別の側面1
「ん~~~・・・・・・」
「いつまでやるつもりでしょう?」
「だってよぉ~~‼‼」
露天風呂を出て寮から離れる中、ヤンキエルとルールイールがぶつかる。
原因はヤンキエルが懲りずに胸の大きさを弄っているからだった。
「裸でも反応が無かったんだぜ⁉ 焦るだろ‼‼」
「本人が見た目は気にしてないというのだから、信じればいいでしょうに。それに反応がなかったとわけじゃなく、アレは反応ができなかったという方が正しいのでは? 明確に興奮は確認したでしょう?」
「だからこそだろ⁉ あんな状況でも手を出されないってのは、女としての魅力がねぇから以外になにがあんだよ‼」
「人間だったからでしょう?」
「だとしてもだろ‼ 裸の女に言い寄られて我慢できんのかよ⁉」
「できたからこそ貴方は焦っているんでしょう?」
「だからそうだって言―――ッ‼‼ あん?」
ヒートアップする途中で躓くヤンキエル。
結局、自身の魅力の無さが原因ではないかという疑問へ帰ってきてしまう。
そのせいで、冒頭へと繋がるわけだが・・・。
「じゃあこれ以上どうしろってんだよ⁉ 胸以上の女らしさってなんだ⁉」
「日本基準で言えば良妻賢母という言葉があり、良妻の基準は家庭を形作る能力の有無、あるいは高低になるでしょう。家事、炊事、掃除、洗濯など。賢母は育児における手際の良さや子供の教育への理解、促進でしょうか? これは手を焼き過ぎてもいけないとの情報もありますので、匙加減に迷うところでしょうが」
「難しく語ってんじゃねぇよ! あと、妻とか嫁じゃねぇ! 女として隣にいられりゃそれでいいんだよ‼」
「違いが判りませんが、肉体的特徴が求められてないのであれば、時間をかけてでも相手の求める理想を追求するべきでしょう」
「それじゃ出し抜かれるかもしれねぇだろ‼‼」
「敢えて言うのなら、誰に・・・? という疑問がありますね」
ルールイールは呆れ気味に視線を送る。
しかしヤンキエルは意にも介さず即答を返す。
「お前だって気があるんだろーが‼」
「ッ⁉ なにを根拠に‼」
「言葉遣いに気を付けてまで、砕けた態度で話しかけてりゃわからねぇわけねぇだろ‼」
「そんなわけがないでしょう‼ 急に、なにを言い出すかと思えば‼」
「なら、なんでいつも通りもっと上から目線でしゃべらなかったんだよ? アタシに対しての態度だって、随分と甘かったけどなぁ?」
実際に、ある程度の付き合いがあるヤンキエルから見て、ルールイールの今日の口調は優しく丁寧であると感じられた。
そのつもりがなかったとしても、そうとられるような態度だったと言うには十分だった。
「上から目線でなど話してはいません‼」
「それだよ! いつもなら、きつーい命令口調で黙れって言うじゃねぇか。今日は一度も、イツヒトが居るところでは一回も無かったけどな‼」
「初対面の相手に配慮をするのは当然でしょう! 無意味に壁を作ってなにか利点があるとでも⁉ それとも? 私に注意されることがそんなに嬉しかったのでしょうか?」
「イツヒトにもそうやって、でしょうでしょう言ってりゃ良かっただろってだけだろ? それをしなかったのは嫌われたくなかったから、嫌われたくねぇってのは好かれたいってのと同じはずだ。だからお前も、イツヒトを狙ってんだ」
「いかに天使が潜在的に命令を求める体質だからと言って、それだけで転生者に群がるわけがないでしょう⁉ あくまでも彼が有望そうで、関係を結べば私にも利益がありそうというだけで―――」
「関係ってどんな? 男女の関係以外で、アタシ達になにができるって?」
ルールイールはここで言葉に詰まった。
天使と聞けば、人間からは大層な存在のように思えるが、実態はそうではない。
天界における天使はただの一般人かそれ以下の存在。
身分も学生であるため金銭的な優位もなく、地位や立場とも縁遠い。
現実的に言えば、知識の受領も十分な関係性と言えるが、男女の関係を上回るかと言われればそんなことは全くなく。
結び付きの強さまで考慮するなら、最も簡単で効率がいいのはヤンキエルのやり方なのだ。
しかし彼女は規範の天使。
それをおいそれと認められるはずがなかった。




