すれ違う前触れ2
「どうしたの? なんでそんなに焦って・・・?」
「わっかんねぇよ‼ オレにも‼ でも! なんでか知んねぇけど、やんなきゃって気がするんだ‼」
「理解不能。意図不明。それをして、なんの得があるの?」
「ねぇよ‼ そんなもん‼ でもダメなんだ‼ ここで何もやらなかったら、そのせいでアイツが――ッ‼‼ 自分のせいで誰かが傷付くなんて・・・、そんなの‼‼」
逸人の身体は震えていた。
原因は恐怖である。
行動をしなかった結果、誰かの死を背負うという責任の重さに慄いていた。
だが、本人はそのことをはっきり認識できてはいなかった。
ただ心に、衝動に突き動かされていた。
冷静、冷徹、冷酷な原理を持つ天使の前でさえ、熱に浮かされていたのだ。
「行って・・・何ができるの?」
「知らねぇよ‼ なにも出来なくても行くんだよ‼」
「無意味。むしろ邪魔かも?」
「それでもいいんだよ‼ どうせ消滅まではしねぇんだろ⁉ だったら‼ 言い訳ぐらいあってもいいだろ‼‼」
それはツインテエルの言う、逃げるより戦って死んだ方がマシ理論に限りなく近い解答だ。
名誉を守るだとか、体裁を保つだとか、そういった後ろ向きな原動力。
なれど大きな理由であり、力でもある。
「気持ちは理解できる。ツインテエルもそうだから。でも勝算は必要。迷惑になる方が不名誉」
「そんなこと言われたってよ‼」
「魔法は?」
「まだ使えねぇ‼」
「武器は?」
「何もねぇ‼」
「諦めるべき」
「出来るならそうしてる‼‼」
正論過ぎるメダウナの意見に、同調しつつも否定する器用な意見で対する。
実際に心の悪魔はそう囁いている。
けれども、内なるもう1人がそれを許さない。
「クッソ‼‼ なんなんだよ、この感じは‼‼」
グルグルと巡る感情と浮かび上がらない策に苛立ち、逸人は強く拳を叩き付けると、ドゴッ! と低い音が体の芯へ染みる。
可哀想なのは八つ当たりを受けた岩だろう。
偶然そこに生えていた木の近くにあったというだけなのに。
「ねぇ、それ・・・」
先んじて異変に気付いたのはメダウナだ。
彼女が指さしたのは逸人の拳。
はあ? とばかりに視線で追うと、拳は岩に突き刺さっていた。
注意深く、そしてゆっくりと拳を引き抜くと、そこには拳の形がくっきり。
岩は割れず、砕けず、しかし凹んでいた。
まるでより硬いものをゆっくりと押し付けられたように。
「もう素手でいいんじゃ・・・?」
その意見へ反対する理由もなく。
急ぐために全力で走ったところ、地面を強く蹴り過ぎて飛翔。
天高くからの登場に至るわけである。




