


 結局家に帰るまでは言葉の練習を諦めることにします。この時はまだ、練習どころじゃなくなるなんて思ってもみませんでした。


   ***


 夕方になるとグレアムが帰ってきて、日給を貰います。いつもサムが迎えに来るのですが、今日は少しグレアムの帰りが早かった為でしょうか、彼が見当たりません。


(道は覚えたから大丈夫なんやけど、入れ違いになったら嫌やなあ)


 と思いながら帰り道を歩いていました。


 大きな通りを横切った後のこと。ギーーーー、と石と何かが擦れる嫌な音が微かに聞こえてきました。はじめは気にしないで歩き続けましたが、段々それが大きくなり耐えきれず耳を塞ぐと、頭に声が響いてきました。


『ようやく見つけた。ねえ、今度こそアタシについてきてよ』


 振り返ると、栗色の髪を横に束ねた女の人が斧を携えて立っていました。丈の長い藍色の上着に、白くて袖の膨らんだ上着、そしてふんわりと広がった膝丈のスカートを履いています。


どこかで見たことのある顔。彼女が目の前ににじり寄ってきます。思わず後ずさると、斧を持っていない方の手で桃の手首をつかんできました。


『あれ、アタシのこと忘れちゃった? 雪の日に会った』


「あっ。あの時の方やね」


 風邪を引いたサムの薬を探している途中、薬をあげるから来て欲しいと言ってきた女の人です。そのあとゲラーシムと出会い、突然この人に斧の刃を首元に突きつけられたのでした。


そして、何故かこの女の人は桃の考えていることが分かってしまい、お話をすることができてしまいます。


(どうしても来て欲しい所があるみたいやけど、何やろう?)


『ねえ、知りたい? 前に話したかもしれないけど、教えてあげる。アナタに会いたがっている人がいるの、アタナのこと知りたいんだって。アナタの体を隅々まで調べ尽くして異常がないか確かめたいの。だって成功した人間はアナタが初めてだから』


(成功? 成功って何の?)


 女の人が話せば話すほど恐ろしい響きとなります。彼女の言う人に会えば、怖いことが起こると本能が告げていました。


しかし桃は彼女の手から逃れることはできず、首元を抱えられ、引きずられて行ってしまいます。今のところ方向は桃の帰り道と変わらないみたいです。


(ちゃんと歩くから離して欲しいなあ)


『嫌。家の近くに来たら逃げるつもりでしょ』


 やはり、考えていることはお見通しみたいです。桃を抱える腕にますます力が入ってきました。通りを歩く人々が波紋の様に二人の周囲から遠ざかって行きます。チラチラと見る人はいるものの、助けようとする人は誰もいません。


家の中から覗いていた女の人は、桃と目が合うと窓を閉めてしまいました。そんな時、一人だけ二人に近づいてきます。


「お姉さん、そんなのを抱えてどちらへ向かわれるんですか?」


 聞き慣れた低い声が聞こえてきました。


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