春の訪れ3
「震えてるじゃねぇか・・・燃えてるのか?」
フワッと熱が伝わるほど近くから聞いた声。
逸人が驚いて隣を見ると、昨日から引き続きヤンキエルが侍る。
「こら! ヤンキエルさん! あなたはこのクラスどころか、学年も違うでしょ!」
「いーじゃねぇか! アタシらは今日、休みなんだしよ」
異変に気付いたママエルが真っ先に叱るが、懲りた様子はない。
それどころか・・・、
「それにこのまま実習に行くなら、引率が居ると便利なんじゃないすか?」
「手伝ってくれるの?」
「適任じゃないすか?」
なにやら自身を売り込んでいく。
言われたママエルは考える素振りを見せ、場の動きが止まる。
(それより今、実習って言わなかった?)
重石のようなキーワードに引っかかった逸人は、目まぐるしく移り変わる状況から取り残され、
「そうね。それなら許しましょう」
「よっしゃ! 話が分かるぜ!」
「ただし! 安全に――ですよ?」
「わーかってるって!」
「それと、贔屓はダメですからね!」
気にしたことも分からないまま、話がまとまってしまったのだった。
「――――で、どこ⁉ ここ⁉」
案の定、逸人には目の前の景色が理解できず・・・・・・いや、実習だということは把握している。
だが、なんで入学早々そんなことになっているのかが、理解できないのだ。
「よくそんな状態で文句も言わず付いてこれたな? なんか悩んでるみたいだったから話掛けもしなかったけど、ちゃんと意識があって良かったぜ!」
ヤンキエルがカラカラと笑うが、逸人はどうにも憎々しげだ。
説明がなかったこともさることながら、なぜいる⁉ という気持ちの方が強いのだろう。
もとより、そういった疑問の解消が昨日からなされていたとは言い辛く、今更弁明されたところで素直に聞き入れる気などなかったりするのだが。
「それじゃあヤンキエルさん、お手本をお願いね? 先生はこういうのが、あんまり得意じゃないから」
「おう! 任せとけってんだ‼」
殊更に展開は進む。
ヤンキエルはどこかより取り出した弓をいつの間にか携え、なんなら矢も既に番えられており、というかもう放たれていた。
全てが一瞬。
追いつく間もなしである。




