表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/56

春の訪れ5

 呆然(ぼうぜん)と、あるいは漠然(ばくぜん)と。

 逸人はママエルが抱えた鳥を見ていた。


 怪鳥とでも言うべき異形(いぎょう)の姿。

 天界ではこれがスタンダードなんだろうか?

 左右に眼が3つずつ、翼は二対(につい)で、開いて正面から見るとXになる。

 大きさは人の胴体ぐらいか、首が長く感じるが・・・鳥なら短い方だろう。


 それら特徴を見事に避け、脳天を穿(うが)った矢が――しかし、痛々しくはない。

 可哀想だとか、罪悪感のようなものが湧き上がることはなかった。


 見た目のせいかと疑ったが、どちらかと言えば悪魔のせいである。

 化物(ばけもの)じみた見た目だからと簡単に見捨てられるような性格をした人間ではない・・・と主張するには悪魔を見捨てるような真似もしたが、悪魔なので仕方がないのだ。

 気付いてなくとも、悪魔とはそういう性質も持ち合わせている。


「おい、どうした? 無視は・・・って、そうか。こっちの動物は珍しいか。下界のとは結構違うもんな?」

「ああ、うん。まあそうだね。あの鳥は、こっちではよく居るの?」

「あー・・・なんだっけな。下界で言うあの鳥、黒くてカァカァ鳴く、」

「カラス?」

「そうそう、そんな名前だったはず!」


 その割には色も大きさも、かなり外れているように見える。


「どこが似てる?」

「似てるってか、近いんだよ。鳴き声とか、動きとか、後―――」


 ヤンキエルが答える直前、バサバサバサ‼‼ と森が羽ばたく。

 もちろん森そのものが飛ぶわけじゃない。

 深い緑色の(かたまり)()がれ落ちるように、羽音を()きたて木々から分離する。


凶暴(きょうぼう)さとか」


 よく見なくとも、それが同じ鳥だということがわかる。

 そしてそれらが空の一角を覆うほどの群れであることも。

 カラスは賢く、襲われたことを理解できる。


 それが故に逆襲も行う。

 生存本能でもあるが、情に(あつ)いためでもあるという。

 (つがい)であれば生涯(しょうがい)()()げる相手なのだとか。


「さあ1年坊! 自信がねぇなら今がチャンスだぞ⁉ 獲物から向かって来てくれる機会なんてそうはねぇからな‼」

「事前に配布した弓は持っていますね? 自信のある方はもう森へ入って貰っても大丈夫ですよ! 暗くなる前には集合してくださいね~!」


 教師であるママエルに慌てる様子がないことから、お手本というのはコレ混みのことだったことがわかる。


「よし! 許可も下りたし、アタシらは森へ行こうぜ!」

「え⁉ アレは大丈夫なの⁉」

「ここは天界だぜ? 気にしなくても死にやしねぇよ! あの鳥達だって、時間がたてば元通りになる」

「それは同一個体じゃなくない⁉」

「いや? 存在力を完全に消費しきらねぇ限りは、存在そのものが消えることはねぇよ。そのせいか、天界では死ぬことなんて想像もしねぇ。天使なら1日もあれば復活できるからな」


(存在力って信仰心とかだったよね? つまり信じられている限り不滅(ふめつ)? それって本当に神様みたい・・・っていうか、そういう世界なのか)


 お前は優しいな! なんてヤンキエルが言っているのをどこか遠くに聞きながら、新しい常識に打ちひしがれる逸人は。

 いつの間にやらその背中を押されていることにも、そのまま森の奥へと進んでいることにも、まだ気付いてはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ