別の側面4
面と向かっての対話であれば、冗談かと聞くこともできただろうが、逸人にその選択肢はない。なにせ信じられないような現象はもう数えきれないほどその身に降りかかった後だからだ。
なにより、思念での会話なんてことをしているの最中ならば尚更である。
(いいか? よく聞けよ⁉ オレには目的があってあの場所にいた。あそこはなんでかわかんねぇけど、相性がいい奴にだけ見えないものが見えるようになる効果があったんだ! だからオレはあそこで協力者を探してた‼)
(そういえば助けてくれって・・・)
(そうだ! 情けねぇけど、オレだけじゃどうしようもなかったから・・・で、ホントなら内容を打ち明けてから協力してもらつもりだった。なのに)
(そっか、俺が――)
(そうだよ‼ 別に他にも似たような場所はあったんだ‼ それを‼‼)
(それはごめん! だけど、トラックに轢かれそうになってたからつい‼)
(オレは悪魔だぞ⁉ トラックなんかに轢かれるわけねぇんだよ‼ お前が最初っから見えてることを隠したりしてなけりゃ、こんな面倒なことに巻き込んだりなんかしなかったんだって‼‼)
(・・・ん? 巻き込んだ?)
(――ッ⁉ っはぁ~・・・そうだよ。アンタがここにいるのはオレのせいさ。一応聞くけどよ。ここに来るまでに聞いた話・・・その中でも徳を積んだとか、そういうのに覚えってあったか?)
(そりゃあ多少は)
(じゃぁ聞き方を変える。神様になれるほどだと思うか?)
(それは全く)
(だろ? 神格を得るために人間が積まなきゃなんねぇ徳は、雑に言うと世界を救うぐらいはしなきゃなんだ。そんなの、身に覚えなんかねぇよな)
(でも転生を繰り返すんなら可能性ぐらいあるんじゃない?)
(これまでの善行にどれだけ足したら世界を救えそうだ?)
(うーん、前世で世界を救ってたら?)
(それじゃそいつがここに立ってるはずだな)
確かに、元も子もない話だ。
現代社会における善行など高が知れている。
戦争をたった1人で止めたとしても、世界を救うには程遠いのだから。
(それじゃ神格が~~っていうのは・・・)
(オレが持ってるせいだ)
(悪魔なのに?)
(今度は直接聞いてきたな。その方がマシだけど・・・、手っ取り早く説明するなら、オレはハーフなんだ)
(なるほど。半神半魔ね)
(すんなり受け入れ過ぎだぞ。日本人め)
悪魔自身が言葉足りずを自覚していたにもかかわらず、納得する逸人に本音が零れる。
創作が盛ん過ぎるが故、日本人は設定としてなんでも受け入れ過ぎる。
(けど、伝わるんだったらなんでもいいや。それなら目的もわかるよな?)
(いやそれは流石に・・・ありきたりなやつ?)
(そう言われると腹立つけど、まぁ・・・)
(だとすると―――母を訪ねて?)
(探してるのは父親の方だけど、そうだよ)
なんとなくそうかな? 程度で言ってみたら、まさかの大当たり。
そう思った要因はみすぼらしさだったり、それに似合わない必死さ、後は話し方から受けた性格の印象だろう。
片親の家庭、且つ困窮が両親の離別に根差している環境と合致しすぎた。
(でも、それだと・・・)
(期待外れだったんじゃって? まぁ実際、肩透かしっつーか。悪魔のことをあんなにも知らねぇんじゃな・・・)
そう、そこが気に留まった。
ルールイールとの会話の中で悪魔についても出てきたが、その内容はあまりにも希薄で、その存在すらあやふやな輪郭のままでも良しとしていた。
これじゃあ悪魔と子供を作った神を探すのでさえ難しいだろう。
(そういえば、元々の予定は? 内容を先に説明して協力者を募るつもりだったんだよね?)
(やることは今と大差ねぇよ。事前に説明する分、もっと話が早かっただろうし、覚悟だって十分決められたはずだ)
(覚悟・・・?)
(そりゃ気付いてねぇよな。仕方ねぇけどさ)
バツが悪そうな反応を見せてから、悪魔は続ける。
(家族に会いたいとか、思わねぇだろ?)




