すれ違う前触れ1
叫び声は天より来たる。
降臨せしは男であった。
「おお⁉ イツヒト‼‼」
男の声を呼ぶのはヤンキエル。ツインテエルはただただ驚くばかり。
逸人は見事なヒーロー着地を決め、膝が痛くないことにまた、どうなってんだよ⁉ この体は‼ と感じていた。
「ん? あっ! メダウナも連れてきちまったのか⁉」
視界の端、太い木の幹に隠れて覗く影に言及するヤンキエル。
正確に言えば連れて来たのではなく、付いて着たのだ。
少し話は遡る――――。
逸人が吹き飛ばされた先に、メダウナは居た。
いや、何かがぶつかった轟音が気になって寄っていった結果である。
とはいえ、それを責められる者はいないだろう。
危険な森でポツンと置いて行かれ、近くで騒ぎがあれば気にもなる。
動物の声すらしなければ尚更だ。
ひょっこりと頭だけを覗かせてみれば、見たことのある顔が・・・みえたわけではなかった。
この時、逸人の身体は大半が木にめり込んでしまっており、メダウナの眼に映ったのは主に下半身である。
ただ1点。
身元を判別できるものを逸人が付けていたため、メダウナは確信を持てた。この下半身を知っていると。
その根拠こそが、靴である。
天使は人間を模しているが故、娯楽を好む。
しかし、何故か衣服に関してはこだわりが薄く、ほとんどの天使は共通の衣装をまとい、サンダルを履く。
もしかすれば原因は、明確な異性が周囲に居ないせいかもしれないが、解明には至っていない。
そんな中で、逸人の靴は下界のそれだ。
歩きやすさ、履き心地、耐久性と値段から、大手メーカーの量産品ではあるが、天使が履くものではなかった。
だからこそメダウナは気付き、そして引っこ抜いた。
「・・・死んでない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、その第一声はおかしいだろ‼」
恐る恐る尋ねたメダウナに、逸人は大きく遅れてから反応した。
メダウナとて、何の情報も無しに死んだか? などと聞いたりはしない。
引っこ抜いてしばらくしても、逸人がピクリとも動かず、更には半端に開いた目から意識を感じ取れなかったからこそ出た言葉だ。
要は、一見して気絶して見えたということである。
「平気そう、ならいい」
「良くないだろ‼ どうすんだよコレ‼」
「? どうする? 逃げるんじゃ?」
「向こうでアイツ、ツインテエルだっけ? アイツがデカい熊に見つかって、襲われてんだよ‼」
「そう・・・残念・・・」
「諦めるのが早ぇよ‼‼ もっとこう、助けにいくとか! ねぇのかよ⁉」
「存在は消えない」
「そうかもしれねぇけどさ‼‼ あーもう‼‼」
逸人は気が動転しているのか、興奮気味に捲し立て、頭を掻き毟る。
メダウナにはこれが分からない。
そうまでして感情を動かす理由が。合理性がないことへ導かれようとする在り方が。
逸人はそれを察していた。
察して、理解ができずに苦しんだ。




