春の訪れ20
「アタシだけなら別になんてことねぇんだけどなぁ――それに、こうなると置いてきた方も心配になるしよぉ・・・どうすっかな」
ヤンキエルはポリポリと額を掻きながら考える。
置てきた方というのはメダウナのことだと推察できるが、話の中に逸人が入っていないのは彼女が決定的シーンを見ていなかったからか、それとも。
知っていて尚、信頼しているのか。
「「「ヴェエエエエエエエアアアアアアアアアアアアア‼‼‼」」」
複数の絶叫。
大熊は彼女らの事情などお構いなしの総攻撃を始める。
当然だが、狙いはヤンキエルのみに留まらない。
「ったく! まだアタシが考えてる途中だろうが‼」
それはあまりに理不尽な言葉だが、野生においては強者生存。
弱き者の想いも、願いも、踏みにじられて然るべきで。
今までとは打って変わって、ヤンキエルの攻撃が威力を増す。
軽い攻撃でも当たれば悶絶。
それ以上は大きく吹き飛ばされるような攻撃へと変化する。
大熊はそれを見て、知って、対策していく。
軽い攻撃は遠くからなら当たり辛い、先端を意識しても爪では折られる。肉球などの柔らかい部位であれば、動きを止めるほどの痛みにはならない。
遠くからの攻撃に合わせて踏み込んでくるようになった。これは手先、足先、鼻先であっても、当たれば吹き飛ばされて、一時的とはいえ数の優位を失ってしまう。
挟み撃ちは正面を撃ち落とし、反対側を蹴り飛ばすのが癖だ。正面からは撃ち落とされる前提で出し、反対側は蹴り飛ばされないように遅延。動きを見送ってから再度、挟み撃ちにする。
動かない獲物を狙ったら凶暴な方が飛び込んできた。弱点はこれだ。
遠くから、挟み撃ちを、撃ち落とされる前提で、遅らせてからもう一度。
これを動かない獲物へ。複数組で、複数回!
「チッ! うっぜぇなぁ‼‼」
ボコボコにされても、ゾンビのように立ち上がり、何度となく施行を繰り返すことで、大熊の攻撃はいよいよヤンキエルの手に余りそうになる。
ツインテエルに動けるかを聞いておくべきだったか? などと、忙しくなってから余計なことが浮かんでくる。
解答は訊くまでもなく、出来るならばそうしているはずだろうに。
(殺っちまうか・・・?)
監督官である手前、あくまでも手出しは最低限。
可能な限りチャンスを・・・と手加減してきたが、対象生徒に被害を出すぐらいならいっそのこと―――。
それぐらい、我慢の限界といったところで。
「どうなってんだよ! この体はぁああ‼‼」
乱入者が帰ってくる。




