天使の世界18
「あ・・・? え、っ?」
「あちゃー、やっぱそうか」
「予想通りだと言うべきでしょう」
玄関の形は日本で一般的な洋風建築のそれと同じで、小さめの土間の横に靴棚があって、ただ珍しくもその反対側にはウォークインクローゼットが。
延びる廊下の半分は階段になっており、正面奥や左右にはいくつもの扉。それとは別で擦りガラスのスライド扉が存在感を発揮、恐らくはリビングに繋がっていることがうかがえる。
家にはおかしな点はない。
それでも逸人が言葉に詰まった理由は。
「なん、ていうか・・・生活感が凄いんだけど・・・?」
そう。あまりにも散らかっていた。
脱ぎ捨てられた衣服と思しき布や、まとめるだけまとめたものの出されていないゴミ袋。
そもそも、なぜ玄関扉を開けただけでウォークインクローゼットの存在に気付いたり、左右にある扉が見えたのか?
それは言うまでもなく、それらが開いていたからだ。
「まあーそんな気はしてたっつーかな。噂になってるからな」
「どんな存在にも欠点はあります。それは神様でも同様に。であるならば、天使たる我々にも有って然るべき・・・と、擁護はしておきましょうか」
そう言いながら、両者はサンダルのような靴を脱いで家へ上がりこむ。
おいて行かれるわけにもいかないからと続く逸人は、とりあえずそこらのものを踏まないように気を付けた。
「多分お前が使う部屋は2階になっから、先にそっちから見に行くか?」
「それとも水回りやキッチンを確認しておきますか? 生活の上では外せませんし、同居になるので気を付けることもあるでしょう」
「同居って、誰と?」
図書室で少しは追いついたかと思っていた展開から、またしても振り落とされ理解に苦しみながらも、なぜかここだけ律儀に閉じられていたスライド扉を開いてなんとなくリビングへ。
TVや机に椅子、ソファーなどもあり、棚には本なども詰め込まれているが、それらよりも目を引くのは、明らかにその場にそぐわないだろうもので。
腹筋ローラーにペダルマシン、ぶら下がり棒にロデオマシン。
体型を好きにいじれる天使には無縁のダイエット器具ばかり。
なんなら使ってないのか、ぶら下がり棒にはハンガーと服が垂れ下がる。
併設するキッチンにも、ジューサーなのかコーヒーメーカーなのか、用途すら分からない棒状の調理器具まで。
所狭しとそびえ立つ始末。
「そりゃ寮なんだから管理人ぐらい居んだろ? いわゆる寮母って奴だな」
「誰と――という問いに答えるのなら、既に知っているはずの人物だとは」
言われて逸人は一瞬、目の前の両名との同居かと疑うが・・・だとしたらさっき見た反応が自然過ぎた。もっと芝居臭くなるはずだと除去。
すると、残るは直前に手続きをしてくれた職員か出店の店主でもなければ3名に絞られる。
ママエル、ツインテエル、メダウナ。
候補の内、後者2択は学徒である。
ということは―――?
「あら? 鍵が・・・」
ガチャリと玄関ドアが開く音と、それを訝しむ声が聞こえた。




