春の訪れ12
答えは――跳躍。
走るつもりが意に反して、飛び上がってしまうのだ。
地面の大きな起伏もなんのその。
赤と青の配管工よろしく、全てを飛び越え、
「うおわああぁああああ⁉⁉」
着地には失敗した。
空中で手をバタつかせた後、ズザァーと転がるような着地はあまりの情けなさだが、注意を引くには十分だったのか、熊は振り返り動きを止めていた。
足を捻ったりしなかったことだけが僥倖ではなかったかと、土埃の中起き上がりながら逸人は思う。
「あ! アンタ‼‼」
大きく口を開けて指差す少女はツインテエル。
その影に隠れて存在感を薄めるようにメダウナも。
なんでこんなところに。という疑問は当然だが、それ以上の緊急案件が。
爪が折れていない方の腕を振り上げたままだった熊に逸人が飛びつく。
イメージとしては腰の辺りにタックルするような感じだったのだが、また飛び過ぎて腕にしがみ付く形となった。
「ヴェァッ⁉ ウガァアアアアア‼‼‼」
熊はそれにより、まるで嫌いな虫が腕にくっ付いたかのような反応を見せ、腕は上下に振りながらも腰は引けているという子供みたいな姿になる。
(おおおぉぉぉおおおお⁉⁉ 酔うぅぅうう⁉⁉)
ガッチリ掴まる逸人は振り落とされる心配はないと余裕を感じたものの、三半規管には明確なダメージを負いつつあった。
それに何より、鋭い爪が出たままの腕を振り回しているという状況こそが、危険の継続に当たると認識していたため、早急に事態を収束させなければと。解決策を探った。
けれどもだ。
ここに居るのは熊と逸人だけではない。
どこかで見ているだろうヤンキエルと、そして。
「今がチャンスってわけね‼‼ やるわよ! メダウナ!」
「えっ! ・・・・・・了解。その方が安全そうだし」
溌溂とした声で友人を唆すツインテエルと、己の安全性を天秤にかけ逸人に見切りをつけるメダウナ。
両者はその両手を前にし、高らかに唱える。
「流れなき水よ! 暴れるものに安らぎの抱擁を‼ アクアハグ‼」
「凍てつく冷気よ。彼のものに舞い降りよ。フリーズシャワー」
どこからともなく湧き出る水が、熊と逸人を包み込むと。
その外側から温度が急激に下がっていき、内へ内へと凍っていく。
最初に凍った外側の氷が砕けて剥がれることで、芯まで凍ったことを確認した両者は。
「ふぅ。これで大丈夫ね‼」
「まだ近付くのは危険。様子見しないと」
氷をツンツンしようとするツインテエルを引き留めるメダウナという構図に変わる。
しかし、
「大丈夫なわけないんだけど⁉⁉」
巻き込まれた方は当たり前すぎるほどにご立腹だった。




