表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/56

別の側面3

 カチャンという簡素(かんそ)な音と共に開くドア。

 足音が部屋前まで移動していたことから予期してはいたが、やはりノックはない。これも母親の共通概念(がいねん)による弊害(へいがい)か。


「大きな声だったけど、どうかした?」

「大丈夫です! ちょっと寝ちゃってたみたいで、この段ボールの山を見てまだ実感がなかったのでその・・・」

「あら~そうね、ごめんなさいね。(くず)れてきちゃうかもしれないものね」

「気を付けます」


「そ~お? アレだったら私の部屋で寝ても――」

「気を付けます」

「そんなに()ぐに言わなくてもいいのに・・・」


 いじけた姿に(わず)かな罪悪感が疼くが、そもそも原因がママエルであることを思い出して冷静に沈黙(ちんもく)する逸人は、こういう場面で母親に(すき)を見せてはいけないことを知っていた。

 どうせ後から、ここでの譲歩(じょうほ)を引き合いに出されてまた同じようにお願いを聞かされることになり得るからだ。


「今お夕飯作ってるけど、食べられる? それとも寝ちゃう?」

「あ、食べます。いただきます」

「ふふっ、いただきますはまだ早いわ。でもそうよね! ご飯は食べないと、力が出せないものね! あ、そうそう。明日の朝ごはんなんだけど、ごはんとパンだったら、どっちがい~い?」

「えっと・・・じゃあ、パンで」

「わかったわ! 丹精(たんせい)込めて焼いておくわね!」


 そう言い残して部屋を出ていくママエル。

 踊るような足取りが音として届くが、やっぱり食事が好きなんだろう。それも、パンを自分で焼くほどに。

 それすらも概念による影響なのかもしれないが・・・ある意味、恐ろしいほど完璧な母親像と言えた。

 それこそ気を抜くと(おぼ)れてしまいそうなくらいに。


(行ったか・・・?)

「行ったけど、どうしよう?」

 耳を澄ませて、足音が聞こえなくなってから小声で話す。

 聞きたいことはある、けれど声に出すと不審(ふしん)がられる。その中間をどうしよう? と逸人は()いたのだ。


 しかし、

(考えてることもわかるって言っただろ‼)

 怒られて、そうかと思い出す。


(俺の中にいる・・・んだったよね?)

(そうだよ! おかげさまでな‼)

(俺のせいなんだ・・・)

(お前がオレの腕を掴んだんだからな‼)


 それだけで? と考えてしまうのは最早(もはや)、仕方のない反応だっただろうが。

(それだけで大問題なんだよ‼‼)

 伝わってしまう以上、デリカシーに欠けた質問として捉えられたとしても、(いた)し方なしである。


(オレのこと、覚えてるよな?)

(そりゃあまあ・・・インパクトは強かったからね)

(みすぼらしい以外の部分は?)

(う・・・、根に持ってる)

(当たり前だろ‼ それで! 他の部分は⁉ どうなんだよ⁉)


 急かされて再生する。

 トラックに轢かれる間際(まぎわ)のこと。


(そういえば、コスプレしてたような・・・?)

(コスプレじゃねぇ‼ 今なら・・・わかるだろ?)


 あの時に見たのは(つの)、羽、尻尾。

 どれも悪魔みたいな―――。


(――まさか!)

(そのまさかに決まってるだろ‼)


 どうやら、助けた少年は悪魔だったらしい。

 ということは。


(今こうなってる原因って・・・⁉)

(お前がオレの手を勝手に掴んだからだ‼‼)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ